2025 見学会レポート(関西)
2025 見学会レポート(関西)
関東での見学会から1週間後の3月15日(土)に、「牧場で働こう見学会(関西)」が開催された。参加者は京都駅八条口1階の八条口祭時計広場前に集合。前週の見学会と同じく朝から曇天の空模様で寒さを感じる気候であったが、集合時間である午前8:00には24組38名(同伴の保護者含む)が集合し、その後2台のバスに分かれて乗車。最初の目的地となるグリーンウッド・トレーニングに向けて出発した。
出発後の車内では、同行するBOKUJOB事務局員の自己紹介、BOKUJOB活動の概要説明などが行われた後、参加者1人ひとりが自己紹介と「体験会に参加した理由」「好きな競走馬とその理由」を発表。各自の想いがこもった発表に他の参加者は笑みがこぼれたり頷いたりと和やかな雰囲気の中、バスは滋賀県へと向かった。
グリーンウッド・トレーニング
最初の見学先は、滋賀県甲賀市のグリーンウッド・トレーニング。出迎えていただいたのは白澤部長。白澤部長によるユーモア溢れるご挨拶の後に「調教施設見学」「独身寮見学」「質疑応答」を、参加者と保護者に分かれて行った。

自らの足で、坂路コースのウッドチップの感触を体験
まず、調教施設見学では、坂路の終点にある監視塔を見学。牧場スタッフの佐々木さんから日頃の調教の様子をご説明いただいた。当日の調教は既に終了してしまっていたため、実際の調教の様子は見学できなかったが、坂路コースに入って、自らの足でウッドチップ馬場の感触を体験させていただいたことは、参加者にとって貴重な経験になったのではと感じた。

独身寮「蹄寮」を見学。充実した施設に参加した保護者も安心!
同じ頃、参加者と別れた保護者たちは、白澤部長の案内で、事務所から1㎞程度の距離にあるグリーンウッド・トレーニングの独身寮『蹄寮』を見学。
1~2階は男性専用の居室、3階は女性専用の居室となっており、施設内は洗濯室や無料Wi-Fiが完備されているなど、親元を離れて一人暮らしとなるスタッフたちが安心して生活できる施設となっている。3階フロアには専用のセキュリティ機能も完備しており、防犯対策もバッチリだという。また、寮内には委託会社が運営する食堂もあり、生活する皆さんは、寮母さんが作る温かいご飯を食べて仕事に行くとのこと。至れり尽くせりの施設に、保護者も安心した様子であった。
独身寮では、保護者と入れ替わりで参加者も寮内や部屋の様子を見学した。
続いて参加者は厩舎前にて女性スタッフの平塚さんとの質疑応答を行った。その中で「牧場で働くにあたって、意識している事はありますか」という質問に対して、「馬の行動に対して、感情的に怒ったりせず、行動の良し悪しをちゃんと教えてあげること」「日頃の様子を注意深く観察して、ちょっとした異変に直ぐ気付くようにする」といった、馬に対して真摯に向き合う姿勢が大切という考え方を聞いた参加者は、感心した様子で聞き入っていた。
一方、保護者の質疑応答で最初に上がった質問は「牧場就職にあたっては研修機関で学ぶ必要はあるのか?」という質問。この質問には「業界に長く勤めるための基礎を教える研修だから入講するに越したことはない」との回答があった一方で、「例えばBTCやJBBAでの研修してくれた方が望ましいがあとは本人の適性次第」とのことであった。また、牧場への就職に際しては「1週間のインターンシップは必ず参加してほしい」とのことで、これは「1週間のインターンシップ期間を設ければ4~5日目頃に自身の適性も見えてくる」という白澤部長の意向もあるのだという。
シリアスな内容の質問も多い中、白澤部長らしいユーモアを交えながらも率直な回答に、終始笑いの溢れる質疑応答であった。
その後、それぞれの見学を終えた参加者と保護者たちが事務所前で合流。改めて白澤部長による「牧場に就職すること」についてのお話の後、バスに乗車し、白澤部長やスタッフの皆様に見送られ、次の目的地である湖南馬事センターへ向けて出発した。
湖南馬事センター
グリーンウッド・トレーニングを出発して約20分、続いて訪れたのはこの見学会では初めて見学する湖南馬事センター。バスの到着後、車内で約30分の昼食タイムとなった。その後、参加者と保護者を出迎えたのは湖南馬事センターの吉澤代表と齋藤センター長。この湖南馬事センターは、平成29年4月に育成調教技術者の養成を目的として開設以後、多くの牧場スタッフを輩出している研修機関で、齋藤センター長はBTCにて20年以上の教育経験を持つベテランである。6ヵ月の研修期間のうちに、騎乗技術と専門知識の習得を行う短期集中型の研修が特徴になっている。
見学開始と同時に小雨が降り始めたが、最初に見学を行ったのは湖南馬事センターの研修生による騎乗訓練の様子。多くの参加者を前に研修生の顔もやや強張っていたが、それは馬達も同じ。最初は物見をして研修生の指示とは違う動きを見せる馬もいたが、教官の指示を受けた研修生が騎乗馬をなだめながら冷静に騎乗をした結果、迫力のある騎乗訓練を参加者と保護者に向けて見せてくれた。

