2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2022/08/08
関東では8月一週目に最高気温が35度を超える猛暑日を数日間記録しましたが、浦河では雨の日も散見され比較的涼しい日が続きました。そのため、この時期の「天敵」となる「アブ」が例年より少なく、8月としては馬にとって比較的過ごしやすい気候です。
今回は7月中旬に実施された「血統登録」について紹介いたします。サラブレッドとして競馬に出走するためには、サラブレッドである旨の証明を受け、そして登録されなければなりません。サラブレッド誕生の地である英国では、1791年に出版された繁殖記録台帳である「General Stud Book序巻」から血統登録の歴史は始まっており、血統登録の歴史はサラブレッドの歴史そのものと言っても過言ではありません。
〔写真1 登録審査委員2名によって検査が実施されました〕
現在では、国際血統書委員会(ISBC)に承認の地位を与えられている血統書機関によって登録を受けたサラブレッドのみが競馬に出走することができます。日本では(公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルが血統登録の業務を実施しています。ちなみにサラブレッドなどの軽種馬以外の登録は、日本馬事協会が実施しています。
〔写真2 以前は特徴を紙媒体に手書きで記録していましたが、現在はタブレットを使用して記録されています。〕
国際血統書委員会(ISBC)が定義するサラブレッドとなるための資格は、以下の4つの条件を満たさなければなりません。①父と母馬がサラブレッドである。②自然交配の結果による産駒である。③個体識別が正確に行われている。④DNA検査によって親子関係が証明されている。つまり、血統登録検査はこの4つの項目を検査していると言えます。
〔写真3 MC本体は円筒状で非常に小さく、写真下の注射器を用いてタテガミの生え際の下の靭帯内に挿入されるため、馬への苦痛・ストレスはほとんどありません。〕
個体識別検査は、以前は性別、毛色、頭部や下肢部の白斑、そして旋毛(つむじ)などを記録することによって行われていましたが、2007年産まれの馬からマイクロチップが併用されるようになりました。マイクロチップ(MC)検査の導入により、個体識別は簡便かつ確実となったため、2009年産まれの馬からは、当歳時と1歳時に2回実施されていた個体識別検査が、当歳時の1回だけに変更となりました。個体識別は、サラブレッドの経済的価値、さらには競馬の公正確保を考えた場合には、非常に重要なものとなっています。
〔写真4 MCを読み取る(左)と番号がタブレットに送信されます(右)。〕
親子鑑定検査は、以前は血液型検査によって実施されていましたが、2003年から導入されたDNA型検査によって、その精度は99.9%を超えるようになりました。現在は、5~10本のタテガミの毛根を採取し、検査機関でDNA型検査が実施されています。以前の血液型検査では採血が不可欠でしたが、現在は不要となったため、子馬へのストレスもほとんどなくなり、人馬ともに安全な検査となっています。
〔写真5 登録審査委員によるタテガミ採取の様子〕
「血統登録」を終えると、今春生まれた子馬たちが競走馬になるための階段を1段上がったような気持ちになります。肢の比率が大きい1ヶ月齢時と比べてみても背中と頚の比率が大きくなってきており、さらに顔つきも少し大人びてきたようにも感じられ、「サラブレッド」らしくなってきました(写真6)。この馬は産毛のうちは鹿毛に見えていましたが、換毛が進むと黒鹿毛であったのが分かります。
〔写真6 日高育成牧場の3月19日生まれの末っ子スノーボードロマンの2022(父:アニマルキングダム) 左:4月21日撮影 右:7月1日撮影〕