2013 フェアレポート

2013 フェアレポート

「世界に通用する馬づくり」は「まず人づくりから」という基本理念のもと、牧場の仕事に興味を持つ若者と優秀な人材を求める牧場とのかけはしになろうという「牧場で働こうBOKUJOBフェア」。
4回目となる今年は初めて競馬開催日となる土曜、日曜日に、場所はいつもの東京競馬場で行われました。

進歩する恒例行事BOKUJOBフェア

初の2日間連続開催となった今回、一部には参加人数などを危惧する声もありましたが、最終的には例年と変わらない約400人の方に足を運んでいただきました。
今回の最大の特徴は、乗馬体験、厩舎見学、厩舎作業体験、造鉄デモなどイベント色の強い「馬とのふれあいコーナー」を廃止した代わりに、会場内に交流スペースを設置。実際に牧場で働いている若手スタッフと自由に話ができる空間を用意し、今まで以上に人的コミュニケーションを深めようという試みを行いました。

いよいよ開始

さて、オープニングは午前10時。講演会場では、司会をつとめる竹山まゆみさんからBOKUJOBフェアの主旨に関する説明のあと1日のスケジュールや会場エリアの説明、講演のスケジュールなどのアナウンスがあり、その後はブースを出展している16牧場の担当者が挨拶を兼ねた牧場ピーアールを行いました。その頃になると、会場は用意された椅子が足りなくなるほどの盛況ぶり。参加者の方々がこのフェアによせる期待の高さを感じさせました。

社台コーポレーションは生産馬のオルフェーヴルを例に出して生産、中期育成、クリニック、そしてスタリオンという4つの事業を紹介。加藤ステーブルは「騎乗スタッフだけではなく、事務職員も募集しています」と幅広い人材を求めていることをアピール。またダーレー・ジャパン・ファームは「ドバイの首長、シェイクモハメドが世界的に展開している競走馬の生産牧場のひとつです。世界7ヶ国で種牡馬をけい養しています」とスケールの大きさを強調。それぞれの牧場が、自己PRするなかで、とくに参加者の胸に響いたのは、この日、生産馬のハクサンムーンをアイビスサマーダッシュに出走させる白井牧場。担当者自身「昨年のフェアでは、私はみなさまの側におりました。まったく経験がなかったので戸惑うことも多かったのですが、入社して7ヶ月。今日は、みなさまにお話をさせていただく立場でここに来ました」とあいさつ。身近な存在にオープニングセレモニーが終わると、同牧場のブースにはたくさんの人が集まっていました。

コミュニケーションエリアでは、16の牧場と直接対話

メイン会場の「コミュニケーションエリア」は、今回参加した16の牧場がブースを出して、牧場や牧場での仕事などを説明したり、参加者からの質問を受けたりするコーナーです。用意したパンフレットを使って説明したり、実際の作業をDVDに収めて参加者の理解を得ようとする牧場もありました。

真剣な表情でメモをとるような参加者も多く「回を重ねて、参加者も牧場の仕事というものをある程度理解したうえで参加いただいているケースが多くなっているように感じています。とくに今回は保護者の方と一緒に参加いただいた方が多く、仕事面よりも生活に関する質問が多かったように感じます」というような声があちらこちらから聞こえてきました。

交流スペースでは、特定の牧場担当者には聞きづらいことも

今回から初めて設置された交流スペースは、現在、牧場で働いている業界の先輩たちと気軽に話ができるようにと設置されました。結果は大成功。個々の牧場ブースではなかなか聞きづらい仕事全般に関することや、生活に密着した話。あるいはこの仕事を選んだきっかけや動機などを直接聞けるとあって、大いににぎわいを見せました。

また、すぐそばの休憩エリアでは、昨年まで交流スペースの役割を担っていた「軽種馬青年部相談コーナー」が、今年も若手牧場主が牧場での1年間の仕事の流れや北海道での生活に関するナマの情報を参加者らに伝えていました。
そして、同スペースには「競走馬のふるさと案内所」が用意した往年の名馬のパネルも飾られ、参加者は、馬産地で元気そうに過ごす馬たちの写真に心なごませていました。

「生産牧場と育成牧場の違いも良くわからなかったのですが、大変参考になりました。漠然としかわからなかった牧場の仕事をていねいに教えてくださったので、(牧場を)身近に感じることができました」と好評でした。

「まずは技術を習得してから」
各種研修の案内や相談コーナーは大盛況

牧場が求める人材を知れば知るほど、技術や経験のない参加者は不安に思うもの。そういう不安を打ち消すためにBTC軽種馬育成調教センター、JBBA日本軽種馬協会、JFA日本装削蹄協会ではそれぞれが行っている研修制度についての説明と案内を行いました。そのなかではBTCとJBBAの研修制度の違いなどに質問が集中。1年間の全寮生活には若干の不安を覚えながらも、同研修制度の卒業生が就職率100%であることには高い関心が寄せられたようです。

また、講演会場では土曜日、日曜日ともにJBBAとBTCの研修制度の違いをトークショーのかたちで説明するとともに、同研究を修了し、現在は実際に牧場で働く先輩も壇上にあがって寮生活などについても話してくれました。「卒業後、別々の牧場で働くようになっても、同じ業界で仕事をするもの同士。たまにみんなで食事に行くこともあります」などと研修生活の思い出を交えて話してくれました。

