2019 体験会レポート(4日目)
2019 体験会レポート(4日目)
レポート(4日目)
体験会の内容も後半に入ります
この日が牧場実習としては最終日。そして、午後からは多くの参加者が楽しみにしていたという乗馬体験があります。
しかし、様似町軽種馬共同育成センターで牧場実習をさせていただいた3人はひと足早く乗馬体験をさせてもらっています。なぜならば、ここは競走馬の育成牧場だからです。多少の経験はあるものの乗馬の経験は「ほとんどゼロに等しい」男子高校生3人に対し、先生役を務めてくれたのはアドマイヤフジ。GⅡ競走の日経新春杯、そして中山金杯を2連覇した名競走馬です。3人は「厩舎作業だけかと思いましたが、馬にも乗れることができて本当に貴重な経験をさせてもらいました」「最初は不安しかなかったですが、馬に乗ることで、自信にもなりました」と、それぞれ表現は異なりますが充実した日を過ごしたようです。
しかし、その一方で育成牧場の朝は早く、午前5時から作業が開始します。夜間放牧をしない馬たちを放牧地までリードするのですが、体の大きな馬たちは迫力満点。それをまったく意に介さずに馬をリードする先輩たちを、尊敬のまなざしでみる姿が印象的でした。
馬を放牧に出したあとは厩舎作業です。汚れた寝藁を取り除きながらボロを拾い、そして新しい藁を補給し、馬が快適な時間を過ごせるように形を整えます。それが終われば、水桶や飼い葉桶を洗って、馬たちのために新しい水や飼い葉を用意しなければなりません。言葉にすれば簡単かもしれませんが、これらは中腰で行うために、これがまた大変な作業になります。今回、参加いただいた3人は牧場の仕事について「興味がある程度」「将来は、ぜひとも牧場で仕事がしてみたい」あるいは「調教師、厩務員になるための第1歩」と、それぞれの志は大きく異なりますが、与えられた仕事をどんどんこなしているうちに「楽しくなった」「出来ることが増えていくのが嬉しかった」などと前のめりになっていきます。そして、ここでもまた作業の合間に、実際に働くスタッフや辻代表と牧場の仕事や生活、そして将来について話し合う時間が持てたことも貴重な経験となったようです。
ほとんどの参加者が「最初はちょうど良いか、少し長いかと思った」という2泊3日の牧場実習ですが、終える時間が近づくと多くの方が「帰りたくない」「もっと長くても良い」「馬について、もっと知りたい」などと異口同音の感想いただきました。夏休みという貴重な時間をいただいた私たちスタッフにとっては、耳が痛い反面、充実した時間を提供できたことにほっと胸を撫で下ろします。
午前中でそれぞれの牧場実習を終えると、最初の宿泊地のAERUに再集合。昼食を取りながら、午後の乗馬体験に備えます。
乗馬体験は、比較的大人しいAERUの乗用馬を用いて行います。「経験者」「多少の経験者」「まったくの初心者」などそれぞれのキャリアにあわせて4つの班に分かれての乗馬体験です。
私たちにとっても嬉しい誤算は、この乗馬体験の待ち時間の間に参加者同士のコミュニケーションが驚くほど深まったことでした。志をひとつにした同世代の方々とはいえ、実習をともにしたグループだけではなく、多くの情報交換が行われ、その結果が「ほかの牧場でも体験実習をさせてもらいたかった」という感想につながると同時に「たくさんの友達が出来た」という声もいただきました。
乗馬は、馬場内での部班による常歩、そして速歩だけではなく、外乗も経験することができました。「初めて馬に乗る」という人は、その高さに驚きながらも手綱の持ち方や、人間の意志をどのように馬に伝えるのかという基本的なことを教わり、そして背中の感触を味わいます。止まっている馬を歩かせる方法や、歩いている馬を止める方法。右に曲がりたいとき、左に曲がりたいとき。そして、自分がイメージするコースを歩かせる方法などを教えてもらったあとの外乗は、約20分程度の散歩と、そして広い放牧地で馬に運動をさせます。しかし、外に1歩出ると、そこには馬が大好物にする新鮮な青草が生え揃うコースを歩かなければなりません。油断すると馬は立ち止まり、草を食べようとしてしまいますが、心を鬼にして、今は食事の時間ではないことを馬に教えなければなりません。それもまた、大切な馴致なのです。
そして、この日の夜はBTC軽種馬育成調教センターが行う「育成調教技術者研修」の養成スタッフ、そして実際に牧場で働く人たちと夕食をともにします。参加者の中には騎乗スタッフになることを夢見ている若者も多く含まれており、研修制度についてや、実際に牧場での生活や仕事、あるいは今、自分が抱えている不安などについて真剣な話し合いが行われました。