2017 杵臼牧場レポート
2017 杵臼牧場レポート
杵臼牧場
まるで親戚の家に遊びに来たかのようにアットホームな雰囲気でいつも出迎えてくれる杵臼牧場。そんな雰囲気を感じ取ったのか、今年お世話になる女子3名も元気いっぱいのあいさつからスタートです。「高校が農業高校なので豚と鶏は身近にいますが、他の動物の飼育方法を学びたくて参加しました」「馬や競馬の魅力を伝える人になりたい。競馬の表舞台しか知らないので生産牧場の魅力などを知る機会にできたらと思って参加しました」。抱負を交えた自己紹介には自然と熱が入ります。
そして荷物を運ぶ間もなく削蹄を見学させてもらいます。削蹄とは、馬の蹄を馬用の大きな道具で切ったあと、やすりで削りながら形を整えていく作業です。その後、実際に歩かせて、歩様に乱れがないよう微妙なバランスを見ながら調整を重ねていくのだそうです。「蹄なくして馬なし、という言葉があるくらい馬にとって蹄は大事なものなんだよ。」と鎌田信一さんが教えてくれました。装蹄師さんになるには専門の学校に通い免許を取る必要があるそうです。馬に関わる仕事は考えていたより多岐にわたるのかも知れません。杵臼牧場が信頼する装蹄師さんはフレンドリーな外国人さんで、削蹄作業をしながら色々話しかけてくれて、そこに鎌田社長のお孫さんも参加。和やかな雰囲気に、女子達はすぐに打ち解けたようです。
午後からは放牧を手伝わせてもらいます。厩舎から離れている放牧地まで歩いて行く時は、5~6組の親子馬ペアが一緒に移動するため大所帯になります。前を歩く馬とスタッフに遅れを取らないよう、自分に任せてもらった馬をリードして放牧地まで歩いて行く事に一生懸命な様子。これを何度も繰り返すのでかなりの運動量になるのですがこれも大好きな馬のため。そう思うと頑張れるのです。
牧場の朝は早く、翌日は午前5時から作業開始です。「集牧した馬を迎えるために寝藁をひいたり飼い葉の準備をしたりして、帰って来た馬達が気持ちよく過ごせるように準備しました。」手入れでは「積極的に馬の世話を任せて下さって、私達だけで馬房に入ってブラッシングなどをさせてくれました。本当に馬を近くに感じて良い体験になっています」など、どんな作業も楽しんでしています。途中、宮内牧場の参加者が遊びに来てくれる場面があるなど牧場同士のつながりが、参加者たちを身近なものとしてくれます。
「今年の参加者は元気だし、馬が本当に好きなんだと言う事が伝わってくるので教えがいがあります。何をしていても楽しそう」と牧場スタッフの増子孝行さんがいうと、次代を担う鎌田正信さんも「馬を見てずっと可愛いって言っているよね。」と嬉しそう。鎌田さんは「牧場の仕事は理想と現実のギャップが激しいと思いますが、それを埋められるのは仕事に対する充実感と馬に対する愛情だけ。馬が好きだからとこの世界に飛び込んできても、現実に耐えられずすぐに辞めてしまう人が多いのは残念です。大変かもしれませんが、仕事の内容を理解し、馬が好きであれば楽しいはず」と話し「そういう意味でも牧場で働く体験をして仕事の内容を知ってもらうのは大切だと思います。日本では女性のスタッフは少ないですが、海外の競走馬のセリに行くと女性だけの牧場など珍しくありませんし、全体でみても半分くらいは女性スタッフが占めているんですよ。馬への対応も柔らかいですし、男性が気が付かないような事も女性は気が付いたりするので牧場業界に女性スタッフが増えてくれると嬉しいですね」。参加者たちにとっては、心強い言葉になったようです。
代表の鎌田正信さんは「今年の参加者たちも頑張ってくれました。この2泊3日で生産牧場の日常を伝えられたらと思っています。競走馬の生産牧場という仕事には夢がありますし、自分が携わった馬が走った時の感動は格別です。ですからちょっとくらい辛くても諦めずに頑張って欲しいですね。」と馬の仕事を目指す参加者たちにエールを送ってくれました。