2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2016/01/21
今回は、JRA育成馬の近況をお伝えします。現在、体力的にはBTCの屋内坂路馬場を54秒/3F程度を楽に1本上がってくることをひとつの目安としています。いわゆる「ステディキャンター」とよばれる馬なりのスピードで、騎乗者の手ごたえとしては、「オン・ザ・ブライドル」(「オフ」ではなく前に行く気持ちをためた走り)を求めています。坂を上がってくるときのアクションや息遣いとともに、騎乗者によるフィードバックコメントを参考に、馬の状態を判定しています。楽に走れるようになれば、2本に増やし、2本を楽々こなせるようになれば、3月にはスピードトレーニングを開始します。
800mトラックで1200mのキャンターを行った後に屋内坂路に向かいます。屋内坂路まで約20分かかりますので、常歩が十分できるのもメリットのひとつです。
調教を判定する指標として心拍数や乳酸も測定しています。有酸素トレーニングの効果を上げるためには、調教中の心拍数が200以上、調教直後の乳酸値が4mmol/ℓ以上の負荷がかかっていることが目安になります。楽に走れるようになるとこれらの数値も下がってきますが、これらの数値を参考に負荷をどうかけるかも考えます。乳酸値は採血の手間がかかりますが、その場で結果判定することができるので簡易といえます。現在、平均すると牡では4.5、牝では5.6程度(1月15日現在)なので、馴致を早く開始し調教の進んでいる牡のほうが、体力がついてきているようです。来週から2本開始する予定です。
調教後にすぐ採血を行い、簡易測定器ですぐに判定することができます。
一方、調教内容を分析するためには調教中の心拍数測定が有効です。こちらも簡単に測定できます。同じ内容の調教をより低い心拍数で走行できるということは楽に走れているといえます。また、調教負荷をかけた際に、心拍数が徐々に上がっていくタイプなのか、すぐにMAXに上昇させることができるのか等の違いは距離適性と関連があるという方もいます。興味深いところです。
心拍数100前後の山が速歩、180前後の山が800トラックでのキャンター、200前後が坂路での心拍数です。それ以外のギザギザは馬が驚いた反応などです。
さて、科学の手法は調教を分析するのに非常に役立ちます。しかし、大切なのは数値ではなく馬を見て判定することができるようになることだと思います。
逆に、馬の息づかいやアクションなどと走行タイムを含めたこれら数値を関連付けて調教を見ることで、より深く馬を観察できるともいえます。つまり、科学は経験を裏付けていく作業ともいえます。