2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2023/03/13
3月に入ってからは放牧地の雪も解け、最低気温が氷点下に達する日も少なくなり、春の訪れを感じることができる浦河です。
日高育成牧場では2月中旬から出産が始まり、これまでに6頭の子馬が誕生しており、残すは4頭となりました。
写真1.分娩直後に子馬を舐め(左)、起立後に子馬に語りかける(右)母馬
さて、今回は12月の記事(https://bokujob.com/blog/article/2022/jra-91.html)に引き続き、日高育成牧場で取り組んでいる「乗用馬生産を目的とした受精卵移植」における「受精から受精卵回収」までについて触れてみたいと思います。
受精卵提供馬である「ドナー」の「ユートピア号」は世界的にもハイクラスのCCI4で優勝経験のあることから、交配する父馬についても乗馬用種牡馬として実績のある馬を選択することとしました。そのため、フランスから輸入した凍結精液を用いて人工授精することとしました。
人工授精は繁殖牝馬を種馬場に輸送する手間が不要であり、タイミングを選ばずに受精でき、さらに、凍結精液は半永久的な保存が可能となるメリットがあります。一方、凍結精液による人工授精の受胎率は、自然交配と比較すると低下するということがデメリットとして知られています。
この受胎率低下というデメリットを最小限にとどめることを目的として、排卵後、可及的速やかに人工授精を実施するために、排卵兆候が認められた時点から6時間おきに直腸検査によって排卵の有無をモニタリングして、排卵を確認した後には直ちに人工授精を実施しました。
写真2.凍結精液を用いた人工授精の様子
しかしながら、2回実施した人工授精では、残念なことに受精卵を回収することは叶いませんでした。この原因として、①凍結精液の受精能の問題、②繁殖牝馬が16歳と高齢であったことに起因する卵子側の受精能の問題、③受精卵は子宮に存在していたが回収技術による問題が考えられました。これらのなかで最も可能性の高い原因は、①の「凍結精液の受精能の問題」と考えられたことから、サラブレッド種牡馬による自然交配を行うこととしました。
写真3.受精卵回収の様子
自然交配から8日後に子宮内の受精卵の回収を試みました(写真3)。「ドナー」である「ユートピア号」が2個の卵子を排卵したことを確認していたのですが、嬉しいことに2個の受精卵を無事に回収することができました(写真4)。この2つの受精卵から無事に子馬が生まれると、2頭は「二卵生双生子」ということになります。
写真4.回収された2個の受精卵。
次回は「レシピエント(代理母)」への受精卵の移植から無事に受胎することができたのかどうかについて触れたいと思います。