2015 杵臼牧場レポート
2015 杵臼牧場レポート
杵臼牧場
2000年のJRA年度代表馬、テイエムオペラオーのふるさと・杵臼牧場では3人の大学・高校生女子が体験に参加しました。体験にあたっては、杵臼牧場の鎌田信一さん、後継者の鎌田正信さんを中心に、牧場スタッフの皆さんがサポートにあたりました。
体験では主に馬房掃除、寝わら・牧草上げ、放牧地のボロ拾い、集牧、桶洗い、削蹄の見学をしました。
それでは、いくつかの体験内容を紹介しましょう。
厩舎では、牧草をホックでつかみ、馬房に運びました。参加者が手にしたホックは、フォークを大きくしたような、特に複雑な道具ではないのですが、使いこなすのが案外難しく、コツがわからないと上手に牧草を運べません。参加者は牧場の皆さんのやり方を真似しながら、やや悪戦苦闘しつつ牧草を運びました。最初は少量しか運べませんでしたが、だんだんと一度に運べる量が増えました。ホックの使い方一つにしても侮るなかれ、牧場仕事では誰もが通る道でしょう。
放牧地ではボロ拾いをしました。ベテランの牧場スタッフと一緒に牧柵の中に入り、複数の母子がいる中でボロを探し、リヤカーへと運びました。青々と広がる草地をくまなく歩き、ひたすらボロを集めて30分…40分と経過。シンプルな作業を繰り返すわけですが、良好な放牧地を保つためには、こうした地道な手作業が求められます。健康で強い馬をつくる「もと」に、放牧地は深く関連してきます。散在するボロと向き合いながら、参加者はそのつながりを頭に浮かべたことでしょう。
ボロを集めている間、時折、参加者のもとには当歳馬が近づいてきました。互いに挨拶を交わすように、参加者は間近で顔を合わせていました。人に対して好奇心旺盛な当歳馬もいれば、中には我関せずと、黙々と草を食べる当歳馬もいました。牧場で自然に過ごしている馬たちを見て、参加者は「それぞれ個性が違うんだな」と、気付いたようです。
ほかにも、気性の大人しい繁殖牝馬を引いたり、削蹄を見学したりしました。牧場の皆さんは場面に応じてわかりやすく参加者に説明し、仕事への理解を促しました。鎌田信一さんは「馬産地の雰囲気をわかってもらえれば」と、晴れた日の昼休みに彼女たちを車に乗せ、浦河の街中や海へ案内。馬産地暮らしのイメージにも触れました。参加者曰く「都市部に比べて、空気がおいしい」、「景色がきれいで、あこがれる場所」と、まちの魅力が映っていたようです。
期間中、参加者をリードしてきた鎌田正信さんは、
「牧場の仕事に興味を持って、こうして北海道まで来てくれて嬉しいです。初めてのことばかりだったと思いますが、積極的に取り組んでくれました。生き物を扱う仕事は、なかなか言葉で説明するのに難しい部分がありますから、実際に来て体験できたことは大きいでしょう。牧場は男性の多い業界ではありますが、海外では女性が大勢活躍しています。また、機械化により、昔よりも力仕事は減っていますから、性別はあまり関係ありません。今回参加した3人にも、馬の仕事に対して、更に興味を持ってもらえたらと思います。少子化の影響もあり、牧場で求人募集を出しても以前ほど反応がない、という話をよく耳にします。中でも、騎乗スタッフ不足は深刻ですね。牧場側としては、もっと働きやすい環境を整えていかなければなりません。大きな牧場にも小さな牧場にも、それぞれに長所があります。牧場規模に偏りなく、就職希望者との縁が増していくと良いですね」
と、話していました。
体験を終えて参加者からは「牧場の仕事をしたい、という気持ちが強くなりました」、「馬とのコミュニケーションと同じく、仕事をする上では、人とのコミュニケーションも大事ですね」、「体験をふまえて、生産牧場と育成牧場のどちらを目指すか、考える材料が増えて良かったです」といった感想があがっていました。