2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2019/03/19
春は近くに
3月はJRAの定期人事異動。今年も新しい仲間が加わりました。
「思ったより暖かいですね。」
第一声がみなさん、そんな感じだったのですが、確かに2月の終わりから、まとまった雪も降らずに、3月下旬くらいの陽気が続いている日高です。育成馬の調教も順調で、1歳、繁殖牝馬、当歳馬もそれぞれ、元気いっぱいです。
そうは言っても、桜が咲くのはまだまだ先で、風はまだまだ冷たいのですが、日差しは春がもう近くまで来ていると感じられるほどになってきました。
スプリングキャンプ
毎年恒例になっている研修ですが、今年も全国の獣医系大学から学生がやってきました。目的は、馬の出産、繁殖牝馬、当歳馬の飼養管理の勉強をすることです。そして、その中には、馬取扱いの仕事を目指す皆さんと同じように、馬に関係する仕事について興味を持つ学生もいます。私もこの春の時期になると、学生で将来どんな仕事についたらいいのかと、悩んでいたことを思い出します。学生にとって不安なことは、そう、単純に、
仕事するってどんな感じなのかな
続けていけるのかな
そんな感じですよね。私もそうでした。無責任なことはあまり言えないのですが、どんな仕事でもやってみないとわからないです。そして
意外と合っているな
ちょっとつらいかな
まるで合わないな
いろいろ感じながら仕事を始めると思います。まるで合わないなと言う人は、次の仕事を探すのがいいのかもしれないですけど、自分が一大決心をして始めた仕事なんですから、少々つらくても、自分の決断を信じて粘って続けてほしいですよね。私も正直、今の仕事が合っていたかと言えば、そうでもなかった(もう年なので過去形になってしまう・・・笑)と答えてしまうことが多いです。でもそれは、振り返ってみてすべてが決して無駄なことではなかったと思っています。楽しいこともうれしいことも沢山ありました。どんな仕事でも、いいことも悪いこともいろいろあって過ごすことに変わりないですから、まずは自分で選んだ仕事を好きになる努力をしてみればいいのです。あまり難しく考えすぎないことですね・・・。
耳を澄まして
大学を卒業して、もう30年近く経ちましたので、出身大学の今の状況についてはほとんどわかりませんが、私が通っていた頃・・・6年間の学生生活の中で、4年目から「研究室」に所属していました。私が4年生のときは、6年生が3人、5年生が3人、4年生が5人、先生が3人で、事務官が1人の計15名が所属していました。3人の先生にはそれぞれ自分の部屋があって、そのほかに実験室、実習室、コンピューター室、暗室、顕微鏡室などがあって、部屋の入り口に自分の名前を書いたマグネットが用意されており、各部屋に行ってこもるときは、壁に書いてある行き先地図に自分のマグネットを移動させる・・・なんてことをやっていました。当たり前の話ですが、登校するときは靴を履いてきますが、研究室から室間移動するときはスリッパを履いて歩いていました。私の部屋の机は入り口に一番近いところだったので、パタパタと廊下の足音が良く聞こえる場所でした。
研究室生活にも慣れてきたころ・・・。
お昼休みは、大抵、生協でA・B・Cランチを食べるか、少し離れた食堂に行くか、大勢でジンギスカンを食べに行っていました。ある日、一人で早々に昼食を終え、他のメンバーがランチに行って、部屋にいたときのことです。昼食を終えた順番に人が帰ってくるのですが、ドアを開ける前に
「あ、○○が帰ってきた。」「3人帰ってきた」など、足音を聞いただけで、誰かを当てるようになっていることに気づいたのです。それは、履物の種類が違って微妙に音が違うことだったり、人によって歩くリズムが異なったりすることだったりすると思うのですが、普段から意識して聞き分けようとしたものではなく、毎日のことで自然と耳に入っていたんですね。
目だけに頼らない
馬は皆さんご存知のように、常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)と大きく分けて3つの歩法がありますが、それぞれ4拍子、2拍子、3拍子とリズムも違います。例えば、毎日同じ馬の調教をつける、見る場合や、多くの馬を見ながら比較するなど、そんな機会を持つことが多い人ならば、目だけでなく耳も使ってみてはどうでしょうか。
例えば、右前肢に痛みを感じている馬がいたとしましょう。程度は様々で一概には言えませんが、右前肢をつく時に痛みを感じて頭が少し上がる、痛くない左前肢をつく時間が長くなり深く肢をつけるため、頭が少し下がる動作をするかもしれません。運動している場所が、固いところならはっきりと着くときの音が違い、柔らかい場所なら、サクッサクッした音の高さやリズムが違って聞こえるかもしれません。そのほかにも、馬の息遣いが変わってくることもあるかもしれないし、前後の肢を時々ぶつけながら走る馬もいて、その当たる音の程度が違うことに気づくかもしれません。硬い地面での常歩でも元気のいいときと、元気のないときで、蹄音が異なるかもしれません。百聞は一見にしかずですが、聞いてこそわかることもあるので大事にしてほしいです。
くだらないと笑われそうですが、何もないのに、馬が警戒して耳をたてて遠くを見つめることがあります。何を見ているのかなあ、何か聞こえるのかなあ、といつも知りたくてたまらなくなります。いらいらしているのか、何が気に食わないのか、ものすごい音をたてて、壁をバーン!と突然蹴るのもいますよね。まあ、わからないことだらけですけど、人間と同じで、馬も感情豊かな動物ですから、たくさんコミュニケーションをとって、多くのことを知り合える仲になりたいものです。皆さんはどんな馬に出会って、これからどんな風に過ごすのでしょうね。
4月になれば、あちらこちらの学校、会社で様々な思いを秘めた人の足音が聞こえてきます・・・。
今回もお付き合いありがとうございました。