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2016 見学会レポート(関東)

2016 見学会レポート(関東)

BOKUJOB春の恒例イベント、「牧場で働こう」見学会in関東が3月5日(土)に開催された。今年も応募者多数のため抽選となってしまったが、「馬に携わる仕事がしたい」「牧場で働きたい」「調教師になって強い馬を育てたい」といった中学生、高校生、大学生、そして「子どもが興味を持った仕事をよく知りたい」というその保護や引率者の方々にご参加いただいた。
当日は朝8時に集合場所となった東京駅近くの駐車場から貸し切りバスで出発。車内では事務局から見学会の趣旨・注意事項が伝えられたのち、参加者の簡単な自己紹介タイムが設けられた。参加者たちからは初めて訪れる牧場に対する興味が伝わるいっぽう、「馬の仕事に関心を持った子どもにどう接していいか分からないので、今日の機会を活かしたい」という保護者の方の正直な意見もうかがえた。
車内でJBBA日本軽種馬協会とBTC軽種馬育成調教センターの研修案内ビデオを視聴するなどして2時間半、最初の目的地である茨城県鉾田市のビッグレッドファーム鉾田トレーニングセンターに到着した。こちらは「マイネル」「コスモ」などの冠馬名で知られる馬たちの生産・育成を行うビッグレッドファーム(北海道新冠町)の本州における調教拠点となる牧場である。

ビッグレッドファーム

バスから降りた一行は場長の附田さんの案内で、まずは屋内坂路馬場の見学へ。坂路はその名の通り上り坂になっている調教コースであり、平坦なコースに比べスピードが出ないもののしっかりと負荷をかけることができる。また間隔を開けて3~4本走ることによりインターバルトレーニングが可能となる。この日の坂路調教は朝から数組に分けて行われており、我々が見学したのはその最後の組であった。

坂を駆け上がってくる馬を見学していると、まっすぐと走っていく馬、チラチラと見学している我々を気にする馬とさまざま。ここで場長から説明があり、この組の調教ではすでにレースで何勝もしている古馬(4歳以上の馬)とまだデビューをしていない3歳馬が混ざっており、我々を気にしていたのはまだレース経験のない3歳馬であった。走ることに集中できている馬と、経験が浅くまだ集中できない馬。慣れの問題とはいえ、調教の重要さを理解することができた。

つぎに厩舎へ移動し、牧場スタッフの基本作業といえる寝わら上げ(馬房掃除)について説明を受けた。今回は牧場側のご厚意で参加者数名が、作業中のスタッフさんに代わりフォークと呼ばれる器具を使い寝ワラ上げ作業を体験させてもらったが、すぐにコツを得るのは容易ではなく各自苦戦していた。 厩舎を後にした一行は、ウォーキングマシンへと向かった。こちらには6頭が収容できるこのマシンが5機設置されており、1頭につき1日60分歩くという。大がかりなこの装置は人手を掛けずに馬を運動させることができ、なおかつスタッフが別の馬の調教や手入れをすることができる。人的資源が限られる牧場においては無くてはならない存在といえよう。

坂路調教を終えた馬が馬体のチェックを受け、ウォーキングマシンでの運動を始める。その代わりといっては何だが、今度は我々が場長の案内のもと調教が終わった坂路コースの中へ入り、実際に歩かせていただいた。坂路の砂は深く、また傾斜もあり前へ進むのも見た目以上に楽ではない。もっとも馬への負荷を考えれば、これぐらいでなければ意味がないようだ。

坂路を登りきった一行は、同牧場のゲストハウスへと移動。こちらで若手スタッフを交えて、牧場就職に関する質疑応答の時間となった。参加者からは、
「乗馬の経験はあったほうがいいか」
「入社前に専門学校へ行ったほうがいいのか」
「女性でも務まる仕事なのか」
「就職にあたって運転免許は必要か」
といったものから待遇面まで様々な質問があり、場長、そして現役スタッフの立場から回答をいただいた。乗馬経験や馬を扱うといった事前の準備に関しては、「あるに越したことはないものの、無くても入社してからの研修があるので大丈夫。経験よりもヤル気が大事」とのことだった。


