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2012 見学会レポート(関西)

2012 見学会レポート(関西)

ちょうど1週間前に行われた関東編に続き、2012年3月31日(土)、牧場就業を目指す若者のためのイベント『「牧場で働こう」見学会 in 関西』が開催されました。
見学させていただいたのは、京都府の宇治田原優駿ステーブルと滋賀県の信楽牧場、ノーザンファームしがらきの3つの牧場。関東編と同様、あいにくの雨となりましたが、1日に3ヵ所を回る中身の濃いスケジュールを、参加者たちは楽しみつつ精力的にこなしました。
競走馬の育成の最前線を担う牧場で、若者たちは何を見て、感じたのか。その模様をレポートします。

新大阪駅からバスはまず京都へ ~車内で自己紹介やDVD放映~

1週間前に開催された『in 関東』と同様、朝から雨が降るあいにくの天候となってしまった見学会。集合場所の新大阪駅に集まったのは、抽選で選ばれた18名の若者に、同伴の保護者の方々、それに高校の進路指導の先生を加えた計28名。参加者は中学生と高校生がちょうど半々で、若い方が多いメンバー構成となりました。
予定より少し早く出発したバスは、まず最初の見学場所である京都府の宇治田原優駿ステーブルへ向かいます。目的地までは約2時間弱の道のり。車内ではスタッフの挨拶や見学の注意事項説明に続き、参加者たちの自己紹介が行われました。
印象的だったのは、乗馬クラブや学校の馬術部等で乗馬をしている方や、将来はJRAの厩務員になりたいという具体的な目標を持っている方が多かったこと。一方で、馬に触ったことはないけれど競馬や馬が好きで応募してみた、という方もいらっしゃって、あらためて参加者が幅広い層から集まっているということを感じさせられました。
自己紹介のあとは、『牧場で働こう!!』と題されたBOKUJOBの紹介DVDを放映。牧場で働く若者の姿が収められた映像を、参加者たちは食い入るように見つめていました。


集合場所の新大阪駅ではBOKUJOBスタッフが誘導


あいにくの雨の中、バスは京都へ向かって出発


参加者は中学生と高校生が半々と若い方が中心


『牧場で働こう!!』DVDに見入る参加者たち

宇治田原優駿ステーブル ~競走馬育成の最前線で~

宇治田原優駿ステーブルは、JRAの栗東トレーニングセンターにも近く、現役バリバリの競走馬が調教されている育成牧場です。
参加者が多いので、グループに分かれて見学しました。それぞれを引率していただいたのは事務局の平間政憲さんと、マネージャーの田中敦史さん。見学の間にも、これから調教へ向かう馬や、帰ってきてクールダウンをしている馬等がすぐ側をひっきりなしに行き交います。参加者たちは乗馬用の馬とはまったく違うその緊張感に圧倒されていました。
調教風景は、坂路コースを見渡せる監視台から見学しました。まさに育成の最前線基地といった趣。広々としたコースを駆け上がってくる競走馬の姿を眺めながら、参加者からはさまざまな質問が飛びます。初心者はどのくらいの期間でこんなふうに乗れるようになるのか。早く上達するにはやはり乗馬を経験していた方がいいのか。それらの疑問に、平間さんと田中さんが丁寧に答えてくださいました。
厩舎も一通り見学。普段は外で行う蹄鉄の打ち替えが、この日は雨のため屋内で行われていて、その様子を遠くから見学させていただいたり、乗馬用の馬がいる馬房では、馬に触らせていただいたりもしました。

盛り上がった木馬での練習体験 ~昼食会ではスタッフと交流~

一通りの見学のあと、参加者たちは食堂に集まり、平間さんから育成牧場の役割等、あらためて牧場についての説明を受けました。中学生が多いということで、育成牧場とJRAのトレーニングセンターの違い等、競馬の基本的な仕組みからわかりやすくレクチャーしていただきました。
続いて、食堂に置いてある騎乗練習用の木馬で、実際に希望者に練習体験をしてもらおうということになりました。
挑戦した参加者は3名。調教主任の布施さんに手取り足取り教えていただきながら、ジョッキーと同じいわゆる「モンキー乗り」の姿勢で手綱を動かします。みなさん乗馬経験者ということでしたが、感想は揃って「乗馬とはぜんぜん違う!」というもの。足腰にくるキツさも想像以上で、貴重な体験となったようでした。
そのあとは、女性も含めた若い牧場スタッフにも来ていただき、昼食会となりました。用意されたお弁当を食べながらワイワイ、ガヤガヤとおしゃべりに花が咲きます。仕事や生活についての生の声が聞けて、参加者本人はもちろん、保護者の方々にとってもたいへん参考となったようでした。

滋賀県の信楽牧場へ ~歴史ある牧場で馬とふれあう~

宇治田原優駿ステーブルを後にした参加者たちは再びバスに乗り、滋賀県の信楽牧場へと向かいました。
信楽牧場は常時70頭くらいの馬を預かる育成牧場で、周回コースやロンギ場、ウォーキングマシン等の一通りの施設は揃っていますが、レースに向けてこれらの施設を利用した調教よりもさらにハードな坂路調教等の最終調整をする必要がある場合等は、必要な施設を有する別の場所にある厩舎へ馬を移動させて調教するそうです。
そんな事情もあり、ここ信楽牧場にいる馬は同じ現役馬でも、総じてレースまでにはまだワンクッションある状態の、リラックスした馬が多くなっています。実際、参加者たちが近づいて触っても平気な馬ばかりでした。
実はここでは、馬の手入れの体験や乗馬体験等のプログラムも予定されていましたが、あいにくの雨で、残念ながらそれらを行うことはできませんでした。ただその分、自由に馬に触れる時間を作っていただいて、特にこれまで馬に触れたことのない参加者の方は、とても喜んで馬とのふれあいタイムを楽しんでいました。


