1. ホーム
  2. イベントに参加する
  3. 牧場で働こう見学会
  4. 2015 見学会レポート(関西)

2015 見学会レポート(関西)

2015 見学会レポート(関西)

恒例となった「牧場で働こう 見学会」関西編が、今年も3月14日(土)に開催された。『牧場で暮らしたい」『馬に乗って草原を駆け巡りたい』。小さい頃、誰でも一度はそう思ったことがあるはずだ。夢に見たこともあるだろう。もしかするとその夢が叶うかもしれない。現実になるかもしれない。
今回で第4回目を迎えた『牧場で働こう見学会in関西』。その夢を現実にと集まった見学者は男子7名、女子7名の計14名。年齢層も中学卒業予定者、高校生、社会人とバランスよく、なかには朝一番で広島から来た若者もいた。他に付き添いの父兄10名を合わせ、参加者は総勢24名となった。
当日は昨日からの曇り空を引き継ぎ、朝からあいにくの雨模様となったが、定刻の集合時間の8時前には全員集合、予定通り新大阪駅を出発した。
まずは移動のバスのなかでは事務局スタッフの挨拶、牧場での注意事項などの後、今回見学する牧場はいずれも栗東トレーニングセンタ―に近い場所にあり、レースを終えた馬が次のレースまでの間のトレーニングを主体に行われている牧場で、生産牧場ではなく育成牧場であるとの説明があった。
続いて参加者の自己紹介が行われた。この頃はまだ早々で硬くなっていた様子だったが「とにかく馬が好きです」「乗馬に通っています」「まったく未経験です」「親が競馬好きで、その影響で競馬が好きになり、今回参加しました」などと同じ思いを共有する仲間の挨拶に、次第に緊張の糸も解れていった。
移動中も雨は一向にやむ気配はなく、信楽インターを出る頃には時おり小雪も混じる天候。見れば路肩には雪が残っていた。そのため多少の渋滞はあったが、バスは最初の目的地のグリーンウッド・トレーニングに到着した。

グリーンウッド・トレーニング

まずはカッパを着用。事前に全員が説明を聞き取れるようにトラベルフォンを渡されおり、イヤホンを耳に挟んで万全の体制での見学となった。

見学は2班に分かれて行われた。グリーンウッド・トレーニングの田中マネージャーから「190馬房。バークのコース、ウッドチップの坂路コースなど」の施設の説明があり、続いて坂路コースのゴールにある小屋に入った。その600mの坂路コースを競走馬が駆け上がってくると、全員が食い入るような眼差しになった。

このグリーンウッドには珍しく牧場のなかに架け橋があり、渡った所に厩舎がある。そこでは第1回の「牧場で働こう見学者」の参加者が働いており、スタッフと久し振りの対面の一幕もあった。又、タイミングよく馬運車が到着し、馬を降ろす作業も間近で見学できた。

その後、質疑応答となった。説明には小山さんと女性の花城さんが参加。小山さんは既に厩務員資格を取得し、やがては栗東トレーニングセンターでの仕事を希望しているとのこと。田中マネージャーは「ここに来て試験に受かるまで、すごく早かったですよ。ええ、彼は間違いなく受かると思っていました」とのこと。「初心者でも、いいですか」「ええ、未経験でも大丈夫です。数ヶ月の研修制度もあり、近くの水口乗馬クラブと提携するなどしています」とバックアップ体制も万全とのこと。女性の花城さんは「ここは、すぐ近くに住宅があるように街中です。生活スタイルも変わりませんよ」「他に女性は?」「私を入れて3名います。全員馬に乗れます。勿論、最初から上手く乗れませんでしたが、しっかりと教えてもらえます」というやり取りに、女性見学者も安心したようだ。

その後、独身寮『蹄』を見学。ここは牧場と少し離れた所にあり、それがかえってプライベート的に良いらしい。ところがこの独身寮が実に立派。寮ではなく、もはやマンションである。雨の中であったが、あっという間の1時間半。田中マネージャー、小山さん、花城さんへの感謝の気持ちを後にして、昼食タイムとなった。

信楽と言えば狸の置物が有名であるが、昼食処もその名の通り『たぬき村』。出発の頃になると雨は上がっており、さすがお狸様のご利益の賜物もあった。


坂路コースのゴールにある展望小屋から調教の様子を見学


調教馬は馬房エリアから専用の橋を渡って坂路コースへと向かう


坂路調教の様子

信楽牧場

同じ甲賀郡に位置する信楽牧場には30分ほどで到着。中内田社長自らバスに乗られ、全容を見渡せる小高い丘に登り、施設などを説明された。その後は厩舎等の見学。馬房にいる現役の競走馬を撫でたりし、中内田社長のご好意によりパドックで乗馬体験をさせていただき楽しいひと時を過ごした。集合写真も馬をバックにハイポーズ。

