とにかく馬が好きで、将来、どんな馬と出会えるか、手がけた馬とどんなレースに挑めるのか、期待を膨らませて北海道に飛び込みました。
生産担当 木村 浩史さん
岩戸高等学校
ビッグレッドファーム スタリオン(北海道)勤務
とにかく馬が好きで、将来、どんな馬と出会えるか、手がけた馬とどんなレースに挑めるのか、期待を膨らませて北海道に飛び込みました。
生産担当 木村 浩史さん
岩戸高等学校
ビッグレッドファーム スタリオン(北海道)勤務
私が働いているビッグレッドファームは、競走馬の生産・育成を一貫して行っている牧場で、北海道(明和、真歌、浦和)と茨城県(鉾田)に拠点を構えます。
種牡馬事業にも取り組んでおり、私はこの部門で仕事をしています。
日々の業務は、まず早朝にスタッフ・ミーティングがあり、各部門の担当者からその日の業務予定・連絡を受け、情報を共有します。
その後、厩舎に向かい、種牡馬の体調を確認して、彼らを放牧地へ連れて行きます。
一段落すると、水桶を洗い、竹ぼうき等で厩舎内を清掃・点検します。
冬季の放牧時間は朝から8、9時間程度なので、午後に種牡馬を集牧し、馬体のチェックと手入れをします。放牧時間は時期によって異なり、それに伴ってスケジュールも変わります。
また、主に2月中旬~7月上旬は連日、朝、昼、夕方、ナイターの4回、種付けにあたります。
他にも、1・2歳馬の馴致や調教、各種検査対応、牧場施設内の環境整備、牧柵工事、除雪作業、馬主クラブ会員様との交流も仕事としています。
神奈川県の出身で、小・中・高校と地元の学校に通いました。高校時代にオグリキャップの活躍に魅せられ、そのブームに乗じるかたちで競馬に興味を持ちました。
それから、地元の根岸競馬記念公苑(馬の博物館)で初めて間近でサラブレッドを見て、馬に携わる仕事を考えるようになりました。
高校生の夏休みにバンブー牧場(浦河町)でアルバイトをさせていただき、卒業後、そのままバンブー牧場に就職しました。
家族は馬と関係のない仕事をしており、私が馬の世界で働くことに、両親は少なからず不安を感じていたと思います。
私の方はと言えば、とにかく馬が好きで、将来、どんな馬と出会えるか、手がけた馬とどんなレースに挑めるのか、期待を膨らませて北海道に飛び込みました。
牧場の生産・育成馬や繋養種牡馬の産駒がレースに出て、勝ってくれることが何よりの喜びですね。
毎週、会社では繋養しているステイゴールドや、ロージズインメイ等の産駒出走結果一覧が掲示されるのですが、どのクラスのレースでも、好走してくれるのは励みになります。
競馬週刊誌を読む時は、必ずリーディングサイアー・ランキングに目を留めます。
日々向き合っている馬たちが、少しでも上位にランクインしてくれると、本当に嬉しいです。
種牡馬の仕事では、一頭一頭とじっくり付き合えるのが醍醐味だと思います。
素晴らしい実績馬や良血馬と長いスパンで接することができ、その馬のささいな癖や個性を知り、深い関係を築くことができます。
例えば、ある現役種牡馬は選挙カーの演説の声にも敏感に反応する馬で、種付けに集中できなくなってしまう面を持っています。種付け時期に選挙が重なると、まず彼のことを考えますね。
種付けにおいては、種牡馬によって性欲を刺激するスイッチや体のツボが違い、とても興味深いです。
このあたりは種牡馬業務を担うスタリオンマンならではの焦点でしょう。
種牡馬という、サラブレッドの中でも特別高価な馬たちを扱っているので、少なからずプレッシャーは感じますね。
どの馬にも言えることですが、事故や病気がないように、体調管理には神経を使います。馬は生き物ですから、いつ変化が起こるかわかりません。
すぐに変化を察知して、対応できるように日頃からアンテナを張っています。
毎日の仕事時間はある程度決まっていますが、馬に合わせてイレギュラーになることも日常茶飯事です。
種付け時期は早朝5時30分から始まり、夜は9時過ぎまでかかります。途中、休憩はありますが、ハードに一日が過ぎていきますね。
最初の頃は、種付けの仕事をする夢を見て、夜中に目覚めることもありました。
また、種牡馬のパワーは凄まじいものなので、到底人間の力任せには叱咤できません。中には猛獣のような闘志を秘めている馬もいますから、油断すると、馬も人もケガをしてしまいます。
気性の激しい馬は細心の注意を払い、リラックスさせるように努めています。
手入れの時は友人と話すように声をかけながら、全身を触っています。種付けで気分が乗らない馬には、何とか気持ちが向くように策を練ります。
ここは我々スタッフの腕が問われる部分で、上手くいかない時は試行錯誤を繰り返し、皆で知恵を絞っています。
馬相手の仕事ですが、人間とのコミュニケーションは大事です。パートの方を含め、牧場には大勢のスタッフが働いているので、チームとしての力を生かせるように、話のすれ違いや誤解のないように気を付けています。
また、同じような仕事を繰り返していくと、惰性で取り組んでしまったり、仕事を甘くみたりしてしまいます。
悪い意味での"慣れ"は仕事の質を低下させるので、現状のやり方を見直してみたり、新しいやり方にトライしてみたり、常に問題意識を持つようにしています。
ある時、本で読んで知り、心にとめたことが、仕事では"柔軟性"と"適応能力"が重要ということです。固定観念やセオリーにとらわれず、より良いノウハウを模索し、変化や進化に合わせられる自分でありたい、と心がけています。
時折、他のスタリオン関係者とお話する機会を作って、ストレートに疑問や意見を聞いていただくこともあります。
お相手の方は別の牧場の方なので、ライバルという立場でもありますが、親身になってアドバイスをいただけるので、大変ありがたいです。
今の仕事に生きがいを感じています。
最近では、牧場見学に来る方から、「木村さん」と声をかけていただけることもあり、嬉しく思っています。一流のスタリオンマンを目指して、これからもこの仕事を極めていきたいです。
まだまだ知らないことがありますので、その答えを掴むべく、日々、追求を重ねていきたいです。
私のoffStyle
料理が好きなので、仕事をリタイアしたら居酒屋とか飲食店を開きたいですね。