雨の中、信楽牧場を見渡す参加者たち


厩舎の中。馬はみんな驚くほどリラックス


餌の匂いを嗅がせてもらったりも


馬とのふれあいタイムは参加者も大喜び

熱のこもった質疑応答 ~社長の中内田さんと~


室内での質疑応答は熱のこもったものに

見学のあとは室内で、信楽牧場社長の中内田克二さんとの質疑応答タイム。牧場経営者の話を直に聞けるチャンスとあり、質問は自然と採用や雇用、そして働きながらJRAの厩務員を目指すことについてのものが多くなります。
信楽牧場からはこれまで、栗東と美浦をあわせて約70名がJRAのトレセンへと巣立っていきました。中には栗東の北出成人調教師や今野貞一調教師、社長のご子息で今年合格したばかりの中内田充正調教師のように、調教師にまでなった方もいらっしゃいます。中内田さんはそういったJRAの競馬学校を目指す若者を雇用しつつ、受験勉強の指導もしていらっしゃるそうです。


信楽牧場社長の中内田克二さん

逆に、従業員の3割ほどは牧場でずっと働き続けていこうという方々で、そういう人も技術や指導力次第できちんとした待遇で迎えている、というお話でした。
栗東近辺の牧場の人材に関する連絡会の取りまとめ役もしていらっしゃる中内田さんは、例えば1週間や1ヵ月といった就業体験を希望する方には、牧場の紹介もしているとのこと。これに興味を抱いた参加者は、さっそく後日ぜひ連絡したいと中内田さんの連絡先を尋ねていました。

ノーザンファームしがらき ~開場間もない最新施設~

雨は信楽牧場を出る頃になって、ようやく止んでくれました。次の目的地であるノーザンファームしがらきはすぐ近くに位置していて、バスでほんの数分という距離。前述のように、信楽牧場の馬はここの施設を使ってレースを目指す馬に最終調整を施しています。
ノーザンファームしがらきは、2010年の10月に開場したばかりの新しい牧場です。全長800mという坂路コースや、ドバイワールドCが行われるUAEのメイダン競馬場と同じ素材である「タペタ」が使われた周回コース等、まさに最新鋭の施設が完備されています。実はちょうどこの見学会の日の夜が、今年のドバイワールドCの開催日となっていて、案内してくださったスタッフの説明の中にそのレース名が出ると、参加者たちの目がいっそう輝いていました。
牧場自体が新しいこともあり、調教コースだけでなく他の施設もすべて新しく綺麗なものとなっています。とりわけ従業員寮の立派さに保護者の方々が感心されていたのが印象的でした。


案内してくれたのはスタッフの手代木貴志さん


全長800mの坂路コース。その頂上付近から


寮など従業員の施設も充実

厩舎には有名馬が目白押し ~スタッフのお話も~


厩舎には有名馬がズラリ

あの三冠馬オルフェーヴルがここでの調教により大きく羽ばたいたことはよく知られていますが、それだけでなく、ノーザンファームしがらきには有名馬がたくさん入厩しています。厩舎の見学では、馬房にいる馬がどれも名前を知っている馬ばかりなので、競馬好きの参加者にとってはそんなところも大きな刺激になっていたようでした。


厩舎内でスタッフのお話も

日本でも有数の大牧場であるノーザンファームは、しがらき以外にも北海道や福島にいくつもの施設があります。このため、働きながらJRAの厩務員を目指している人の割合も他の牧場よりは少なく、こうした民間の育成牧場の仕事にやりがいを抱いて働き続けている人が多いということで、参加者にとってはこれもまた一つの形なのだと参考になっていました。
また、乗馬経験がなくても、騎乗未経験者向けの研修課程(ファームステイ)が用意されていたり、生産スタッフの道を選ぶこともできるというお話には、初心者の参加者が大いに勇気づけられていたようでした。

多くの発見のあった見学会 ~次へのきっかけ~

すべての見学を終え、バスが新大阪駅に戻ってきた頃には、もう雨はすっかり止んでいました。
見学会を通して、参加者の多くが、実際に働いているスタッフの生の声を聞けたことを喜んでいたのが印象的でした。ある保護者の方は、お子さんが女性ということもあり、「宇治田原優駿ステーブルでの昼食会で女性スタッフとお話ができたことがよかった」とおっしゃっていました。
今後の行動へのきっかけを掴めた、という方も多かったようです。
ある高校生の参加者は、「ぜひ牧場で働きたくなった、もっとたくさんの牧場の話を聞きたいので、夏に東京競馬場で行われる予定の〝牧場で働こうフェア〟に参加したい、できれば関西でも開催してほしい」とのことでした。
またある女性の参加者は、「生産牧場の話もいろいろ聞いてみたくなった」とのことでした。「夏休みに北海道で行われる予定の〝牧場で働こう体験会〟への参加も検討したい」という方もいらっしゃいました。
1日に3ヵ所を回るというハードなスケジュールでしたが、新大阪駅に戻ってきた参加者たちはみなさん、力強い足取りで帰宅の途についていました。
牧場や馬に興味のある方が、その夢を実現させるために次に何をすればいいのか、具体的なきっかけを得ることができた。この日がそんな1日になったのだとしたら、BOKUJOB事務局のスタッフとしては、こんなに嬉しいことはありません。

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