調教見学


厩舎見学


作業説明


坂路馬場


意見交換

KSトレーニングセンター

ビッグレッドファーム鉾田を後にした我々は車中で昼食を取り、霞ヶ浦の対岸に位置する茨城県牛久市のKSトレーニングセンターへと向かった。こちらはJRAの美浦トレーニングセンターからほど近く1周800mのダートトラックコースと坂路コース、ほかにトレーニング用の各馬場などを擁し、複数の育成牧場が共同で利用している。

こちらで案内していただいたのは坂本企画の坂本さん。まずは厩舎を見学し、馬に与える飼料(餌)などについて説明を受けた。こちらでは馬ごとに10数種類の飼料をブレンドしたそれぞれオリジナルなものが与えられている。イメージとしては患者さんごとにメニューが異なる病院の入院食をイメージすれば分かりやすいだろうか。もっとも与えた飼料の食べ残しや、馬房内の敷料兼餌ともなる寝ワラの量から馬の健康状態をはかることもでき、ちょっとした変化も見逃せないという。坂本さんからは、
「馬を扱う仕事といえば力仕事のイメージが大きいものの、細かい変化等に気付くという面では女性のほうが向いているかも」
との率直な意見があった。

厩舎から調教コースに移動すると、まず2組分かれてダートコース全体を見渡せる調教台へと登らせていただいた。つぎに坂路コースへと移動しその設備などを見学させていただいた。

こちらでも簡単な質疑応答の時間が設けられたが、印象的だったのは坂本さんご自身が20台半ばまではサラリーマンとして異業種で活躍してからの転身だったということ。この仕事で大切なのは、ヤル気と継続することで、馬が好きな気持ちがあれば大丈夫とのメッセージをいただいた。

KSトレーニングセンターを出発して、バスは最後の訪問地である茨城県美浦村の松風馬事センターへと向かった。15分ほどで到着し、総務部長の根本さんに出迎えていただいた。


厩舎作業・馬の飼料


馬場の説明


坂路コース


意見交換

松風馬事センター

こちらは1周800mのダートコースと400mの坂路コースを有しており、その敷地面積は11万5000平米。JRAの美浦トレーニングセンターのすぐ近くに位置しており、この日のレースを終えたばかりの馬も放牧に来るという。

まずは厩舎を見学させていただき、調教コースへと向かう。この松風馬事センターをはじめ訪れたすべての牧場でいえることだが、すれ違ったスタッフの方々からは我々に対して「こんにちは!」との明るい挨拶。たくさんの人々が働く牧場における基本は、この挨拶にあるようだ。ちなみにこちらの牧場では外国人スタッフも20名程度在籍しているという。

根本さんからは具体的な勤務体系などの説明もいただいた。JRAのトレーニングセンター近郊の育成牧場の場合、夏シーズンと冬シーズンでは在厩頭数に差があり、頭数の多い冬シーズンが忙しく頭数が減る夏は作業量が少なくなるとのこと。とはいえ馬の調教や世話だけでなく、除草をしたり壊れたラチ(柵)を修理するといった土木作業も牧場スタッフの大事な仕事のようである。またできるだけ涼しい時間帯に馬の調教を行うために夏と冬では朝の始動時間が異なることなど、牧場ならではの勤務体系を知ることができた。

質疑応答の時間では乗馬経験の有無などについて質問があったが、何よりも大切なのはヤル気と馬が好きという気持ちとのこと。方針や規模が異なっても、生き物の相手をする牧場就業で求められるものはどこも同じようである。

松風馬事センターを後にしたバスは、解散場所である東京駅へ向かった。帰路車中において参加者の皆様にはアンケートにご協力いただいたが、「普段見られないものが見れた」「牧場ごとの特色が見れた」「直接話を聞いて色々なことがわかった」「牧場スタッフの生の声が聞けた」などのご意見をいただき、概ね有意義な見学会となったようだ。

なかなか触れることのできない牧場の仕事だが今回の見学会、そしてこの先のBOKUJOBフェアや北海道での体験会などで、より理解を深めていただければ幸いである。また見学会にご協力いただいた3つの牧場に御礼を申し上げたい。


概要説明


厩舎風景


馬場


馬場にて意見交換


質疑応答


場内風景


厩舎見学


見学会ネーム

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