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2023 見学会レポート(関西)

2023 見学会レポート(関西)

関東見学会同様に2019年の春以来、4年ぶりとなった「牧場で働こう見学会2023in関西」が3月18日(土)に開催された。
集合場所である新大阪駅では前日からの雨が降り続けていたが、そんな天気を気にすることも無く集合時間に向けて続々と参加者が集まってきた。出発前の出欠確認を終えて、定刻通り新大阪駅を午前8時に出発。
早速、移動時間を利用して、車内では同行スタッフの紹介、当日のスケジュールや見学会における注意事項の案内を行った後、各参加者から簡単な自己紹介と見学会の参加動機の発表があった。少し緊張しながらもしっかりと各々の参加動機を語っていった。「馬が好きなので、馬に関わる仕事に就きたいと思った」「乗馬を通して馬に関心を持ち、馬の牧場について知りたいと思った」「競馬のCMを見たことがキッカケで、競走馬の牧場に興味を持った」と様々な動機がある中、「高校を卒業後、BTC入学を希望していますが、試験に受からない場合を考えて、色々な牧場を見学してインターンシップ先を探すことも考えています」と、しっかりと将来を見据えて馬の世界を志している参加者の姿勢に、少し肌寒い天気とはうらはらに、熱気を帯びた車内での移動となった。

グリーンウッド・トレーニング

最初の訪問地は、栗東トレーニング・センターから車で約30分の距離で滋賀県甲賀市に所在するグリーンウッド・トレーニング。1周1000mの周回コースと600mの屋根付坂路を備え、全200馬房を有しており、平成13年の開業以来多数の国内・海外G1勝を含むすばらしい育成実績を残している育成牧場だ。牧場に到着すると、グリーンウッド・トレーニングの白澤統括部長がお出迎え。丁度牧場に到着した頃、新大阪駅出発時に降っていた雨は、傘を必要としない程度の空模様となった。


スタッフの皆さんとの質疑応答

こちらでは、就業希望者と同伴の保護者の2グループに分かれての見学となったが、就業希望者のグループはベテランスタッフの佐々木氏に担当していただき、最初に厩舎の見学に向かった。まずは厩舎内を見学。調教を終えて飼い付けを待つ馬たち。中には落ち着かない馬もいれば、のんびりと過ごす馬など様々で、その様子を興味深そうに見学する風景が見られた。厩舎見学が終わると、厩舎の外で質疑応答を開始。まずは佐々木氏から今回の参加者から事前にいただいた質問内容に回答していただいた。「実際に牧場で働いている方の仕事内容やどのように馬と接しているのか?」「進学して大学で畜産の勉強と馬術部の経験を積んだ方がよいか?あるいは高校卒業後すぐに実務経験した方がよいか?」といった様々な質問に対して適格な回答をいただいた。時折、調教を終えた馬が近くを横切ることもあったが、佐々木氏の回答を終始真剣に聞き入る参加者一同であった。また、グリーンウッド・トレーニング入社1年目の若手女性スタッフも途中から参加し、質疑応答に加わった。「なぜ、この職業に就いたのですか?」「入社して以降、自分自身の乗馬技術を向上させることはできますか?」「馬と接する時に大切にしていることはあるか?」といった、質問を投げかけられたが、女性スタッフは終始明るく笑顔で回答し、入社1年目とはいえ貫録さえ感じる姿であった。


独身寮「蹄寮」を見学

質疑応答後は、坂路コースのゴールにある監視小屋内を見学。小屋の正面からまっすぐ伸びる坂路を見た参加者は、勾配のある坂道や小屋内に設置されているモニターを見学。あいにく調教中の様子を見学することはできなかったが、皆施設の充実さや規模感に感心しながら見入っていた。その後、牧場施設から少し離れた場所にある独身寮『蹄寮』を見学。この蹄寮が非常に立派で、部屋は1ルームだが収納やユニットバス、エアコン完備等の付帯設備が充実。居住に申し分ない部屋となっており、保護者の方も安心して子供を送り出すことができる施設であると感じた。寮の見学後、同伴の保護者グループと合流し、グリーンウッド・トレーニングを後にした。
次の牧場に向かう途中に昼食時間となり、信楽焼の狸の置物が有名な信楽の『たぬき村』という食事処で昼食を取り、次の見学牧場「信楽牧場」に向かった。

