2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2018/05/02
BU
ようやく「今日はあったかいね」という言葉が会話の中で聞かれるようになった陽気の北海道。例年桜の開花は5月ですが、今年は早くて、浦河優駿道路の桜も4月中に開花しました。北海道もようやく春がやってきました。
先月24日、中山競馬場ではブリーズアップセールが開催されました。快晴とはいきませんでしたが、概ね穏やかな天候のもと、前日の下見、当日の公開調教、事前下見と予定どおりに実施され、セールも会場が満席に近い盛況のもと開催されました。成績についても、上場された育成馬は完売で、売り上げも好調だった昨年と同じくらいでした。今回、上場されなかった育成馬も何頭かいましたが、こちらは今月22日に札幌競馬場で開催される予定の北海道トレーニングセールに向けて調整していくことになります。その経過や市場の様子については、また来月報告することにします。
研究評価委員会
何だか堅苦しいタイトルですいません・・・。毎年4月は研究関連の節目となる月。研究評価委員会とは、昨年実施した研究および来年度から実施する予定の研究の内容について説明してもらったり、評価してもらったりするものです。それにあわせて、現在実施している研究の経過報告も行ってもらい、意見交換などもする会議になります。私も評価委員として参加してきました。生産育成に関する研究を実施している日高育成牧場からは、現在行っている研究の進捗状況の報告を行ってきました。生産地で抱える問題は多岐にわたっていますが、その中で皆さんが日頃疑問に思っていること、悩んでいることがあると思います。今後、我々育成牧場のスタッフと交流する機会があれば、意見交換などしながら、できることからいろいろなことに取り組んでいきましょう。これからもよろしくお願いします。
見えて怖い、見えなくて怖い
さて、今回は、「怖がる」をテーマに書いてみます・・・。いろいろな視点で考えることのできるテーマですが、ここでは「視野」に焦点を当てて考えてみることにします。
馬は臆病な動物だ、怖がりだ・・・馬を語るときによく聞き、よく使う言葉ですね。馬は見慣れたものには動じないですが、初めて見るものや、予想外の動きをするものに想像以上に驚くことから、そんな風に思うのかもしれません。自分の身を守るため、子供を守るために、後ろ足を振り上げるなどの防御姿勢をとることから、「馬は蹴る動物」と思い込んでしまう人も少なくありません。
皆さんの中で、馬の蹄鉄をお守りにして持っている人はいませんか?馬は、理由もなく動物や人に危害を与えません。また、どんなに小さな動物であっても人でも、たとえそれらが馬の足元にいても、正しく認識さえしていれば、自ら踏みつけることはないのです。そんな理由で、交通安全のお守りとして蹄鉄を車につけている人がいます。馬はとてもやさしい動物ですから、決して誤解することのないようにお願いします。まあ、あの大きさで迫られると確かに「怖い」と思う人もいるかもしれませんが、変にこちらが驚くと、それに馬が驚きます。うまくコミュニケーションが取れていると判断したときは必ず、「よしよし、かわいいやつだ!」と鼻を撫でたり、首を軽くたたいたりして褒めてあげましょう。きっと喜ぶと思います。まあ、いたずらされることもありますがね・・・。で、今回は、馬がなぜ「怖がる」のかを考えてみるのですが・・・。そうですね・・・自分が怖いと感じるときと、馬が驚いて怖がっているように見える姿を想像しながら、比べて考えてみましょうか・・・。
私が小学生の頃の話ですが、超常現象などを取り扱った特集番組が流行ったことがありました。たとえば、謎の飛行物体とか心霊現象などのスペシャル番組ですね。私はこのうちの「心霊現象」が怖くてね。毎日、耳をふさがないと寝られないとか、豆電球をつけないと寝られないとか、そんな感じの怖がりな子供だったと思います・・・。まあ、今では平気になりましたけど・・・。人は、見えそうで見えないものとか、あるはずもないのに見えている気がするとか、後ろから何かが迫ってくる、突然何かが現れるなどが起こったときに、予想以上の驚き方をするものです。
馬が見える風景を想像してみる
では、馬はどうでしょう。
唐突ですが、皆さん、人差し指を立てて、腕を顔の正面にまっすぐ突き出し、視線は前方で固定し、人差し指を肩と同じ高さを保ちながら、ゆっくりと左右に開くように横に動かしてみてください。どこで指は見えなくなりましたか?だいたい左も右も丁度水平に腕を横に広げたくらいの位置で見えなくなりますよね。つまり、真正面を向いているとき、前方180度の範囲はよく見えるものの、後方180度は直接見えないはずです。人は時にこの見えないところに何かいるのではないかと想像して怖くなりますよね。では、見えていれば怖くないのでしょうか?360度全部が24時間見えている世界を想像できますか?全部見えているんだから安心と思う人もいるかもしれませんが、全部見えると落ち着かないのでは、不安になるのでは?と思う人のいるのではないでしょうか?私は馬は後者だと思うんです。24時間まわりが見えすぎて不安を感じるのだと想像します・・・。科学的な根拠はないんですけどね・・・。
馬は私たちと違って、目が顔の横についています。馬の視野は実に広くて、真正面と真後ろに死角があるといわれていますが、少なく見積もっても全景360度中340度くらいはしっかり見えていそうです。しかもその目の奥「瞳」をよ~く見ると、私たちのように円形ではなくて、横に細長い楕円形をしているのがわかります。
一般に草食動物は視野を広くして、敵を早く察知できるように目は横についていて、肉食動物は、目前の獲物を狙って確実に捕らえられるように、目は前についていると言われます。草食動物である馬も例外ではなく、油断すると敵に襲われると言う本能的な感情を持っているため、予想もしないようなことに過剰に反応するのでしょう。
馬とおしゃべりをしながら
私は小心者なので、最初はできなかったのですが、馬の手入れや治療などをするときは、たえず独りごとを言っているかのように馬に話しかけながらブラシをかけたり、注射をしたり、包帯を巻いたりしていました。例えば注射が嫌いな馬がいたとします。馬によってとる行動は違います。立ち上がる、首を振る、肢でたたく、噛み付く、頭突きをする・・・
「わかったから、嫌いなの知ってるから、ちょっとだけだから、よーしよしよし・・・」もう適当な言葉で、声を大きくして、ごまかしながら注射します。音に敏感なら、逆にそうーっと近づいて、小声で、
「よしよしよし・・・じっとして・・・」
なんていいながら注射します。まあ、頭がいい馬もいて、上手くいかない場合も多いですけど、怖がらないようにと思って、黙っていきなり近づくほうが逆に怖がると思います。
自分が怖がらない
繰り返しになりますが、最悪なのは自分自身が怖がることで、この人間の行動が一番馬を怖がらせます。視界が広い分、どこから人が近づいてくるかを常に見て様子を観察しています。怖がっている人を見ると、馬は自分に何かするのではないかと思って警戒するのです。たとえ、自分が馬取扱いの初心者であっても、自信をもって堂々と馬に接することです。そうすれば、馬は安心します。
見えるほうが怖いのか、見えないほうが怖いのか・・・わからなくなってきましたね~(笑)。皆さんはどう解釈しますか・・・。今回もお付き合いありがとうございました。