2024/05/02
JRA日高育成牧場です。
2019/06/06
生産地研修・品評会・栄養に関する講習会
北海道トレーニングセールも無事に終了し、令和元年となって早くも6月に入りました。時の流れは本当に早く感じます。この時期は出産、種付けも一段落で、育成馬もいないことから、なんとなくオフシーズンと思われがちですが、様々な団体や他部署から研修生が入れ替わり訪れる時期であり、またセールを控えた1歳馬の品評会が行われる季節でもあります。また、来年の育成に向けての管理計画や研究のまとめ、新規計画の作成なども実施しています。
先月末の話になりますが、栄養に関する講習会が浦河で開催され、私も足を運んで聞いてきました。多くの牧場関係者が熱心に聞き入っていましたよ。講習後の質疑応答も活発に行われ、普段から馬や放牧場管理に苦労している、いろいろ手を加えたいと模索している様子がうかがえました。皆さんも、もし身近な地域で類似の研修会や講習会があれば、是非参加して知識を増やすといいと思います。
一方、競馬に目を向けてみると、6.15から北海道シリーズ函館開催が始まりますね。皆さんの所属している牧場、また個人的に関心のある牧場で生産された2歳馬の新馬戦はすでに始まっています。私としては日高育成牧場出身の2歳馬にも注目したいところ・・・。
こうして考えると、いろいろな面で気分を変える季節といってもいいですね。緊張の4月、試練の5月、そして飛躍の6月・・・なんて、勝手な表現ですが、いずれにしても、皆さんにとって、どうかいい季節になってほしいと心から願うばかりです・・・。
そして、当歳馬と1歳馬も、それぞれのペースですくすくと成長しています。放牧地の緑も鮮やかになってきて、美味しい草を食べながら日に日に成長し、たくましくなっているように見えます。原稿を書いているこの日は、子馬の成育が順調かどうかの馬体検査が行われていました。
以前にも書いたことがありますが、生後3~4ヶ月の頃は、何かと体と脚部の成長のバランスを崩しやすい時期でもあり、特に肢勢や蹄の形に注意を払いたいところ・・・。この日も何頭か、蹄の形などから、肢勢に注意ながら観察すべき子馬が見られましたね・・・。皆さんも、日頃から愛馬を様々な角度から見て、できる範囲のケアをしてあげてください。
最近は天候の変化も極端で、時折起こる自然災害に苦しめられることも多いですが、今年は穏やかに過ごせるよう願いたいものです。
今回は体温について考えてみたいと思います。「え~、体温?つまらないなあ・・・」なんて言わずにちょっと読んでみてください・・・。
皆さんは馬の体温が何度かご存知でしょうか?
その前に自分の体温が何度か・・・知っていますか?
私は36.0度くらいだったと思いますが、正直しばらく計ったことがないです。
お恥ずかしい限りで・・・。
人の体温の場合は37度を境に、熱があるかないかを判断することが多いですが、
「まあ、測ったことはあまりないけど、36度5分くらいかな」
「俺は低めだから、35度台だよ」
と勝手に決めつけている人が多いのでは・・・。
確かに個人差は大きいと思います。熱がある場合、38度以上になるとふらふらする人もいれば、意外と39度でも平気な顔をしている人もいるでしょう。でも40度になると、さすがに頭が燃えるように熱くなって、立っていられなくなることが多いはず・・・。ここで考えてほしいのですが、普段の体温が35.4度の人と36.6度の人がいたとして、どちらも39度の発熱を認めたとき、同じように考えていいのかということです。単純に1度以上の差があるので、やはり35.4度の人をより注意して観察する必要がありますよね。たった1度と軽く考える人もいるかもしれませんが、例えば、お風呂の温度を測ってみると実感できると思いますよ。「41度・・・温いかな」、「42度・・・丁度いいかな」、「43度・・・熱くて入れないよ」・・・1度違うだけで熱かったり温かったりするもので、実は1度の差は意外と大きいのです。なので、日頃の体温が35.4度の人にとっては、37度丁度くらいでも十分「発熱している」といえるかもしれません。
実際の馬の体温を知ろう
馬の体温は一般的に37.8度から38.2度が平熱とされていますね。診察するときに、馬の場合も体温をまずとってもらいますが、おおむねこの範囲で収まっていることが多いです。また、年を取った馬は体温が低く、若馬では高めなんて言われることが多いですが、これも意外といい加減です。以前、日高育成牧場の繁殖牝馬の体温表を眺めたことがあって、一番低い馬で37.4度、高い馬で38.1度と実に0.7度の差がありました。ある時、日常の平均体温が37.4度の馬が38.0度だった日があったんです。その日は、少し元気なくて、食欲もありませんでした。まあ、1日様子をみただけで元気にはなりましたが、おそらく38.0度でもこの馬にとっては、「発熱」の状態だったのでしょうね。馬は移動するときに、長距離であれば必ず馬運車に乗りますが、降りた直後の体温は高めに出ますね。そんなときも、普段のその馬の体温を把握したうえで、しっかりチェックすべきでしょう。鞍をつけて、人がまたがり、指示どおりに走るということは、馬にとっては人が思う以上にストレスに感じることかもしれません。また、いろいろな要素が重なって、騎乗後に発熱する馬もいると思います。馬のちょっとした仕草の変化に十分に気を配ってくださいね。
なぜ発熱しているのか
当たり前の話ですが、長く世話をしていればしているほど、馬のわずかな変化に敏感になってくるものです。発熱したら、自分なりの推測をたてて、何が原因なのかを探ってみましょう。正確な診断は獣医さんに任せるとして、普段から体を触る、歩かせるなどして、自分なりに異常を探してみましょう。以前ここで書いたことがありますが、甘い先入観で診断を誤るケースもあります。いつもは窓から顔を出して元気にしているのに、馬房の中でじっとしている・・・。そんな姿を見かけたら、まずは発熱を疑って、いろいろな角度から観察する習慣をつけましょう。
当たり前で基本的なことをちゃんとやる・・・大事なことですよね。
今回もお付き合いありがとうございました。