もしGIを勝ったとしてもそこで終わりではない。勝ったら勝ったで次がありますし、この仕事にゴールはありませんね。
生産担当 飯田 秀倫さん
名古屋大学卒(愛知県出身)
竹島牧場(日高町)勤務
もしGIを勝ったとしてもそこで終わりではない。勝ったら勝ったで次がありますし、この仕事にゴールはありませんね。
生産担当 飯田 秀倫さん
名古屋大学卒(愛知県出身)
竹島牧場(日高町)勤務
私が働いている竹島牧場はサラブレッドの生産牧場です。ここで繁殖牝馬17頭と当歳~1歳馬たちのお世話をしています。
25歳で北海道に来るまで馬に触ったことすらなかった私ですが、こちらでお世話になって12年。いつの間にか一番の古株となり、現在は場長として働いています。
とはいえ、うちは私を含めスタッフは3人しかいませんので、馬房の掃除から朝晩の飼い付け、夏の青草刈りや牧柵の修理まで牧場作業は何でもやります。時には厩舎の外壁にペンキを塗ったりすることも…いわば牧場の便利屋さんみたいな(笑)。
出産&種付けシーズンを除けば、馬に触れている時間はそう長くないかもしれません。育成場などで騎乗スタッフとして働いている人たちと比べると、うんと短いでしょう。
そういう意味では馬に触ったことがない初心者でも入りやすい分野といえると思います。
1日のタイムスケジュールは季節によって多少変わりますが、冬場は午前5時の朝飼い(馬の朝ごはん)から。これは当番制で3日に1回ペースで回ってきます。
6時頃からは馬を1頭ずつ放牧地へ誘導して、放牧スタート。その後は空になった馬房をスタッフ全員で掃除します。
水桶や飼い葉桶も回収するのですが、冬場は桶の中の水が凍りついているので、日当たりの良い場所に並べて溶かしておきます。
汚れた寝わらはキレイなものに交換。馬房の掃除が終わったら1時間ほど朝ごはん休憩を挟み、9時頃からは夕、夜、翌朝の3食分の飼い葉を準備します。エン麦や総合栄養食の量は1頭ずつ決まっているので、100グラム単位までしっかり計ります。
11時頃から14時までは昼休憩。
午後は水桶と夕方用の飼い葉桶を馬房に入れて、馬を迎え入れる準備をします。
15時~16時の間に集牧したら、ケガや異常がないかを皆で手分けしてチェックして何も問題がなければ終了。
仕事はだいたい夕方17時頃に終わりますが、朝飼い当番の人は午後19時か20時に夜飼いをつけにきて、終了です。
※ 夜間放牧が始まると時間や仕事内容は多少前後します。また、種付けシーズン中は昼休憩の時間が短くなる場合があります。
ずっと机に座っている仕事ではなく、体を動かす仕事に就きたいと思っていました。もともと競馬が好きでしたから、牧場で働くことは自然な流れでしたね。
25歳の時に保険証と全財産をもって北海道へ。静内のハローワークで牧場の求人票をコピーして、いくつかの牧場に断られたのち竹島牧場に辿り着きました。
最初は完全に初心者でしたから、おっかないやらビックリすることだらけで。だけど、馬と過ごす日々は新鮮でしたね。
冬の寒さは最初から覚悟していたし、思っていたより苦にはなりませんでした。
生産馬がレースで勝ってくれるのは、もちろん嬉しいです。
でも一番の喜びは多くの方との関係性や言葉ですね。
調教師さんや厩務員さんから「勝ったよ」と電話をいただいたり、「あの馬は素直で良い子だね」と言ってもらえたり。
競走馬に関わる連絡事項というと、悪い内容や哀しい報告も少なくありません。だからその分、良い言葉や嬉しい内容の話をしてもらえた時の喜びは大きいです。
ある時、「竹島牧場さんの馬はみんな扱いやすいよ」と言っていただいたことがありました。間違っていなかったのかなって、認めてもらえたような気持ちになりました。励みになりますし、そうしてまた皆で喜べるような結果を残せたなら、最高ですよね。
生き物が相手ですから、生死の分かれ目に直面することもあります。
以前、ちょっと目を離した隙に馬の容態が悪化して命を落としてしまったことがあって。
獣医さんは「こうした急変は仕方がないよ」とおっしゃっていましたが、やはりショックでした。もっとこうしておけばよかった、と後悔しましたね。
命を預かっている以上、できる限りのことはしよう、手を抜いたら絶対にダメなんだ、と強く思いました。
気になることを放っておかない、馬たちのちょっとした変化を見逃さないことですね。
そういう意味では、素人のような目線をずっと持っていたいと思っています。
いつかGIレースを勝って、皆でワーッと喜びたいです。
でも、もしGIを勝ったとしてもそこで終わりではない。勝ったら勝ったで次がありますし、この仕事にゴールはありませんね。
私のoffStyle
温泉が好きで、道内あちこちの温泉地に行きます。