2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2023/11/07
11月に入ってからは最低気温が氷点下近くまで下がり,水桶には薄氷が張る日もあり,冬への季節の移り変わりを感じます。今年は朝夕の寒暖の差が激しく、場内においても美しい紅葉(写真1)を望むことができました。
写真1.朝夕の寒暖の差が激しく美しい今年の紅葉
9月上旬に離乳した子馬達も、出張等で戻ってきた後に久しぶりに見ると、大きく成長しており,2月生まれの個体では350㎏にも達している個体もいます(写真2)。子馬の群れの中でもリーダーが存在しているようで、来年9月の騎乗馴致が始まるまでは、馬の社会での暮らしの中で仲間との時間を満喫して欲しいと願っています。
写真2.離乳から約2カ月が経過した子馬の群れ
今回は本ブログで過去4回にわたって取り上げた「その年に出産していない空胎馬に泌乳を誘発し、乳母としての導入に成功した代理母と子馬」の離乳についてお伝えいたします。
5月ブログ ⇒ https://bokujob.com/blog/article/2023/jra-96.html
6月ブログ ⇒ https://bokujob.com/blog/article/2023/jra-97.html
7月ブログ ⇒ https://bokujob.com/blog/article/2023/jra-98.html
10月ブログ ⇒ https://bokujob.com/blog/article/2023/jra-101.html
離乳は、例年どおり、群れの安定化を目的として、9組の親子の放牧群から同時に全ての母馬を引き離すことはせずに、母馬を3頭ずつ3班に分けて引き離す「間引き方法」によって実施しました。
代理母と子馬は、9月上旬に実施した最終の3班目での離乳となりました。子馬は概ね5ヶ月齢に達し、体重は213kgにまで増加し、4月生まれであったため、2月あるいは3月生まれの子馬と比較すると小さく映りますが、同時期に生まれた子馬と比較しても遜色ない立派な馬体に成長し、離乳を迎えました。
写真3.離乳直前の代理母と子馬の様子。最後の授乳となりました。
子馬は代理母が他の母馬とともに、1kmほど離れた放牧地に連れ出された直後こそ、少し落ち着かない様子でしたが、10分後には早くも落ち着き、他の子馬の群れの中で、草を食べ始めました。代理母も別の放牧地に放された瞬間こそ、落ち着かない様子でしたが、20分後には離乳を終えた他の母馬とともに、落ち着いた状態となりました。
※ドローンによる上空からの撮影も含む「代理母と子馬の離乳」の動画は以下のリンクおよびQRコードからご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=jtAGSF9cL34
このように、代理母と子馬の離乳は、何事もなかったように終わりました。引き離された後に、お互いが寂しがり、呼び合うような感動のシーンとなることも期待しましたが、馬を管理する側からすると、何事もなく離乳を終えたことに安堵感を感じました。
写真4.離乳から約2カ月が経過して270kgにまで成長した子馬
離乳後の子馬と代理母を比較すると、異なる放牧地に移動した影響もあるかもしれませんが、子馬よりも代理母の方が落ち着かない様子に映りました。このことを鑑みると、子馬は成長すると母馬への依存度は小さくなっていく一方で、たとえ代理母であっても、一度備わった母性の強さというのは、子馬の母馬への思いとは、比べられないほど強いものであるように思われました。また、強い母性を持っていた代理母であったからこそ、孤児を許容することができたのだとも感じました。