2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2022/11/09
11月に入り最低気温が0℃近くになる朝もあり、いよいよ冬への季節の移り変わりを感じる浦河です。
さて、前回は離乳のストレスを緩和する目的でJRA日高育成牧場において実施している "母馬を数頭ずつ複数回に分けて群れから引き離していく"「間引き法」と呼ばれる離乳方法と離乳後の「コンパニオンホース」の導入について触れました。今回は、「コンパニオンホース」の導入がどの程度ストレスを緩和しているかについて、ひとつの目安となる離乳後の体重の変化から検証したいと思います。
写真1.離乳後の当歳馬とコンパニオンホース(赤矢印)の群れ
日高育成牧場において、離乳時のコンパニオンホースを導入する前と導入した後の離乳当日朝と翌朝との子馬の体重増減量を比較した結果、コンパニオンホース導入前は離乳後の体重は4.54kgも減少していたのに対して、導入後は2.72kgの減少に留まっていました(図1)。この差は統計学的にも有意な差であり、コンパニオンホースの導入により離乳後の当歳馬の体重減少を軽減できることが明らかとなりました。
図1.コンパニオンホース導入前後の離乳当日朝と翌朝の子馬の体重増減量
一方、コンパニオンホースを群れから引き離す際(第二の離乳)にも残された子馬達に離乳時と同程度のストレスがかかるのではないかという疑問も浮かびます。そこで、この「第二の離乳」と呼ばれる離乳後の子馬達の群れからコンパニオンホースを引き離す際のストレスについて、先ほどと同様に体重の変化から検証したいと思います。
コンパニオンホースを引き離す当日朝と翌朝との子馬の体重増減量を測定した結果、体重は0.35kg増加していました。図1でお示しした通り、離乳時は体重が減少するのが通常でありますが、コンパニオンホースを群れから引き離す際には、子馬の体重が増加すること、つまり、体重が減少するほどのストレスがない可能性があることがわかりました(図2)。
図2.母馬からの離乳時およびコンパニオンホース(CH)を群れから引き離す「第二の離乳」時の当日朝と翌朝との子馬の体重増減量の比較
このように「第二の離乳」時には体重は増加しましたが子馬の中には4kgも体重が減少した馬もいました(図3)。
図3.「第二の離乳」時における当日朝と翌朝との子馬の体重増減量の内訳
以上のことから総合的に判断すると、離乳した子馬からコンパニオンホースを引き離す「第二の離乳」については、多くの場合は大きなストレスとならないが、子馬の中には注意しなくてはならない馬もいるということが示されましたので、特に当歳の子馬については日頃からよく観察し、離乳時には個体の状況を勘案して個別にケアしてあげることが重要であるといえます。
写真2.「第二の離乳」も終えた当歳馬のみの群れ(10月中旬)