生産者はもちろん、購買者にも喜んでもらえるような馬づくり。それを目標にしています。
その他 伊藤 宏人さん
大阪あべの辻調理師専門学校卒業
コンサイナー(日高全般)勤務
生産者はもちろん、購買者にも喜んでもらえるような馬づくり。それを目標にしています。
その他 伊藤 宏人さん
大阪あべの辻調理師専門学校卒業
コンサイナー(日高全般)勤務
私は、自分の牧場を持たないコンサイナーです。
コンサイナーというのはセリ市場に上場する馬(おもに1歳馬)を生産者から預かり、そして市場開催日に向けて仕上げていく仕事です。馬がより魅力的に見えるようにボディコンディションを整えることはもちろんですが、毛ヅヤを良くしたり、あるいは市場という特殊な環境の中でも躾の行き届いた立ち振る舞いができるように、いろいろな馴致をクリアさせていきます。
一般的には馬を自分の牧場に預かって行ないますが、私の場合は自分が生産牧場へ足を運んで馬と接します。そこが他のコンサイナーと大きく異なる点です。
作業そのものは単純ですが、それぞれ違う環境で生まれ育った馬の個性を理解しなければなりません。根気のいる作業ですし、経験や勘も不可欠だと思います。
そういう仕事ですから、勤務時間は、仕事が終わるまでです。セリシーズンか、否か。また季節などによってバラバラです。早いときは5時とか5時半から仕事をスタートさせることもありますし、終わるのが夜7時をすぎることもあります。
1頭にかける時間は、その時々で異なりますが、概ね1時間くらいですね。
現在のような形は新しいビジネスモデルを求めて、テストケース的にスタートさせましたが、仕事を通して生産牧場の方々と一緒に馬を仕上げていく喜びを実感しています。
私は福井県の出身で、地元の高校を卒業後、大阪の調理師専門学校に進んでイタリア料理のレストランで働いていました。
競馬との出会いは、同じ職場の仲間たちと一緒にウインズや競馬場に出かけていったのが最初でした。
調理師の仕事が嫌いだったわけではないのですが、馬の仕事をするなら、今決断するしかないと思って牧場の従業員募集を見たのが転職したきっかけです。たしか、24歳のときでしたね。
そこはオーナーブリーダーの牧場だったのですが、繁殖牝馬と1歳馬の中期育成をおもに担当していました。そこで6-7年経験させてもらったあと、外国の牧場でキャリアを積んで帰国したのが32歳のときでした。
そのあとはコンサイナー牧場に勤務し、独立するような形でスタートさせました。
コンサイニングを仕事として選んだのは、騎乗者としてゼロから学ぶには年齢を重ねすぎていたからです(笑)。
1番っていうのは難しいです。その場面々々で嬉しさが違いますからね。
関わった馬が競走でよい成績を残してくれたときも嬉しいですし、手掛けた馬がセリで高く売れたときも嬉しいです。
馬が成長する過程を見るのも楽しいし、創りあげていく過程も嬉しいです。
馬を服従させるのではなく、草食動物としての習性を利用してコミュニケーションを築き上げることができたときにも充実感を感じます。
1番を決めるのは難しいです。
仕事ですから、大変だとは思わないですが、馬という動物は扱う人間が変わると緊張します。
私の方でも育った環境が異なる馬たちを相手にしますので、その馬の性格を理解するまでは緊張します。
同じ馬でも育った環境によって異なりますし、同じ牧場で育っても、その馬が持って生まれた性格によって人間とのコミュニケーションが苦手な馬もいます。
そういう中で、失敗というのは数え切れないほどあります。
もっとスムーズにコミュニケーションがとれる方法はなかったかとは常に思いますし、結果として馬にケガをさせてしまったことや、病気させてしまったこともあります。
どんな仕事でもそうですが、現状に満足してはダメだと思います。
私は、草食動物の習性を利用して、馬に人間との関係性を教えるということを仕事にしています。
個々の馬に対してはがまんするということを教えて、人間をリーダーとして認めさせることを念頭においていますが、それは、言葉を変えれば仕事を任せてくれた人に対して責任ある仕事をやり遂げるということになるのかもしれません。
牧場を持たないコンサイナーというのは新しいビジネスモデルを模索する中でスタートさせました。
まずは、ビジネスとして成り立たせることが夢であり、目標です。
そして具体的にいうなら、生産者はもちろん、購買者にも喜んでもらえるような馬づくり。
それを目標にしています。
私のoffStyle
私が教えたことは馬の中で生き続けると信じています。