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2017 体験会レポート(3日目)

2017 体験会レポート(3日目)

レポート(3日目)

各牧場に泊まりで仕事体験

初めての牧場仕事を体験した夜は、ホテルに戻らずにぞれぞれの牧場で一夜を過ごします。今回、男子高校生3人を受け入れてくれた新ひだか町の(有)岡田牧場は、生産、そして育成部門を持つ総合牧場で、そうした一貫教育の中から重賞5勝のヤマカツエースを送り出しています。従業員も多く、体験会参加者には空室になっている寮が用意されていました。

初めての仕事を終えた夜に大切なのはしっかりと休養をとり、翌日に備えること。なぜならば、牧場の朝は早いからです。それは体験会参加者といえども例外ではありません。
体験会初日に繁殖牝馬引かせてもらった3人の2日目は、まだ夜も明けない午前3時30分にスタートでした。育成馬に朝飼いを与えて、そして昼飼いを用意します。ようやく太陽が顔をのぞかせる頃に、朝の仕事がひと段落して休憩に入ります。時計を見れば午前5時。普段の生活であれば、まだ就寝中の時間だと思います。


慣れない道具に四苦八苦

育成厩舎では午前6時から乗り運動がスタートします。基本的にサラブレッドは暑さに弱い動物です。早い時間から乗り運動を始めるのは、馬を人間の生活スタイルにあわせるのではなく、人間が馬という動物に寄り添う象徴でもあるのです。
馬が運動中、空いた馬房を掃除するのも大切な仕事です。調教を終えた馬は、洗い場で汗を洗い流されたのちに馬房に戻ります。馬房に戻った馬が気持ちよくリラックスできるように整えておくのも大切なことなのです。このとき気をつけなければいけないことは、厩舎の廊下は乗り運動に向かう馬、戻ってくる馬で混み合います。そういう馬たちの邪魔にならないように手早く作業をしなければなりません。

先輩スタッフが、いろいろな道具をさりげなく使って寝藁をひっくり返しながら汚れた部分を取り除きます。この作業、見た目は簡単ですが、実際にやってみると難しく、誰もが悪戦苦闘。それから飼葉づくりひとつ取ってみても、それぞれの馬毎に違うメニューが用意されているために効率的に、なおかつ順番を間違わないように馬房へと運ぶためには荷車へ載せる順番も決められています。すべての作業が連動し、そして無駄がないことも学びました。
頑張った彼らへのご褒美は岡田社長の粋な計らいで門別競馬観戦。名物のバケツジンギスカンに舌鼓を打ちながら、汗を流すことの喜びを実感します。「この仕事は馬が好きだという気持ちがあれば、頑張れるし、生き物が相手なので常に向上心を持ち続けることが大切」という言葉が参加者へ送られました。

同じく3人の男子高校生を受け入れていただいた新ひだか町の(有)グランド牧場も生産、育成、そして市場コンサイナーという顔を持つ総合牧場です。ラブミーチャンやサンビスタ、ヒガシウィルウィンなどの活躍馬を出す一方で、昨年の関東オークス馬タイニーダンサーなどオーナーブリーダーとしても多くの活躍馬を出しています。

ここでは生産牧場にはない育成施設、あるいは繁殖厩舎、中期育成厩舎などの案内から体験会がスタートしました。馬を厩舎から放牧地へと移動させるときはスタッフが馬を引き、参加者はその横を歩くように指示されます。馬の歩くスピードを体験してもらうためです。一度だけではなく、スタッフと一緒に厩舎と放牧地を何度も往復するのです。草の上を歩くのは、意外に体力を要します。
それが終わると、馬房と廊下の掃除です。普段の生活では掃除機を使うのかもしれませんが、ここではホウキを使用します。簡単そうに見えますが、見るとやるでは大違い。普段は使わない腕の筋肉がすぐに悲鳴をあげます。牧場仕事は体力勝負だと最初に思い知る瞬間だったかもしれませんが、これはまだホースマンとしてのスタート地点に立ったにすぎません。


念願の馬とのふれあい

馬房に戻った馬を手入れする時間は、牧場という仕事で馬と触れ合う貴重な時間です。実際、体験会に参加した方が一番驚くのは「牧場で働くということは、馬に触れる時間が驚くほど少ない」ということです。ここでは馬をブラッシングしながら、必ず馬に声をかけます。人間が要求することを馬が理解し、応えてくれたら必ず褒める。言葉をかけながらブラッシングすることで馬は、人間が敵ではないことを理解するそうです。それはサラブレッドが競走馬となる上で最も大切なことなのかもしれません。
この日も牧場の寮で一夜を過ごし、翌日は午前5時から牧場の1日がスタートします。

毎年、参加者を生産部門で受け入れていただく様似町では、今年は育成部門の様似町軽種馬共同育成センターで3人の男子高校生を受け入れてもらうことになりました。

とはいえ、牧場仕事の基本は掃除です。3人に与えられた仕事は馬房掃除。大型フォークを使って寝藁をほぐし、そして汚れた部分を器用に取り除きます。たったこれだけのことが上手にできません。初めて経験することだから当たり前といえば当たり前のことなのですが、牧場の仕事は簡単そうに見えることでも、実際にやってみると大変なことがたくさんあります。例えば寝藁を積んだ一輪車を真っ直ぐに押す。一輪車に積まれた寝藁を堆肥場に捨てる。水の入った水桶を馬房内の決められた場所に吊るす。牧場スタッフが当たり前のように行っている作業が、出来ないのです。それを見ていた先輩スタッフからは「今は思うようにできなくて当たり前。続けていくことが大切なのです」というアドバイスもいただきました。

それから1歳馬の騎乗馴致や調教中の2歳馬を見学させてもらいました。また、BTC軽種馬育成調教センターでも調教を行っており、施設にも案内していただきました。屋内1000メートルの直線走路や、1600メートルのトラックコース、あるいはスターティングゲートなど普段はなかなか見ることができない調教施設を目の当たりにすることで参加者は競走馬を育てていくということを肌で感じ取ったようです。
「すべてが新鮮で刺激的な5泊6日でした。牧場で働きたいという気持ちが強くなりました」とはある参加者。様似町軽種馬共同育成センターの辻啓太さんは「今回は、実際に作業をしてもらうことはもちろんですが、生産から育成、調教といった牧場で行う仕事を見てもらうようなスケジュールを組みました。その中から、もっとも興味を持ったことを見つけてほしい」と言う言葉で参加者を見守っていました。

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