信楽牧場

バスはほどなくして、信楽牧場に到着。2台のバスには、中内田代表取締役会長と信楽牧場での勤務経験もあるBOKUJOB相談員の糸数氏がそれぞれ乗車され、車窓から見える調教用の周回コースを横目に見ながら牧場施設の説明をしていただいた。コース馬場の内側は緑草が生えており「コースの内側に緑色に見えるのは牧草地で、当牧場の特徴は、ここから取れる新鮮な牧草を馬に与えられること」とのこと。この後はバスを降りて厩舎を見学。


中内田会長の説明に注視する参加者

まずは厩舎外にある洗い場を見学。丁度馬体を洗っている最中であったが、急に大勢の人が集まってきた状況に、馬が多数の参加者を警戒する様子を見せた。「見慣れない物を確認しています。馬は警戒心が強い生き物なので、自分に危害を加えるかどうか注意深く観察します。優しく接することが重要です」と中内田会長。厩舎内に入り最初に目についたのは“ヨウシタンレイ号”。実は中内田会長の所有馬であり、この日の1週間前に未勝利戦を勝ったばかりの現役競走馬だ。中内田会長のご厚意で、馬房越しに馬に触れさせていただいたが、ヨウシタンレイ号は多くの参加者を前に戸惑うことなく落ち着いた様子で、中内田会長は「これまで優しく接してきたので、人に対して全く動じていません。逆にいじめられた経験がある馬は、絶対に馬房から顔を出してきません」と語る。信楽牧場のスタッフと馬の関係が良好であることは想像に難くない。その後、中内田会長から馬の飼葉の説明をしていただく。「燕麦とミネラル等の色んな栄養素を配合した飼葉を付けています。ただ、どの馬も同じ配合ではなく、各馬の体格や運動量によって量などを変えています。栗東トレーニング・センターの厩舎からのリクエストに応じて変えることもあります」といった説明や、海外から輸入した牧草の匂いを嗅いだりする等、普段体験することのないことを体験していった。
厩舎見学の次は1週800mの周回コース馬場を見学。コースは牧草地を大きく囲むように作られており、広々と雄大なだけでなく、そこにいるだけで心が大らかになるような環境。馬もさぞ気持ちよく走れるのではないかと感じるコースだ。

その後、事務所にも案内いただき、壁一面に飾られた信楽牧場で調教した活躍馬の写真を見学。まず驚いたのが、非常に多くの活躍馬の写真が飾られていたという点。そして、多くの写真の中に非常に古い白黒写真も飾られていたのも特徴だ。これはまさに、信楽牧場が長く関西の外厩として活躍してきたという歴史を感じることができる展示であった。
牧場の施設を見学した後は、質疑応答。参加者からの事前アンケートによる質問事項をもとに、中内田会長自ら回答していただく機会となった。「馬の調教で気にするところはどこですか?」という質問に対しては「異常があると、いつもの息使いが早かったり、不規則であったりするので、息使いを確認します。その他には馬体を確認しますが、特に目を見ます。目は口ほどに物を言うといいますが、馬も目をみて気付くことが多くあります。あとは毎日馬を触ることですかね。これも元気な時と異常がある時の反応の違いを感じます」と中内田会長。その後信楽牧場の若手スタッフが登場。「自分は大学を卒業して3年間土木作業現場の現場監督をしていて、このままサラリーマンで終わるのは嫌だったので、何かしたいことがないか考えた時に、競走馬の牧場で働きたいと考えました」と自己紹介。「自分は全くの未経験だったし、年齢も20代半ばで体力的にもすぐに牧場に入れると思わなかったので、湖南馬事センターで乗馬の経験を積みながら信楽牧場で働くことを決めました」とのこと。この経験談は非常に参考になる参加者もおり、皆熱心にその経験談を聞き入っていた。最後に「僕が思うのは、やりたいことがあるなら直ぐ行動に移すことが大切だと思います。競走馬の牧場で仕事し始めるのは早いに越したことはないですが、遅いことがダメというわけでもなく、大事なのは目指そうと思ったらその気持ちを大切に、行動に移すことが大事だと思います」と競走馬の牧場に働こうと考えることの大切な部分を語っていただいた。まさにその思いを持っている参加者は、背中を押された気持ちになったということが想像できるお話しだった。


