2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2022/10/24
10月に入り最低気温が10℃を下回る日もあり、徐々に秋から冬への季節の移り変わりを感じる浦河です。
さて、前回は8月下旬から9月上旬にかけて実施した離乳において「離乳に適する時期」について触れました。今回は、JRA日高育成牧場で実施している "母馬を数頭ずつ複数回に分けて群れから引き離していく"「間引き法」と呼ばれる離乳方法と離乳後の「コンパニオンホース」の導入について触れてみたいと思います。
現在、当場で行っている離乳の方法は以下のとおりです。
まず準備として、穏やかな性格の子育て経験豊富かつ今年は出産していない牝馬(コンパニオンホース)をあらかじめ離乳の前から母子の群に混ぜて馴らしておきます(図1①)。その後、離乳は段階的に2、3頭ずつ複数回に分けて、最終的に子馬とコンパニオンホースだけになる状態まで行います(図1②③)。子馬の状態が落ち着いたことを確認してから最後にコンパニオンホースを群れから引き離します(図1④)。
図1 母馬を数頭ずつ複数回に分けて群れから引き離していく「間引き法」
本年は生まれの早い順に子馬2~3頭を選択し、放牧中の母子の群れからその子馬の母馬を視覚的および聴覚的にも隔離された別の放牧地に移動させるという作業を1週間毎に3回実施しました。
写真1.最後に残った母子2組の離乳に際して母馬2頭(赤〇)を引き離します。
写真2.母馬2頭は視覚的および聴覚的にも隔離された別の放牧地に移動させます。母馬は子育ての経験も多いためかそれほど寂しがることはありませんでした。
写真3.母馬と離れた2頭の子馬は母馬の姿が見えなくなるまでフェンス越しに嘶いていました。
写真4.母馬の姿が見えなくなった後には、2頭の子馬(赤〇)は放牧地内を駆け回っていました。すでに離乳を終えた子馬達とコンパニオンホース(赤矢印)の群れがその様子を心配そうに見つめていました。
コンパニオンホースは、不安で嘶く子馬たちの中でも悠然と構えており、こちらの思惑どおり母馬から離れた子馬たちの不安を軽減してくれました。
写真5.放牧地を駆け回っていた2頭の子馬(赤〇)は次第にコンパニオンホースを中心とした群れに近づき落ち着くようになりました。
離乳時のコンパニオンホース導入の利点は、同じ群の離乳直後の子馬以外の馬が落ち着いていることです。離乳直後の子馬は、母馬を捜そうとして放牧地を走り回りますが、周りの馬が落ちついているため、次第に何事もなかったかのように群の中に溶け込みます。
写真6.母馬と離れた2頭の子馬(赤〇)は離乳を行った夕方にはコンパニオンホース(赤矢印)がリーダーとなる群れの中で安心して草を食していました。
どのような方法であっても、母馬がいなくなった子馬のストレスを完全に回避することは困難ですが、このような段階的な離乳およびコンパニオンホースの導入により、可能な限りストレスを緩和することができると考えられます。
次回は、離乳時におけるコンパニオンホースの導入によるストレスの緩和効果について、ひとつの目安となる離乳後の体重の減少から考えてみたいと思います。