2011 フェアレポート

2011 フェアレポート

2011年7月27日(水)、大好評だった昨年に続く第2回目を迎えたBOKUJOBの就業応援イベント「牧場で働こうフェア2011」が東京都府中市にある東京競馬場で開催されました。参加者たちはブースを出した各牧場のスタッフと仕事の話をしたり牧場経営者やJRA調教師の講演や厩舎見学、乗馬体験などを通じて「馬の仕事」に対する理解を深めました。その模様をレポートします。

開場

学生を中心とした約450名の参加者が来場!保護者と一緒の中学生や高校生の姿も

受付開始

参加者たちは、朝10時の開場前から受付の前に列をつくるほどの勢いで続々と来場。最終的な参加者数は約450名に達しました。第1回目だった昨年は転職を目指す社会人も多く参加していましたが、今年は学生の割合がより高まった印象。就職活動中の大学生だけでなく、保護者の方と一緒に来られた中学生や高校生の姿も目立ちました。女性の参加者も昨年に引き続き多く見られました。

オープニング

イベントのオープニングを飾ったのは社台F・吉田照哉氏のビデオメッセージ

挨拶

開場後まもなく、10時15分頃から講演エリアのステージではオープニングの挨拶が行われました。司会の竹山まゆみさんが「牧場で働きたいと考える人たちと、優秀な人材を求める牧場との架け橋を築く」というイベントの主旨を紹介し、会場の各エリアの説明や、講演のスケジュールなどをアナウンスしました。

社台ファーム・吉田照哉氏(ビデオメッセージ)
「馬づくりを目指す若者たちへ」

続いてステージのスクリーンでは、社台ファーム・吉田照哉氏のビデオメッセージが流されました。まず同ファーム生産のヴィクトワールピサによる今春のドバイワールドC制覇の瞬間が映し出されると、会場の視線が一気に集中。そこから映像は、北海道の社台ファームでそのヴィクトワールピサの横に立って話す吉田氏のものに。

「競馬ではすごい走りをしますが、ご覧のように牧場ではのんびりしていて、スタッフもとてもかわいい馬です、と言っています。こういうことは牧場で働くことの楽しみの一つだと思います」という話に、席を埋めた参加者たちの目が輝きます。
その後、吉田氏は、馬に乗るというのはすごく楽しいことなんだという話や、牧場で働くのに必要な性格などなくて、馬を愛していて、あとは常識がある人なら誰でもできるということを熱っぽく語られました。そして最後に、「日本の競馬は世界のトップにほぼ追いついています。馬の質も人間の技術も進歩してきて、これからは世界に打って出る馬を作る時代です。世界の大観衆の前で自分の関わった馬が活躍するような、そういう花を咲かせてほしいです」と、若い力への期待を込めた言葉でメッセージを締め括りました。

コミュニケーションエリア

17の牧場スタッフと直接話せるチャンス 各種の研修についての相談コーナーも

メイン会場となったイーストホールの2階は「コミュニケーションエリア」と名付けられ、全部で17の牧場がそれぞれブースを出して、参加者たちに自分の牧場の説明やアピールをしたり、逆に参加者から就業やその他さまざまなことについての質問を受けたりしました。北海道はもちろん、関西圏や関東圏の牧場も出展していたので、参加者たちはそれぞれの希望に合ったブースを選んで訪ねることができていたようでした。また逆に、一人でいくつ回っても構わないので、講演や厩舎見学などとスケジュールをやりくりしながら、参加者たちは時間の許す限り各牧場のスタッフと真剣に話をしていました。

このエリアには牧場ブース以外にもさまざまなコーナーが用意されました。BTC(軽種馬育成調教センター)、JBBA(日本軽種馬協会)、日本装削蹄協会では、それぞれの研修制度について。「高校教諭および保護者の相談コーナー」や「軽種馬青年部相談コーナー」では、特定の牧場への就業ではなく、牧場で働くこと一般についてや、北海道での生活などについての相談を気軽に受け付けていました。他には、名馬の情報などが見られる「競走馬のふるさと案内所」、BOKUJOBが8月下旬に実施予定の「夏休み牧場で働こう体験会」の申し込み受付ブースも。無料のインターネットエリアと休憩所も用意され、参加者たちが好きな時に利用していました。