中内田会長との質疑応答

最後に、BTCの教官を務めた後、湖南馬事センターのセンター長を務められている齋藤氏から、初心者がどのように育成牧場で働けるように育っていくかを詳細に説明いただき、参加者にとっては貴重な情報を得る機会となった。
質疑応答が終了した後、お土産の蹄鉄をいただき、中内田会長と牧場スタッフのお見送りの中、次の目的地「ノーザンファームしがらき」に向かった。

ノーザンファームしがらき


山本氏から概略説明を受ける

ノーザンファームしがらきは、その名の通り信楽牧場のすぐ近く。少し標高の高い山間に位置しており、バスから降車すると少し肌寒い感じがする。
今回ご案内いただくのは、ノーザンファームしがらきの山本氏。まずはクラブハウス前で牧場の説明をしていただいた。最初にノーザンファームの組織体系を説明。そして牧場施設の説明と続く。「ノーザンファームしがらきは全長800mの坂路コースと1周900mの周回コースがあり、特にメイントラックとなる坂路コースは、高低差が約40mもあり、JRA栗東トレーニング・センターに匹敵する施設を有しています」と山本氏。また環境については、「ノーザンファームしがらきは、栗東トレーニング・センターに負けないくらいの設備を誇っていますが、寒さも負けないくらい寒いです!夏は涼しくて良いですけどね(笑)」と冗談を交えて誇らしく語る。確かにバスを降車してからの肌寒さと、車窓から見える大規模な施設は誇るに足ると再認識するコメントであった。


目を輝かせて厩舎を見学

その後、まだ真新しさを感じる厩舎に移動。厩舎内に入り馬房内でくつろぐ預託馬たちを見ると参加者が少しざわめく。厩舎内の馬房のプレートには父オルフェーブル、父ロードカナロア、父キタサンブラックといった馬名が並び、どの馬も良血のオーラが滲み出ている。それにあてられたのか、参加者も一層目を輝かせて厩舎内を見学している姿が印象的であった。厩舎ではノーザンファームに就職して20年以上のベテラン厩舎長が説明・質疑応答に対応いただいた。「馬主様の大事な馬を預かっているという気持ちをしっかり持って、それぞれの馬一頭一頭のことを考えながら仕事をしています。たまに夢の中でも気になる馬のことを考えていることもあります(笑)」と“育成牧場スタッフの心構え”を語っていただいた。最後に「スタッフは皆、騎乗技術の向上や馬との関わりあい方、仕事の進め方等を試行錯誤しながら、日々個々のスキル向上を目指し、プロフェッショナル意識を持って業務にあたっています。それが結果につながっていると思いますし、その結果に向かってこれからも努力していきたいと思っています」との言葉があり、施設の充実だけではなく、そこで働く人材もプロ意識を持って日々成長しているというノーザンファームしがらきの凄さを感じた。気付けば見学終了の時間となり、各々興奮冷めやらぬうちに、バスに乗車し帰路に就いた。

帰路のバス車中では、参加者の方々には車内でアンケートを記入していただき、ノーザンファームしがらきからご提供いただいたグッズの抽選会を行ったり、BTC研修やJBBA研修の説明を行ったりした後、各々1日を振り返りつつ車中での時間を過ごした。午後6時過ぎに無事新大阪駅着、解散となった。

今回の見学会では、見学させていただいた牧場が、馬のことだけではなく、人材育成の面でも、環境向上に取り組む姿勢を感じることのできる見学会となった。今後のBOKUJOBの活動は、6月3、4日(安田記念)に東京競馬場で、BOKUJOBメインフェアが4年ぶりに開催されます。今回見学会に参加されなかった方にも、このレポートを読んで少しでもBOKUJOBに関心を持ち、足を運んでいただければ幸いです。

最後に、今回見学会にご協力いただいた各牧場の皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

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