研修生の騎乗訓練の姿に、未来の自分の姿に思いを馳せる参加者
そのままコースの前で質疑応答を開始。最初に上がった質問は「湖南馬事センターを目指す研修希望者の年齢層は?」という質問。年齢層に関しては、幅があるとのことで、高卒や大卒の他、新卒で社会人になった後、退職して研修生として入ってくる方も居るのだそうだ。齋藤センター長は、「出来れば高校は卒業してきてもらいたいかな」という希望もあるとのこと。
研修見学の次は施設見学へ。齋藤センター長が案内してくれたのは施設内に設置されたウォーキングマシン。今回は特別に、ウォーキングマシンを実際に稼働させて、馬と同じ速度で歩いてみるという体験をさせていただいた。ウォーキングマシンのスピードを馬にとってちょうど良いという6.6㎞/hに設定、これは人間でいう“ジョギング”程度の速度になっており、実際に体験した参加者からは、「思った以上に速い」とか「このスピードで馬を引くのは大変」といった声が聞かれたが、初めての貴重な体験に参加者は嬉しそうな表情を見せていた。

初めての乗馬体験。目線の高さに驚きました!
続いて、コース内の角馬場にて参加者・保護者が乗馬を体験。こちらは教官と研修生の皆様にもご協力いただき、ほぼすべての参加者が体験をすることができた。乗馬経験の有無もあり、最初からいとも簡単に出来る参加者、馬に跨ることから苦労している参加者と十人十色ではあったが、教官や研修生の親切かつ丁寧な対応により、事故なく終えることができた。
以上をもって湖南馬事センターでの見学は終了。全員がバスに乗り込み、吉澤代表や齋藤センター長、教官の皆さんに見送られながら次の目的地である信楽牧場へと向かった。
移動するバス車内ではBOKUJOB 事務局員の糸数氏による質疑応答も実施。「身長が低いのだが、乗馬に際しては身長が低いことでの支障は何かあるのか」という質問には、「最初は馬に乗ることが大変だろうけど、結局乗ることも慣れ。乗馬は身体のバランスの方が大事」と糸数氏は回答していた。その質問に合わせて、「牧場に就職するまでは体力作りを行ってほしい」という話もあり、バス内の参加者は一様に聞き入っている中、信楽牧場に到着した。
信楽牧場
出迎えてくれたのは信楽牧場の中内田会長。最初に中内田会長がバスに乗車し、調教用の周回コース、厩舎や牧草地などの施設をバス車内から見学。雄大な牧場の風景に皆一様に息をのんでいた。
その後、厩舎前にバスを駐車すると、参加者は2つのグループに分かれて見学を開始した。

ゴムチップが混ざったサンドコースの負荷を体感
まず最初に見学したのは、先にバスの車窓からも見学した800mの周回コース。このコースはゴムチップを混ぜた砂が敷かれていることが特徴で、ゴムの摩擦により生じる負荷をかけながら調教できることがメリットとしてあるそうだが、冬には滋賀県内で一番の厳しい寒さとなる信楽地方において馬場の凍結を防げることも利点の一つであるという。
その後、厩舎に移動し、厩舎内の見学や木馬を用いた騎乗体験などを実施。一通り牧場内の見学が終わった後、質疑応答の時間となった。ここからは中内田会長と共に、現在アルバイトとして勤務していて、今年の10月頃に正社員になる予定だという森田さんも参加。現在はスポーツ刈りの髪型であるが、働き始めた当初は派手な髪色でロングヘアーであったとのことで、少しずつ仕事を覚えながら頑張るにつれて、中内田会長が「最初と比べるとかなりさっぱりした」と笑って話すほど見た目も変わってきたそうだ。
森田さんに対しては「仕事をする中で必要だと感じたスキルは?」という質問が投げかけられ、森田さんは「筋肉と体幹」と答えていた。森田さんも信楽牧場に働き始めてから2回の落馬を経験しているそうで、現在は休日などにも筋力トレーニングと体幹のトレーニングをしているとのことであった。