講演

白井牧場の白井岳氏、JRA調教師の角居勝彦氏 BTCとJBBAの研修について担当者たちの話も

白井牧場・白井岳氏
「馬作りの厳しさ、そして喜び」

オープニングの後、講演エリアでは白井牧場の白井岳氏、JRA調教師の角居勝彦氏、そしてBTCとJBBAの研修制度の担当者たちによる、3つの講演が行われました。
白井牧場の白井岳氏は、馬術でオリンピック日本代表に選ばれるなど活躍。その後、桜花賞馬チアズグレイスなどを出した実家の牧場を継ぎ、30歳前にして若き牧場経営者となりました。

話はまず、馬術の活動で住んでいたフランスで出会ったある1頭の馬に、大事なことを教わったという話から始まります。能力は素晴らしいのに扱いが難しく、人間の心を読むその馬を乗りこなすには、技術を磨くのではなく馬の気持ちを考えることが必要なんだと気づかされたという話でした。結局その馬は白井氏を2度もオリンピックに連れていってくれました。
日本で牧場の仕事を始めてからも、さまざまな場面でそういった基本の大切さを痛感します。例えば、馬術では扱ったことのない幼ない馬に物事を教えるには、人間の子供を相手にするのと同じで、こちら側、自分がしっかりしなくてはいけないということなどです。「馬を育てるということは自分を育てること。馬の仕事では技術だけじゃなく、人間としていろいろなことを学べますし、若い人にもそうあってほしいと思っています」と語った白井氏は、「でも、そういう苦労が一瞬で吹き飛ぶくらいの喜びもある世界なんです」と力強く結んで、馬に携わる仕事の魅力を参加者たちに伝えてくれました。

JRA調教師・角居勝彦氏
「牧場で働こうと思う若者たちへ」

ウオッカやヴィクトワールピサなどを管理し、競馬ファンなら誰もがその名を知る名トレーナー、角居勝彦氏が馬の世界に入ったのは高校を卒業してすぐ、北海道の牧場で働き始めたのが最初でした。「大学受験に失敗して、親元から離れたい一心でした。ここにいるみなさんよりずっと薄い動機ですよね」と会場を笑わせた後、角居氏はその牧場で、その後の自分を決定するような出来事に遭遇した話を聞かせてくれました。

一つは、ある素晴らしい若駒が放牧地でひどい骨折をして、それがその馬の死を意味するということにショックを受けた体験でした。「サラブレッドは速く走ることだけのために生きているんです。そんな存在を守れるようになりたい。その命を充実させてあげたい、と思うようになったんです」。その思いは、サラブレッドにレース以外の生き方を与えるホースセラピーの活動にも繋がっていきます。そしてもう一つは、トレセンへ行った馬たちが、躾ができていないと牧場に戻されたことで、トレセンでの調教というものに激しく興味を持ったことでした。これが後の調教師・角居勝彦に繋がっていきます。
角居氏はそんな自分の過去を紹介し、「私もそうでしたが、サラブレッドの世界は最初はほとんどの人が初心者です。だからこそやる気一つでどこまでも上がっていける、夢のある魅力的な仕事だと思います。みなさんにだって、その権利とチャンスはあるんです」と、参加者たちを勇気づけるような言葉で講演を結んでくれました。

BTC(軽種馬育成調教センター)
JBBA(日本軽種馬協会)
「BTC研修とJBBA研修について」

講演エリアでは他に、BTCとJBBAの研修制度について現場の担当者や卒業生の話を聞く場も設けられました。まずはBTCの斉藤昭浩研修課長とJBBAの山口直人教官に、それぞれの研修の内容を説明してもらいます。

