絶対に正直でいる。医療に携わる身として、うまくいかない時にちょっとした嘘も言わないようにしています。
その他 福田 真奈さん
北海道・酪農学園大学卒業
エクワインレーシング ヴィレッジ(むかわ町)場長
牧場に関わる馬の獣医師には大まかに分けると、様々な牧場に出向いての往診や治療、診療所での治療や手術、あとは牧場の専属になるという働き方がありますが、私は育成牧場エクワインレーシングの専属獣医師として働いていています。一般的に、獣医師は病気や怪我をした馬を助けるお医者さん、というイメージがありますが、私たちは強い馬をつくるために獣医学を使っていて、怪我の予防、トレーニング方法やコンティションの管理なども行っています。具体的には、朝は厩舎スタッフと同じように、寝藁上げをしますし、馬のチェックや、トレッドミルでの運動も行います。その中で歩様が気になる馬が出てきた場合に、治療プランを立てて実行していきます。更に定期的に馬のコンディションをチェックして、飼い葉やトレーニングメニューの管理も行うなど、獣医師として強い馬づくりに関わっています。また、他の牧場に頼まれて往診を行うこともありますが、仕事の約9割は、エクワインレーシングでの仕事になります。2024年9月には、治療やケアをメインとする分場・エクワインレーシング ヴィレッジが開場したので、今はそこの場長を任されています。本場がトレーニングの前線基地になるので、そこで疲れを見せた馬や脚元に不安がある馬をヴィレッジで立て直して本場に送り出すプログラムを管理しています。2025年には診療所も新設されるので様々な治療や倒馬室での去勢手術ができるようになります。最近獣医師も人手不足ですから、研修室なども併設し、若い獣医師たちが学べる場所としても機能させたいですね。
最初は小学生の時に武豊騎手がオグリキャップに跨って勝った有馬記念をテレビで観て、ジョッキーになりたいと思いました。ただ、視力が悪くなって競馬学校の受験ができなくなり、京都競馬場の乗馬センターに通い始めました。そこで獣医さんの姿に憧れたのがきっかけです。ただ、獣医になるための勉強をしていなかったこともあり、一度は一般職に就いたのですが、何か物足りず、しっかりとした自分の人生を歩むために会社を辞めて、馬の獣医師を目指しました。そして、馬の勉強が一番できそうな酪農学園大学へ29歳で入学しました。6年間大学で学び国家試験を受けて獣医師なったのですが、在学中の研修でエクワインレーシング代表の瀬瀬さん出会って、休みの度に実習でお世話になり様々な勉強をさせていただきました。自分の中で瀬瀬さんの治療がひとつの基準になったこともあり、エクワインレーシングで獣医師として採用していただきました。
ずっと馬の近くにいるので、仕上がっていく変化をみることができるのは醍醐味です。育成馬を順調に競馬場に送り出して勝てた時も嬉しいですが、休養馬は獣医師が立て直していくので、復帰できる状態まで戻して、実際に復帰戦で勝った時は特に嬉しいですね。セリで買った期待馬で、レースに使うとすぐ背中が痛くなり順調に使えない馬がいたのですが、牧場で細かなケアを続けていたら、ある時すごく歩様が良くなり馬の雰囲気がガラっと変わりました。これは間違いないと思い競馬場に戻したら連勝してくれました。また、再発しやすい屈腱炎の治療をした馬が問題なくレースに出て、連闘でも使えている姿を見るとやりがいを感じます。
馬に起きている違和感が何か分からなくて、なかなか良くならないのでレントゲンをクリニックで見てもらったら、思いもよらない所が骨折していたということがありました。そのように知らない事もまだまだ多いので、日々勉強しています。あとは、終わりがないというか、終業時間が16時だからそこで終わりとはならないことがあるのは獣医師の大変な部分でもあります。手術して入院になると付きっきりになる場合もありますから。
絶対に正直でいるという事です。うまくいかない時に、自分を守るためのちょっとした嘘も言わないようにしています。医療に携わる身として常に正直でいたいと思っています。
強い馬をつくりたい、それだけです。獣医師として競馬に勝つための強い馬づくりに携わっていきたいと常に思っています。
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