2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2023/04/14
4月に入ってからは浦河も春を感じる暖かい日が続き、例年よりも早く放牧地の青草が繁茂しているように感じます。
日高育成牧場の出産は2月中旬から始まりましたが、4月中旬に生まれた9頭目の子馬の誕生をもって、今シーズンの出産が全て終了しました。3月中旬までに生まれた5組の親子は同じ放牧地で過ごしていますが、母馬と子馬は常に一緒に行動しており、子馬同士が戯れる姿が見られるのは、桜が咲く頃になると思われます。
写真1.今年誕生した子馬は母馬の傍で過ごす時間が大部分を占めています。
写真2.子馬同士は興味を抱いているようですが、母馬から「まだ、遊んじゃダメ!」と言われているように映ります。
さて、今回は前回の記事(https://bokujob.com/blog/article/2023/jra-94.html)に引き続き、日高育成牧場で取り組んでいる「乗用馬生産を目的とした受精卵移植」における「レシピエントへの受精卵の移植から受胎」までについて触れてみたいと思います。
前回は「ドナー」である「ユートピア号」から2個の受精卵を無事に回収することができたところまでお伝えしました。当然、受精卵を回収することは非常に重要なことなのですが、それと同じくらいに重要なことは、この2個の受精卵を「レシピエント」と呼ばれる代理母(出産および育児を担当する牝馬)に移植して受胎(妊娠)させなければならないということです。
写真3.回収された2個の受精卵。
つまり、「レシピエント」の子宮が受精卵を受け入れる状態になるように、「ドナー」の排卵日の前日から3日後の間に「レシピエント」も排卵させておかなければなりません。このように「ドナー」と「レシピエント」の発情周期を同期化させるために、約20日前から排卵誘発剤等を使用してこの日に備えました。
写真4.「レシピエント(代理母)」に選ばれた1頭目のサラブレッドの牝馬
一方、2個の受精卵が回収できたということは、2頭の「レシピエント」が必要ということを意味しており、我々にとってはうれしい誤算となりました。幸いにも、4頭用意していた「レシピエント」候補馬のうち2頭が発情周期の同期化に成功したため、この2頭に受精卵移植を行うこととしました。
写真5.「レシピエント(代理母)」に選ばれた2頭目のサラブレッドの牝馬
受精卵移植を行った2頭の「レシピエント」に対して、約1週間後(胎齢14日)に妊娠鑑定のエコー検査を実施したところ、無事に受胎を確認しました。さらに2週間後(胎齢28日)の再検査時においては心拍も確認されました。
写真6.最初の妊娠鑑定で確認された胎齢14日の胚胞
写真7.胎齢28日の胚胞の中には胚が認められるようになり、心拍も確認できるようになります。
受胎を確認したのは10月下旬でしたので、順調に行けば9月下旬に出産となる予定ですので、受精卵移植による「二卵生双生子」が誕生した際には、代理母の奮闘も交えて本ブログでご報告させていただければと思っております。