『縁の下の力持ち』 裏方の仕事ですが、一番大事な脚元を怪我無く次のステージに送り出したい。
その他 植山 泰輔さん
日本装削蹄協会装蹄教育センター卒業
装蹄師(日高地区全般)勤務
『縁の下の力持ち』 裏方の仕事ですが、一番大事な脚元を怪我無く次のステージに送り出したい。
その他 植山 泰輔さん
日本装削蹄協会装蹄教育センター卒業
装蹄師(日高地区全般)勤務
私は北海道の日高地区を中心に、繁殖牝馬や当歳、1歳馬の削蹄(蹄を削って整える)、そしてトレーニングが始まった2歳馬や休養で牧場に戻ってきた現役馬の削蹄と装蹄(蹄に蹄鉄をつける)を行っています。また、帯広まで行って乗馬の削蹄を行うこともあります。
装蹄の主な行程は、1.蹄鉄を外す→2.専用の刃物で蹄を削る→3.蹄鉄を蹄の形に合わせる→4.蹄鉄を釘で打つ→5.釘をしめる→6.歩様を確認するという流れで、1頭45分を目途にスケジュールを組んでいきます。
時期によって変わりますが、繁忙期には午前中に繁殖牝馬を30頭以上削蹄して、午後は育成場で装蹄という1日の流れになります。
装蹄師になった当初は親方について、任せてもらえる行程を一つずつ増やしていき、最終的には1頭の全行程を任せてもらえるようになりました。現在は独立し、開業装蹄師として活動していますが、日々勉強であることに変わりはありません。
装蹄師になったきっかけは、幼馴染みが装蹄教育センターに通うことになり夏休みに馬事公苑へ練習に行くのについて行ったことです。もともと動物が好きだったのと、機械系の学校に通っていたこともあり、金属と動物を扱う仕事ってなかなか無いのではないかと思って興味を持ち、自分も装蹄師の道に進みました。
実は、父親がJRAの獣医師をしていて、土日に遊んでもらえなかったこともあり競馬には興味がなかったんです。ですが気がつくと自分も競馬業界に進み、さらに装蹄師になってから祖父も装蹄師をしていたということを聞かされて、その時は不思議な縁を感じました。
装蹄師となって北海道に来た理由は、当歳から引退した後の馬までを全て触れることができ、それぞれの段階で色々な魅力があるからです。
担当した馬が次のステップに無事進んだ時が、嬉しいというかホッとしますね。
馬は当歳から成長していく中で、脚向きや蹄の大きさ・形がどんどん変化していきます。運動量の変化も蹄の変化に現れます。それらに対処していくことが求められますが、同時に北海道で装蹄師をする醍醐味でもあると感じています。
また、牧場のスタッフから「あの馬勝ったよ!」と担当した馬の活躍を聞かされた時は、やっぱり嬉しいですね。
弟子のときはいっぱい失敗をしましたし、その失敗が今につながっています。そして今も全てが完璧にできているとは思っていません。日々勉強、どんな時も失敗は無かったか、もっと上手くできたのではないかという意識を持って仕事に臨むようにしています。
装蹄・削蹄の技術はもちろんですが、馬に嫌な思いをさせないことを常に考えています。産まれてきた馬たちの蹄を最初に切るのは自分たちなので、脚をあげる時もそうですし、蹄を切る時も細心の注意を払います。もし嫌な思いをさせると、馬が「削蹄は辛いこと」とインプットしてしまいます。初めて蹄鉄をつける時も、釘を打たれる感触を嫌がる馬もいるので、どんな小さなことにも気を配り、装蹄が嫌にならないようにしてトレセンに送り出すことも自分の役目の一つだと考えています。
大きな目標というより、日々勉強。もっと良いことができるのではと常に考えていきたいですね。
『縁の下の力持ち』という言葉があるように、装蹄師は裏方の仕事。馬の一番大事な脚元を扱うわけですから、どの馬も怪我無く次のステージに送り出してあげたいですね。
あとは自分自身も怪我をしない事。自分が動けなくなると他の装蹄師にも迷惑がかかるので気をつけていきたいです。
私のoffStyle
昔は硬式テニスやスキー・スノーボードなどをしていましたが、怪我をすると仕事に影響がでるのでやめました。今は子供が2人いるので、休日はできるだけ一緒にいたいと考えています。大きくなれば自分から離れていくと思うので、それまでは子供との時間を大切にしたいです。