その後、食堂で中内田社長の説明があった。この牧場から調教師、厩務員、調教助手など60名近くが育っているとのこと。ただ「憧れだけでは通用しない」「華やかな舞台とは違う」など厳しい現実も語られ、女性に対しては「どうしてもパワー不足な点は否めないですね。しかし、それも努力次第。男子も怠けていては上達しません。日頃からトレーニングしている者は上達もし、仕事も任せられます」とあくまでも本人次第である事を強調。「この道に入るには多くの選択肢がありますが、私個人としてはBTC軽種馬育成調教センターやJBBA日本軽種馬協会の研修制度を推薦したいですね」とアドバイスされ、「BTCは育成中心、JBBAは生産から育成までの全般を目指し養成している。女性で生産に興味がある方は、その道もありますね。いずれもそこを経由して来る人は社会生活としての規律も出来ており、乗馬の基本がしっかりしていますよ」などの利点をあげられた。見学者もスタッフにBTC、JBBAのことを質問。「BTC,JBBAの卒業者の就職率は100%です」との返答には、一堂驚きの声が上がった。ここで牧場の田渕さんが紹介された。田渕さんは3年前の『牧場で働こう見学会』の参加者で、BTCに1年通い、昨年の8月に信楽牧場に勤務している。BTCを卒業するときには成績優秀者の特典でもあるアイルランド研修にも行ったという。「早起きは辛かったですか」「一番の喜びは」など具体的な質問が飛んだ。

最後に中内田社長は「先ほど憧れだけでは通用しないと言いましたが、基本的な事は馬が好きだということです。その好きな事を仕事にできる。これは幸せですね。一生懸命します。しかも担当した馬が優勝する。これほどの喜びはありません。皆さん、心からお待ちしています」と熱く語られた。


バスに乗り込んで施設の案内をしてくれた信楽牧場の中内田社長


飼料等についても見学、説明していただいた


乗馬体験をさせていただく参加者


従業員食堂での質疑応答

ノーザンファームしがらき

ノーザンファームしがらきは、その名の通り信楽牧場のすぐ近く。こちらの方が少し高い所に位置しており、少し肌寒い感じがする。

「夏も涼しく馬の環境には最適ですね。ところがごらんのように高圧線が通っているでしょう。これに雷が落ちるのですよ。避雷針を設置していますが、落ちた時の音。それこそ何かが爆発したかと思いますよ」と笑顔で言われたのはノーザンファームしがらきの手代木さん。

コースは周回コースが1周900m。坂路コースが800m。その坂路コースのラチ近くでの説明で、見るとそのあまりの長さに見学者はビックリ。栗東トレーニングセンターの坂路コースが1000mだから、トレセンと大きな差がないわけである。これなら栗東に帰厩後、2週間ほどでレースに使え、勝利するのも頷ける。「女性も3名か4名いますよ。やる気次第で仕事はいくらでもあります」とのことで、さすが大所帯ならでは、である。

馬房数は320馬房。ひと厩舎30馬房で、10棟の厩舎と10馬房のひと棟がある。馬房に入るとオープン馬のオンパレード。血統も一流どころばかりで、全員感激とため息の連続であった。

厩舎作業、育成については従業員の田中さんが説明に参加。京都市出身の田中さんは、今年で4年目。高校時代は乗馬部だったというが「競走馬の調教はぜんぜん違う」と、基本からみっちりやり直したとのこと。1日の流れ、調教鞍数などを説明してくれた。「しんどい時もあるが、担当馬が優勝すれば、苦労なんか吹っ飛んでしまいます」とのこと。これは、どの牧場でも同じあることを認識した。あまりにもオープン馬が多いこともあり時間の過ぎるのも早く、気づけば帰途の頃になっていた。


ノーザンファームしがらきに到着


坂路コースを見学し、説明を受ける参加者

帰りの車中

全行程を終了し帰途に就いた。車内ではBTCの施設などのDVDを放映。早朝からスケジュール。午前中は雨のなかでの見学、緊張の連続でもあり疲れがどっと出るものだが、BTCに関心があるのか熱心にDVDを見ていた。スタッフからは、関西では宝塚記念の週に今回の見学会で聞き逃したことなど、詳しく聞きたいことなどを受け付けるイベントの予定があります。ぜひご参加をお待ちしていますとのアナウンスがあった。

これで第4回「牧場で働こう見学会in関西」は無事終了しましたが、今回の見学会のなかから一人でも多くの方が牧場で働く人がでてくれることを心から願っています。今度は「牧場で逢いましょう」。

最後になりましたが、快く見学を受け入れて対応していただいた3牧場に深く感謝申しあげます。


馬も一緒に参加者全員での集合写真(信楽牧場にて)

過去のレポート