無事に競走馬となってデビューし、活躍してくれることが何より嬉しいですね。
生産担当 佐々木 司さん
静内高等学校卒業
ブリーダーズ・スタリオン・ステーション(日高町)勤務
私の勤めているブリーダーズ・スタリオン・ステーションは種牡馬事業を行っている牧場です。
2016年は19頭の種牡馬を繋養し、2月~7月にかけて種付けをしています。
毎日の仕事は朝5時の飼いつけから始まります。日の出に合わせて馬を放牧し、その後は寝わら上げや飼い葉作り、掃き掃除をします。
午前10時から厩舎内外を清掃し、昼休憩に入ります。
午後は1時に馬を集牧し、手分けして放牧地のボロを集め、草刈りなどの環境整備をして一旦休憩となります。
午後2時半頃から馬の手入れや検温、温暖な時期には馬を洗い、夕方に飼いつけをして、午後5時に終了です。
午前・午後の仕事開始前には、毎回ミーティングをしています。加えて、当番制で月に数回、夜飼いと夜まわりをします。
2月~7月は種付け期間となり、種付けの仕事が入ります。特に4月、5月は種付けが混み合うので、過密なスケジュールをこなします。
種付けは朝8時半、午後1時、夕方5時にあり、それぞれの時間帯に複数の繁殖牝馬が集まります。
種付け期間中は仕事開始時間が1時間早くなり、ナイターの種付けが入ることもあるので、忙しさがピークの時は、睡眠中に仕事の夢を見ることもありますね(苦笑) ただ、社宅が敷地内にあるので、いつでも出勤・帰宅ができる環境が整っています。
他に、種牡馬公開期間は見学受付や監視、団体見学ツアーや種牡馬展示会、JRA競馬場でのイベントなどでは、大勢のギャラリーを前に種牡馬を展示します。
小学生ぐらいから動物が好きで、特に犬が好きでした。私の実家は飲食店を営んでいて、衛生上、ペットを飼えなかったので、それが逆に動物への興味を募らせたのかもしれません。
故郷の日高町はサラブレッドの生産地で、周囲には親が牧場の友達が沢山いて、一緒に競馬の話をしたり、ミホノブルボンやゴーゴーゼットのレースを見たり、競馬は身近な存在でした。
高校で就職を考えていた時に、地元にある日高軽種馬農業協同組合・門別種馬場の求人があって、その時に馬の世界で働いてみようと思い、就職試験を受けました。
馬の仕事については正直よく知りませんでしたが、もともと運動が得意で、中学では卓球部、高校では陸上部に所属していました。デスクワークより体を動かす仕事が向いていると思ったことも、志望動機の一つでした。
門別種馬場では閉場までの9年間を勤め、それから再び求人を探していたところ、ブリーダーズ・スタリオン・ステーションと縁があり、現在に至っています。
ここで種付けして翌年誕生した馬が、無事に競走馬となってデビューし、活躍してくれることが何より嬉しいですね。
レベルの高い日本の競馬で、1勝するのは大変なこと。レースの格付けやクラスを問わず、繋養種牡馬の産駒が勝ってくれることが励みです。
産駒の出走情報は、JRA-VANなどの便利なサイトを通じて調べられますし、休憩室にある競馬新聞には必ず、繋養種牡馬の欄にチェックが入っていて、GIレースの時はスタッフ皆で応援しています。
それから、産駒の傾向を見るために、当歳や1歳のセリに出かけることもあるのですが、繋養種牡馬の産駒が売れると、種付けに来ていた生産者の方から「○○の子が売れたよ!」と声をかけられることがあります。
そうした場面でも、大きなやりがいを感じますね。
種牡馬は大きくてパワーがあり、かなり気性の強い馬も少なくありません。繁殖牝馬や1歳馬でもそうですが、馬の扱いにはある程度危険を伴います。
種付けの際はヘルメットやプロテクターを着用し、軽くて動きやすいウェアを選んで仕事をしています。それでも以前、ケガをしたことがありました。人馬の安全の意識は絶えず持って、油断をしないようにしています。
また、種牡馬によっては芦毛の繁殖牝馬が好きだったり、種付けに消極的だったり様々で、それぞれの特徴や癖を記憶しておかなければ、種付けでいざという時の対応に遅れます。個々の情報をインプットしておくことも一仕事です。
中には、1シーズンに数多くの種付けをする馬も含まれます。そうした馬たちは繁忙期になると疲労が蓄積したり、ストレスを感じ始めたりします。彼らの状態をケアしながら、種付けに誘導していくことも大変です。
種付けに気持ちが向くように、人馬で心のかけ引きをすることはよくあります。これは個人の技術や経験、スタッフのチームワークが求められますね。
馬の体調変化に、いち早く気付くことですね。
そのために、馬の手入れや放牧・集牧の際に、馬の顔つきや歩様、スキンシップの際の仕草から、いつもと違うかどうか、色々な角度からチェックするようにしています。
もし異常がある場合、どのタイミングで発見できたかで、その後の回復を左右します。生き物ですから、ついさっきまで元気だったのに…というケースも0ではありません。
いつでも馬が発するサインを察知できるように心がけています。
今では4頭の種牡馬を担当できるようになりましたが、まだまだ馬の勉強は欠かせません。
専門書を読んだり、他の種馬場に足を運んだり、種牡馬のウォーキングDVDを見て、それぞれの馬の個性を生かしたリードの仕方を学んでいます。
2015年には、日本競走馬協会主催の米国競馬事情視察研修を受ける機会に恵まれ、現地でアメリカンファラオの勝ったブリーダーズカップや、名種牡馬タピットと対面でき、より一層この仕事に対しての意欲がわきました。
人馬の安全に気を付けながら技術向上を目指して、長くこの仕事を続けていきたいと思います。
この先も繋養種牡馬の産駒が、たくさんGIを勝ってくれることを期待しています。
2015年、ブラックタイド産駒のキタサンブラックが菊花賞(GI)を勝った時は、スタッフ皆でお祝いをしました。勝利の美酒がおいしかったです。
私のoffStyle
北海道外の色々な競馬場に行ってみたいですね。