2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2022/03/17
前任者よりバトンを受け取り、今回からこのブログを担当させていただく
日高育成牧場の頃末(コロスエ)と申します。前任者同様よろしくお願いします。
日高育成牧場には2005年~2014年まで10年間勤務しておりましたので、今回は8年ぶりに帰ってきたということになります。実は学生時代も北海道で過ごしており、さらに函館競馬場でも2年間の勤務経験があるため、北海道は第2の故郷と思っております。このブログで馬産地の日常をお送りできればと思っていますのでお付き合い願います。
〔写真.1 セイコーマートクラブカード:8年ぶりに北海道民の証ともいわれているPecoma Cardを手にして幸せな気分になりました!〕
日高育成牧場では他の牧場と同様に3月に入って本格的な子馬の出産シーズンを迎えています。久しぶりに出産を見ることができましたが、子馬が娩出され、立ち上がり、そして哺乳を開始するまでを無事に見終えると安堵感に見舞われる気持ちは変わらないものでした。ほとんどの出産は人が介入しなくても無事に生まれてきますが、なかには難産等のトラブルが発生する場合もあります。
〔写真.2 子馬の娩出の瞬間:子馬は羊膜に包まれており両後肢は母馬の体内の中にある状態です〕
〔写真.3 分娩直後の子馬の体を舐める母馬:母馬の子馬の体を舐める行動は愛情表現といわれていますが、捕食動物に気づかれないように出産に伴う血の匂いを消すための行動であるとも考えられています〕
実際に日本のサラブレッドの受胎率と出産率はどの程度なのかをデータから見てみたいと思います。下の図は過去4年間の受胎率と出産率のグラフになります。受胎率は種付けした牝馬の頭数のうち受胎した馬の頭数のパーセンテージを、そして、出産率は受胎馬の頭数のうち出産した馬の頭数のパーセンテージをそれぞれ意味しています。
〔図.1 日本における受胎率と出産率(2018年~2022年)〕
つまり、サラブレッドの受胎率は約82%、出産率は約92%となります。例えば10頭の繁殖牝馬に対して種付けした場合には、翌年には概ね7.5頭[82%の受胎率(0.82)×92%の出産率(0.92)= 75%]の子馬が生まれるという計算になります。
野生状況下で飼育されている馬の出産に関する調査では、10頭の牝馬から概ね6頭の子馬が生まれるという結果が報告されていることから、サラブレッド10頭の牝馬から7.5頭の子馬が生まれるという現状は生産牧場のスタッフの多大な努力によって可能となっていると考えられます。
一方、野生状況下で飼育されている馬の出産に関する調査では、5月以降の出産が全体の85%を占めていると報告されています。この結果は4月までの出産が全体の80%を占めているサラブレッドとの大きな相違点となっています。この理由は、本来、野生動物はより多くの子孫を残すために餌が豊富な春に子供を生むように発情期が設定されているからです。それではなぜサラブレッドは1月に出産することができるのでしょうか?この謎については次回のブログで触れてみたいと思います。