また「進路指導者・保護者相談コーナー」は牧場への就業に詳しい北海道静内農業高校の進路指導の教諭が、馬産地の就職事情などについて説明。こちらは、とくに保護者の方々に好評だったようです。
千葉県から参加したという夫婦は「高校生になる子供が競馬好きで、馬に携わる仕事がしたいと言っています。今日は部活があるので参加できなかったので、代わりに話を聞きにきたのですが、こういうコーナーは私たちにとってもありがたいです」と熱心に話を聞いていました。

ビデオレター

過去3回はメインイベント的な役割を担っていた講演も、今回は参加者が少しでもたくさんのブースをまわって牧場とのコミュニケーションを深めることができるようにビデオレターの形となりました。メッセージをいただいたのは、昨年の講演に引き続いてJRAの角居勝彦調教師と社台ファームの吉田照哉氏です。

JRA・角居勝彦調教師

角居氏は「私は生産、育成を行っている総合牧場で約3年間働かせてもらったことがあります。そのなかで、サラブレッドという動物は走るためだけに生まれて来た動物で、人間がいないと生きていけない動物ということを知りました。とても愛おしい動物で、この馬たちのためにまだ何かできることがあるのではないかと、今も模索しています。牧場での3年間は失敗ばかりでしたが、自分を成長させてくれた貴重な時間でした」と牧場時代の経験をふりかえり「この仕事は夢のある仕事ですが、この世界に入ることが夢であってほしくないと思います。馬に携わるということは、馬の生命を左右しかねない仕事です。限りなく厳しい世界ではありますが、そうした気持ちを忘れずにチャレンジして欲しいと思います」と参加者らを励ましました。

社台ファーム・吉田照哉氏

吉田氏は「競走馬の仕事っていうのは、自分ができない夢を馬に託すことができる。それが最大の魅力だと思います。そして、夢を託される競走馬は決して1人の力では育てることができません。そうしたチームワークも魅力のひとつだと思います。牧場での仕事は、特別に難しいことはありませんが、ケガと背中合わせの部分もありますので、多少は厳しい言い方になることもあるかもしれません。でも、ひとつずつ覚えてくれて1年たったときに楽しいと思ったら、その人は確実に伸びていく人材だと思います。いま、社台ファームを支えてくれているスタッフはみんな普通の人たちです。でも、社台ファームの仕事に生きがいを感じてくれて、生き生きと一生懸命にやってくれています。彼らのそういう姿をみるのが1番嬉しいです。牧場で働くっていうことは、すごく楽しいこともありますが、その成果にいたるまでは努力の連続です。馬と一緒に働くという気持ちがあれば、そういう馬にめぐりあうこともあるでしょうし、馬とともに成長していけると思います。頑張ってください」とエールが送られました。

違った角度から馬を勉強しよう

乗馬体験、厩舎見学、厩舎作業体験、造鉄デモなどイベント色の強い「馬とのふれあいコーナー」を廃止した今回、唯一、違った角度から競馬を楽しめたのがJRA競馬博物館でした。

競馬の魅力や文化を伝えるアミューズメントミュージアム。競走馬の馬体はもちろん、血統や歴史、過去の競馬を彩ってきた名馬などが展示されているほか、競走馬の生産や育成に関することも展示されています。また、ゲートを出てからゴールするまでの感覚を映像で味わうアトラクションも用意されています。メイン会場から少し離れた場所にありますので、気軽に立ち寄るという方は少なかったですが、熱心な参加者が貴重な資料から競馬の歴史と文化を学んでいました。

それでも、あっという間の2日間

やや手さぐりからスタートした牧場就職イベント「BOKUJOBフェア」。過去3回の総括を踏まえて、見直すべきところは見直し、良いところを伸ばす。フェアをとおした取材では、そんな印象を受けた。とはいえ、理屈からいえば参加者は毎年変化しているはずで、にもかかわらず参加者と牧場の距離は確実に縮まっている。と、言うことはBOKUJOBフェアが回を重ね、潜在的にファンの目が生産地を向いてきたことも一因だろうし、牧場での仕事を理解したうえで参加してくる人も増えたと思う。これは、もしかしたらフェア開催前には予期しなかったことかもしれない。BOKUJOBによる大きな功績だと考える。

それから、今回は、初の週末となり保護者同伴で参加される方も多かった。勤務地が北海道でなくても、牧場に就職するとなれば必然的に親から離れて生活せざるを得ないケースも多い。親としては仕事以外の部分で心配することもたくさんあったと思う。相談コーナーや交流エリアでは、親の方から積極的に質問を重ねるケースも少なくなかった。ある意味当然のことだったと思う。それから、連続開催ということで過去3回のようにコミュニケーションエリアに人があふれるというシーンは少なかったように見えた。それでも参加者、出展者からは「ゆっくり話ができた」「たくさんのブースをまわることができた」と、すこぶる評判が良かったように思う。

北川事務局長は「このイベントが成功したかどうかというのは2日間の集客ではなく、このフェアをとおして何人の若者が牧場の門を叩くのか、ということです。たくさんの人が会場に足を運んでくれたからと言って喜んでいるわけにはいかない」と気持ちを切り替えていた。

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