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2019 見学会レポート(関西)

2019 見学会レポート(関西)

恒例の「牧場で働こう 見学会」in関西。多くの希望者が集まり、参加者数は、高校生と付添の保護者を中心とした昨年に続く過去最高の総勢41名。朝の新大阪駅はまさかの雨からみぞれ模様となり、見学地の滋賀県信楽地区の天気が心配されたものの、各施設とも見学時には天候が回復し、肌寒いながら晴れ間も見られるほどになった。
バスの移動時間を利用し、配付された『BOKUJOBガイドブック』、『牧場紹介冊子』、『北海道牧場地図』などが紹介され、参加者は興味深く各資料を確認していた。今回の添乗員にはBTCとJBBAの研修機関担当者がいて、その説明にも参加者たちは真剣に耳を傾けていた。
参加者の自己紹介では、遠方からの参加者も多く、愛媛や石川、富山、東京からとの声もあった。
また、『インターンや就職を希望する牧場の絞り込み』、『競馬学校入学』、『BTC研修』から『将来的には調教師』などを今回の参加の目的にあげるなど、しっかりと就業を見据えている参加者・保護者が多く見られた。

グリーンウッド・トレーニング

最初の見学地であるグリーンウッド・トレーニングに到着した頃には、雨が上がり幸先良く見学会がスタートした。

我々が到着すると、永山代表と田中マネージャーが出迎えてくれ、二手に分かれて牧場の調教施設や厩舎、独身寮を案内してもらい、坂路の監視塔からは実際の騎乗調教を見学させていただいた。

見学先であるグリーンウッド・トレーニングは平成13年に開業した民間の育成牧場で、JRA栗東トレーニングセンターから35分の滋賀県甲賀市の街中にあり、主に現役競走馬の預託を受けている。馬房数は230馬房(8厩舎)あり、厩舎横にウォーキングマシンが整備されていた。ひと厩舎6名から8名のスタッフが毎日競走馬の調教を行い、毎週30頭から40頭の競走馬が入れ替わり在厩している。調教施設は1,000m周回トラックと600m坂路コース(ウッドチップ)があり、厩舎地区には診療所も併設され、獣医師2名が専従して治療や調教後のケアにあたっていた。

一日の仕事内容としては、毎日6時30分から騎乗調教を開始して、午前中には騎乗調教が終了、午後は2時過ぎから2時間程度かけて馬のケアをしている。なるべくJRA栗東トレセンの調教時間に合わせていて、飼料についても同様に対応し、入厩した馬が違和感なくリラックスできるように考えているとのこと。

調教は馬によってレベルを調整していて、4、5頭の集団調教をする場合もあれば、1頭での調教もしていた。レース前の馬を預かることが多く、坂路ではハロン13秒から15秒での調教、実質の時間は20分程だが、その前後にウォーミングアップとしてウォーキングマシンを利用したり、クーリングダウンを十分に行ない、馬のケアに心がけているとのことだった。

JRA栗東トレセンに近く、馬主や調教師が頻繁に訪れることから、常に緊張感を持って調教や日々の管理をしているとのこと。現役の競走馬であり、生き物を相手にしているので厳しい部分もあり、非常に神経を使いながらケアをし、一日を通してのチェックが大切とのこと。

グリーウッド・トレーニングは調教レベルが高く、教育も充実しているのが特徴。近隣の乗馬クラブと提携してスタッフの騎乗技術の向上に取組んでおり、乗馬クラブでの騎乗訓練の費用はグリーンウッド・トレーニングで負担していた。JRA厩務員課程を目指すことも推奨しており、これまでにグリーンウッド・トレーニング出身者が何人もJRA厩務員課程に合格しているとのこと。インターンシップも受け入れており、見学時はちょうど岐阜農林高校の生徒が2名インターンシップ中でした。インターンシップはすべて学校を通して実施しているそうで、今回の参加者にも興味があれば学校を通じて気軽に連絡をくださいと案内をいただいた。


3階建ての独身寮を見学(食堂)

居住環境では、牧場の直ぐ近くに独身寮がある。寮は3階建てで一人一部屋の個室になっており、それぞれの個室にバス・トイレが付いているのでプライベートも確保されていた。現在は28名が入居しているとのこと。食事については昼食と夕食を食堂でとることができ、また、必ずしも独身寮に入らなければいけないわけではなく、寮生活が合わない場合には外に住むこともできるとのこと。


若手スタッフお二人を囲み、具体的な話が聞けた

見学の最後に、現在スタッフとして働いている伊藤さん(BTC育成技術者研修修了生)と藤田さんから実際の牧場の仕事について具体的に話を聞くことができた。参加者からは「携わった現役競走馬で成績の良かった馬は?」「休みはどのくらいあってどのように過ごしているのか?」「なぜグリーンウッド・トレーニングを就職先に選んだのか?」など、様々な質問があり、それぞれに対して丁寧な回答をいただいた。参加者にとっては直接スタッフの話を聞くことで、育成牧場の仕事について具体的なイメージができたのではないでしょうか。

通常と時間を変更して調教風景を見せていただいたり、丁寧な説明をしていただいた永山代表と田中マネージャー他、大人数での見学に対応いただいたスタッフの皆様に感謝です。

昼食

大きな信楽焼のたぬきが目をひくレストラン『たぬき』で昼食。昼食後、一服の時間にも事務局員に質問する熱心な参加者の姿が見られた。

信楽牧場

昼食後、信楽牧場に移動。ここ信楽牧場を経営するのは中内田克二社長、2018のJRA最優秀2歳牝馬ダノンファンタジー号を管理する新進気鋭の中内田充正調教師の父上でもある。

