今、ここで働いている理由は、森本社長と同じ仕事をしたかったからです。
育成担当 古山 智仁さん
私が働く森本スティーブルは2009年に開業した比較的新しい育成牧場です。預託馬の育成業務が中心ですが、コンサイナーとして1歳市場や2歳トレーニングセールなどにも参加しています。新潟競馬場のダリア賞を勝ったワキノヒビキは、当スティーブルの育成馬です。
私自身は騎乗馴致、調教がおもな仕事です。
夏時間であれば仕事は朝の5時30分にスタートします。起きるのは…4時30分くらい。夏であれば、もうその頃は空が明るくなっています。
馬に朝飼いを付けて、放牧する馬は放牧して、騎乗する馬はウォーキングマシンで運動を開始します。BTC軽種馬育成調教センターの馬場は午前7時開場で午後2時30分までしか使えませんから、その時間を最大限に有効利用するための準備をします。多いときには1人で10頭以上の馬を調教することもあります。
昼休みは、馬の調教が終わったあとです。その休憩をはさんで、夕方は馬の手入れも行います。
とにかく馬が好きというのが一番の理由です。
両親が競馬を好きだったということもあって、高校1年生のときに乗馬クラブでアルバイトをしました。そのときインストラクターが馬を自在に走らせるのをみて、漠然とした憧れを抱いてこの道を選びました。
高校を卒業後、日本軽種馬協会の生産育成技術者研修を経て育成牧場に就職し、そこで現在の森本社長と出会いました。
馬が好きで、馬に携わる仕事をしたかったというのがきっかけですが、今、ここで働いている理由は、森本社長と同じ仕事をしたかったからです。
嬉しいのは、自分が手掛けた馬がデビューするときです。
もちろん、大きなレースに勝って欲しいというもありますが、私自身、競馬がとても好きだからこそ、そこに参加しているという喜びもあるのかもしれません。
外側から見る競馬も楽しいですが、自分が実際に手がけた馬が走る競馬を見るということは、別の意味で楽しいし、面白いです。
それから、この仕事は、人間にとっても厳しいことが多いです。その厳しさがあるからこそ、楽しいのかもしれません。
失敗は数えきれないほどありますが、自分自身の怪我が一番情けなく、また同じ職場で働くみんなに申し訳がなかったです。
気を抜いていたわけではないのですが、初期馴致のときに馬が足を滑らせて転倒し、私の脚がその下敷きになってしまったのです。さいわい、馬の方は怪我なく済みましたが、私の方は骨折で、1ヶ月半ほど入院を余儀なくされました。
ちょうど一番忙しくなる時期だったので、それが本当に申し訳ないと思いました。
前の話と重複しますけれども、とにかく怪我をしないこと。そこに尽きます。
怪我は、自分だけの問題では済まない場合がありますし、骨折や入院では済まない場合もあります。
この世界を目指そうという若い方々の中には目標もなく、中途半端な気持ちで入ってくる方もいると思いますが、その人自身のためにも本気でないなら、本当に馬が好きでないなら、門をたたく前にもう一度考え直した方が良いと、そう思います。
実は、最初は競馬場の厩務員になりたかったんです。そして自分の担当した馬が大きなレースで活躍することが夢でした。
今は、自分が手掛けた馬が大きなレースに勝って欲しいと思います。
競馬場のパドックで実際にマンハッタンカフェやシーザリオを見たときは本当に感動しました。
自分の担当した馬が大きなレースに勝つということは、そういう馬の背中を知るということになりますよね。そんな感触を味わってみたいです。
私のoffStyle
もしチャンスがあれば厩務員にチャレンジしてみたいです。