2012 辻牧場レポート

2012 辻牧場レポート

辻牧場

辻牧場は日高東部に複数の拠点を構え、多くのスタッフが働いています。過去にはクラシックホース、昨今ではヒラボクキング、アドマイヤコスモスといった重賞馬を送り出し、毎週のように生産馬が好走しています。普段、テレビで競馬をよく見ているという高校1年生~3年生の男子3人が参加しました。

ここでは放牧地のボロ拾いや寝わら上げを中心に体験しました。遠くから見れば青々とした放牧地も、中を歩けばこげ茶色となったボロが散在します。夏らしい陽射しを受けながら、参加者は首にタオルを巻いてボロ集めに奮闘しました。ボロで一杯になったリヤカーは、きちんと持ち手を握らないと傾いてしまいます。シンプルな仕事とは言え、油断は禁物です。慎重に堆肥場に運び終えると、参加者は安堵の表情を浮かべていました。寝わら上げでは特有の尿のにおいに「最初はきつかった」と漏らす参加者もいましたが、黙々と寝わらを選り分けて、つなぎに寝わらを付着させながら“馬の寝室”を整えました。「裏舞台の仕事を沢山知りました」と、参加者は大事な発見をしたようです。

馬の出し入れでは現役時代、重賞を勝った繁殖牝馬や、リーディング上位種牡馬の仔を間近で見守り、放牧地出入り口の開閉を担当しました。牧場の方は両手で親仔を引き、テンポ良く移動をさせると、あっという間に厩舎は空に。物見をしたり、暴れたりすることなく、集中力を持って馬を歩かせている様子は、熟練の業として映ったようです。普段なかなか見られない当歳馬には興味津々で、「牡馬はやんちゃで、牝馬は大人しい馬が多い気がします」と、この機会にじっくりと観察していました。牧場の方の真摯な説明はもちろん、将来、大観衆の前で走る可能性を持った優駿との出会いも、彼らにとって刺激となったようです。飽きずにずっと馬を見ていられる好き度合いは、大きな武器となるでしょう。体験終了後はすっかり馬の名前を覚えたようで、「これからは辻牧場の生産馬を応援していきたい」という声も聞こえてきました。

就業体験参加者を受け持った辻牧場・繁殖スタッフの佐々木恵一さんは、
「彼らにとっては何もかも初めての体験。探り探りの部分があったと思います。仕事の説明を理解できなかった場面もあったかもしれません。牧場は学校とは違いますし、わからないことはどんどん質問して、今後も自発的な姿勢を大事にして欲しいと思います。牧場の仕事は大変なことが多く、半ば辞めていく人もいますが、未勝利戦でも、条件戦でも世話をしていた馬が勝つ喜びは、何事にも代えがたい特別なものです。将来、牧場の仕事に就けたら、レースで勝つ喜びを是非実感して欲しいと思います。」
佐々木さんは今年、生産馬の重賞制覇を競馬場で見届けた方で、その感動も織り交ぜながら、仕事のいろはを教えていました。

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