BTCは調教の専門技術を、JBBAは生産・育成の基本的な技術を習得することが目的で、どちらも期間は1年。それぞれ浦河、静内と北海道の馬産地にあり、そこでの研修生の生活の様子なども参加者の参考になっていたようでした。
後半は、JBBAの研修を2010年3月に卒業し、現在は茨城県のミホ分場で働いている大野悠弥さんがステージに登場しました。小さい頃から馬の仕事がしたくて、でも馬に触ったことがなかったので初心者でも大丈夫なJBBAの研修を受けたという大野さんは、おかげで牧場での作業全般を学べて、仕事にもスムーズに入っていけたと語りました。今後の夢はJRAの厩務員になること。いつか大レースのパドックで自分の育てた馬を引くのが目標だということでした。

乗馬体験、厩舎見学、造鉄デモなど

メイン会場の外の厩舎エリアでは馬に触れたりさまざまな体験も

ツアー

メイン会場を出てしばらく歩いた場所にある厩舎エリアでは、乗馬体験や厩舎見学などさまざまなプログラムが行われました。混雑を避けるためツアー形式で事前に整理券を配布しましたが、大人気となっていました。

乗馬

引かれた馬に乗って練習馬場をぐるりと1周するだけの短い時間でしたが、たくさんの方が参加したため長い行列ができていました。これが初めての乗馬となるような参加者にとっては、かなり貴重な体験となったはず。中学生や高校生の参加者とともに、同行された保護者の方が一緒に体験している姿も多く見られました。

造鉄

鉄を赤く熱し、切ったり曲げたり削ったりして蹄鉄を造る様子を間近で見られる「造鉄エリア」。出来上がった蹄鉄を馬に履かせる「装蹄」まで見られるとあり、見学者の数は常に人だかりができるほどでした。このエリアでの見学で興味を持ち、メイン会場に戻ってから装蹄師会のブースへ話を聞きに行った参加者も多かったようです。

ふれあい、厩舎見学、作業

乗馬どころか、馬というものにまったく触れたことのない参加者にとっては、厩舎の中を見学したり、そこにいる馬に触ったりできたこのエリアでの経験は、またとない第一歩になったようでした。寝ワラ上げの作業の体験も、スタッフが驚くほど参加者は面白がっていたとのことです。

博物館、その他

競馬博物館もこの日は自由に見学可能 暑さ対策のために水分補給を呼びかけ

博物館

東京競馬場内にある競馬博物館もこの日は開放されており、参加者たちは自由に入って、「平成の大接戦」を集めた特別展示や今年のダービーを制したオルフェーヴル号の勝負服や鞭など、競馬の歴史や文化に関する展示を見学していました。

その他

会場内には他に、「競走馬のふるさと案内所」に名馬の写真パネルが展示されていたり、フジビュースタンドの外に出てコースを一望できたりして、参加者を楽しませていました。またメイン会場内と厩舎地区の前の2ヶ所ではドリンクを無料で配布し、暑さで体調を崩すことないよう水分補給を呼びかけていました。

終了

大盛況のうちに中身の濃い1日が終了 ブースでは最後まで話をする参加者の姿

イベントの終了は16時。10時開場なので6時間ありましたが、たくさんのブースを回りながら講演を聞き、厩舎エリアでの乗馬体験をはじめとするプログラムに参加していると、時間はいくらあっても足りなかったようです。終了時刻が近づいても、コミュニケーションエリアではラストスパートとばかりに話をする参加者の姿が見られました。

出展した牧場の方々は、口々に「若い参加者が多くて驚いた」と感想を語ってくれました。同時に、直接就業に繋がるかどうかとはまた別に、若者に牧場の仕事について理解を深めてもらえる場として、非常に有意義なイベントだったという言葉も多く聞かれました。もしも参加者たちも同じように、この日が有意義な1日だったと感じていただけたなら、BOKUJOBとしてはこんなに嬉しいことはありません。

過去のレポート