中内田会長、若手スタッフの皆さんとの質疑応答
その他、中内田会長から「仕事のやりがい」についての話などがあった。中内田会長にとって、牧場仕事のやりがいを感じる瞬間とは「馬が活躍するとき」とのこと。馬を育てる過程は非常に大変な作業ではあるが、馬の気が向くまでじっと我慢する、馬が悪戯をした時にはその時にすぐ叱るなど、苦労を重ねて育てる馬たちは、どうしても愛おしくなってくるのだという。馬と対峙するにあたって、馬に負けないような精神力と技術を持つことが牧場スタッフとしての大事な部分であると説き、参加者・保護者ともに一様に頷いていた。また、中内田会長は「本当に馬が好きな人にこの業界で就業してほしい」という熱い言葉を口にされた。これはやはり、馬に対する「愛」を持っていないと長く働くことが出来ない業界であるという中内田会長の想いもあるそうで、ニコニコと笑顔で話していた時とは打って変わって、この言葉を伝える時の中内田会長の表情は真剣そのものであった。
その言葉の後、質疑応答が終了。一同はバスに乗り込み、中内田会長とスタッフ方々の見送りを受けて、最後の見学先であるノーザンファームしがらきへと出発した。
ノーザンファームしがらき
信楽牧場からバスに乗り込み、数分でノーザンファームしがらきに到着。雨が本降りになったこともあり、予定では800mの坂路コースを一望できる場所からの見学であったが、坂路コースの横にある施設に移動してコースを見学。ノーザンファームしがらきの山本氏による説明もスタートした。

山本氏からの概要説明を聞く参加者
このノーザンファームしがらきを擁するノーザンファームは、グループの従業員数は1,042人にもなるそうで、1つの厩舎につき10名体制を基本としているという。また、福利厚生面では、例えば敷地内にオール電化の独身寮があったり、他にもサークル活動への支援制度など、仕事以外においても手厚くなっている印象を受けた。
その説明の後、質問として上がったのは「入社する際の装備などはどのように準備すれば良いのか?」といったもの。この入社までの装備も、ノーザンファームでは会社が補助する制度を設けているとのことで、入社までの準備はすべて支援対象になっているという。また、入社した後、装備が壊れてしまった場合にも、会社補助となるといった説明を受けた。

和やかな雰囲気の中で、牧場スタッフの皆さんとの質疑応答
その後、再度バスに乗り込み、牧場内で新しくオープンした「14番厩舎」に移動。3月にオープンしたばかりで、温かい色味で木の温もりを感じる厩舎であった。ここからはBOKUJOBを通して就業した若手スタッフも加わり、厩舎内で質疑応答が行われ、「馬に乗れるようになるにはどうしたらいいのか?」という直球の質問が飛んだ。これに対しては「馬に乗れるようになるには勿論、訓練が必要だが、最終的には本人の意思次第」との回答であった。馬に騎乗しないスタッフは厩舎作業専門のスタッフとして従事するなど、牧場の仕事はたくさんあるとのことであった。
あっという間に時間は過ぎ、気が付けば見学終了時刻に。参加者・保護者全員がバスに乗った後、山本氏とスタッフの皆様に見送られ、ノーザンファームしがらきを後にした。
帰路の車内では関東の見学会と同じく、見学先などからご提供いただいたグッズの当選者を決めるじゃんけん大会を行うなど和やかな雰囲気のまま到着予定時刻を10分ほど過ぎて京都駅に到着。雨もあり、一日を通して肌寒い日となったが何事もなく終了し、一同は解散となった。
最後に、今回の見学会にご協力いただいた各牧場の皆様に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。