2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2016/09/07
台風が次から次と北海道を直撃し、大変な被害が出ています。被災された方には、心よりお見舞い申し上げます。どうぞ、お身体を大切にしてこの苦難を乗り切って下さい。
その台風が直撃するなか、新ひだか町の北海道市場でサマーセールが開催されました。このセールで、JRAは55頭の1歳馬を購買。そのうち宮崎育成牧場に行く12頭を除く43頭が、われわれの日高育成牧場にやって来ました。まだ、オータムセールで2頭程度の購買を予定していますが、これに日高育成牧場の生産馬6頭とセレクトセール・セレクションセールの9頭を加えた計58頭が揃い、いよいよ来年のブリーズアップセールを目指した騎乗馴致の始まりです。私たちの馴致の第一歩は、人がリーダーであることを認識させた上で、人馬の信頼関係を築くこと。これがなくては、いかに高度な技術を駆使しても馴致を円滑に進めていくことは出来ません。今年購入した 1歳馬の血統はバライティに富み体形もさまざま。購入価格も1600万円を越えるものもあれば、200万円そこそこの馬もいます。でも、そのような馬たち全てがそれぞれ将来性を秘めていることを信じ、私たち日高育成牧場のスタッフは段階的に騎乗馴致をすすめていきます。えっ、キレイごとに聞こえる!ですって?そんなことはありませんよ。そうでなくては、人馬の信頼関係なんて築けるはずがありません( +・`ω・)bキリッ!それに、馬の可能性を信じて最善の教育をしていかなくては、これまで馬を育ててくれた牧場の皆さんや将来お世話する競馬場のスタッフに申し訳ないと思いませんか?いずれにしても、良い教師が生徒を信じるように、よいホースマンは馬の将来に期待して仕事をするものなのです。
1歳馬との新しい出会いに心躍らせる一方、この時期少し胸がキュンとするイベントが行なわれます。それは、当歳馬の離乳です。離乳は母馬の来春の出産の準備として、また子馬の栄養源を母乳から固形飼料へ移行させるためには避けられないものなのです。しかし、母子の別れを意味するわけですから、子馬にはストレスとなり、時には食欲不振や病気になることもあります。また、他の牧場では母馬を探し求める子馬が柵を飛び越え大怪我をするといった事故も起きているようです。そのような事態が起こらないよう、当場では細心の注意を払い、あらかじめ保母さん役となる優しい牝馬を親子の馬群に入れた上で、何回かに分けて母馬を他の放牧地に移す「間引き法」という離乳方法を取っています。この方法ですと、一度に母馬たちがいなくなる訳ではないので子馬たちがパニックになるリスクが軽減しますし、最終的に母馬がいなくなった後でも保母さん役の馬が子馬たちの気持ちを落ち着かせてくれます。この手順を踏んでも、母親がいないことに気付いた子馬たちは不安そうな素振りを見せます。しかし、それも一時のこと。子馬は直になれて、子馬同士のコミュニティーを構成し、社会性を獲得していくのです。
親離れと子離れは、全ての哺乳類が成長していく過程で必ず経験しなくてはならないイベントです。しかし、それが一番不得手になってしまったのは現代の人間なのかも知れませんね。"成長とは自立すること"そう考えると、一見可哀想に感じる離乳も喜ぶべき節目のイベントと言えそうです。ところで、皆さんの親離れはもうお済ですか?
放牧地に放されたばかりのサマーセールの購買馬(牝)。牝馬同士は、あまり喧嘩もせず仲良く走り回っていました。颯爽と先頭を走るのは静内農業高校の生産馬叶夢(かのん)号(母ゴートゥザノース)です。
こちらは牡。放牧地に放すと、すぐにボス決めの戦いが始まりました。噛んだり、蹴ったり、立ち上がったり...。馬も牡と牝で、行動が全く違うのが本当に興味深いですね。
本格的な騎乗馴致に先立ち、タオルで耳の後ろやお腹をパッティングし、触れられることに慣らしていきます。こうして、馬の恐怖感を取り除き人の動きが無害であることを教えることで、信頼関係を築いていきます。
離乳のため、母子の放牧地から段階的に母馬だけを引出してきます。母馬がいないことに気付いた子馬が放牧地を走り回ることもありますが、他の馬たちが落着いているのをみるとわれに帰り、直に群れに戻ります。
母馬が戻ってこないことに気付き、不安そうな子馬たち。保母さん役の牝馬(一番左)がいるためパニックにはなりません。少し可哀想ですが、精神的に自立するためにはいつかは通過しなくてはならない道なのです。