バスはほどなく信楽牧場に到着、中内田社長から調教コースを眺めながら牧場施設の説明をしていただいた。コースの内側に多数点在するサンシャインパドックは調教前の放牧に使用しているとのこと。以前は集団放牧していたが、ケガの予防から現在はこうしているそう。

この後は「乗馬体験」と「うまや(厩舎)の見学」。


乗馬体験前にレクチャーを受ける

まずは乗馬体験の様子からお伝えする。この乗馬体験で我々を乗せてくれる馬は、普段は社員の乗馬訓練に使用している引退競走馬マグナム号。この信楽牧場では馬に乗った経験が無くても、調教に必要な乗馬の技術を学ぶことができるとのこと。今年は、希望者の半分くらいが乗馬体験をしたところで、マグナム号がご機嫌ななめとなり、乗馬体験は終了となってしまった。馬も生き物だけにこういったことも貴重な経験のひとつと考えよう。

次は厩舎見学の様子。中内田社長から馬の飼料の説明をしていただく。JRAのトレーニングセンターに戻った時に馬が戸惑わないよう、その馬がトレセンで使用している飼料を与えているそう。厩舎の外では、馬が顔を出しており、みな現役競走馬とは思えないようなリラックスした様子。中内田社長から彼らとの接し方を教えていただき、参加者みな、馬との触れ合いを楽しんだ。

最後は、食堂での座談会。中内田社長の育成牧場経営者としての採用に関する考えと若手社員の方々から経験談を聞かせていただいた。中内田社長からは、「当牧場からJRAの調教師や厩務員になった者は約70名います。人手が減るのは牧場としては痛手ですが、当牧場には競馬サークルの教育機関としての役割もあるとの信念で、長年やってきました。この春も送り出します。」と育成牧場の心構えをお話いただいた。その後、中内田社長から紹介された若手社員の久保さんから、我々参加者の目線からの体験談を話していただきました。

「自分はずっと野球少年で馬に乗ったことは無かったが、高卒後こちらに入社し、半年乗馬練習をして、今は競走馬に乗っています。」と話していただいた。「ヒヤッとしたことは?」の質問には、「ヒヤッとすることはほぼ毎日ありますが、緊張感をもって仕事をしていることで、これまで大きな怪我はありません」とのこと。


中内田社長・若手従業員の方との座談会

最後に中内田社長から、インターンシップ制度を利用するのも賢明との説明。「学校の長期休暇を利用して、牧場で実際に働いて仕事を体験することで、就業してからこんなはずじゃなかったということを減らすことができます。当牧場でも受け入れ可能な時期もあるので、遠慮なく問合せしてほしい」。とのこと。

毎年感じることだが、信楽牧場の魅力は社長の人柄にある。信念をもって競走馬と人材の育成に取り組まれている。そんなことを感じながら、最後の見学地、ノーザンファームしがらきに向け、信楽牧場を後にした。

ノーザンファームしがらき


バスから降りて、概略説明を受ける

2018年の生産者部門においても、2位以下を大きく引き離し、8年連続でトップの座を獲得したノーザンファーム。牝馬3冠とジャパンカップに優勝して年度代表馬に輝いたアーモンドアイをはじめ、生産馬が昨年のJRAG1レース全22レース中、16レースを制しました。それらの生産馬たちがレースに向けて、日々調整を行っている関西の代表施設がノーザンファームしがらき。

調教トラックは、全長800mの坂路コースと、1周900mの周回コースの2種類があります。特にメイントラックとなる坂路コースは、高低差が約40mもあり、JRA栗東トレーニングセンターの坂路コースに匹敵します。今回案内してくれたノーザンファームしがらきの山本さんが「関西のチベットといわれる信楽では、今朝も雪が降りました(笑)」とおっしゃっられるとおり、見学当日も冷たい北風が吹き抜けていた。


昨秋新設の厩舎を見学

一通りの施設面の説明をお聞きしたあと、昨秋に新設された2厩舎に移動して若いスタッフとの質疑応答。その若いスタッフの方(入社3年目)は、「毎日が勉強の日々。馬への負担を少しでも減らすための騎乗技術の向上はもちろんのこと、気性的な問題などで結果が出ない馬に対して、どのように接したら好結果に結びつくのかなど、様々な試行錯誤を繰り返しです。そして、それらの馬たちがレースで結果を出した時の嬉しさと得られる充実感がたまらない」と言っておられた。

常に問題意識を持ち、結果に結びつけるために考え、行動する向上心溢れるスタッフが多数在籍することが、有数の施設と相まって、ノーザンファームの「強さ」を作り出しているのだと強く感じる見学会となった。

全行程を終了し新大阪駅に向け、帰途についた。車内ではアンケートに答えていただいたのちにDVDを放映。中には育成牧場向けに騎乗馴致の方法を解説する専門的なDVDもあったが、食い入るようにDVDを見る参加者もいた。早朝からのスケジュールで疲れが出る時間ながら、参加者の熱意が感じられた。スタッフから、「関西では宝塚記念の週(6月22・23日(土・日))に阪神競馬場において今回の見学会で聞き逃したことなど、より詳しく聞きたいことなどを受け付けるイベントの予定があります。関東では安田記念の週(6月1・2日(土・日))に東京競馬場においてさらに大きなイベントがあります。皆様のご参加を心からお待ちしています」とのアナウンスがあった。

最後に、多人数の見学を快く受け入れてくださった3牧場に深く感謝申しあげこのレポートを終了する。

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