2014 メインフェアレポート
2014 メインフェアレポート
(公社)競走馬育成協会、(公社)日本軽種馬協会、(一社)日本競走馬協会、(公財)軽種馬育成調教センターおよびJRA日本中央競馬会の5団体で構成されている牧場就業促進事務局が、7月26日(土)、27日(日)東京競馬場において5回目となる競走馬の牧場への就職を検討している若者向けのイベント「競走馬の牧場で、生きていく。BOKUJOBフェア2014」を開催した。
強い馬づくりは、まず人づくりから
牧場就業促進事務局は、生産・育成地の牧場での現状の人手不足の解消と将来に向けて次世代の優秀な人材の確保を目指して活動を行っている。
本年の3月には「牧場で働こう見学会 in 関東」と「牧場で働こう見学会 in 関西」を実施。関東・関西の育成牧場の現場を訪ね、将来の職場を実際に見学し、直接現場の責任者・担当者からの説明を受け、「職場」をリアルな感覚で感じとる機会を設けている。
また、関西地区としては3回目のフェアとなる「阪神BOKUJOBプレフェア」を6月28日(土)、29日(日)宝塚市のJRA阪神競馬場で開催、出展5ブース、来場者382名、東海地区では2回目となる「中京BOKUJOBプレフェア」を7月5日(土)、6日(日)に愛知県豊明市のJRA中京競馬場で開催、出展5ブース、来場者108名、首都圏以外の地域の就職希望者の掘り起こしを行っている。
本年で5回目となる「BOKUJOBフェア」を昨年と同様に、土日の2日開催で実施し、保護者を伴った来場を促進することにより、本人はもとより保護者にも競走馬の牧場に勤務することがどういうものか、あるいは生産育成の技術研修がどういうものかの理解を得ることを図った。
オープニング
初日土曜日は前年同様、出足の遅い感じがあったが、2日目の日曜日は、約80名が、オープニングから参加、続々と来場者が増えて、会場は満席となった。
ブースでの面談前に、出展15牧場の担当者が自らの言葉で紹介を行い、牧場のイメージを把握してもらうよう努めたが、やや紋切型の印象があり、もう少し時間をかけて、双方向のコミュニケショーンを図れたらよいように感じた。
スペシャルトーク
ともに現場の第一線で活躍する両氏から、総合牧場・育成牧場で働くにあたってのアドバイスとエールが送られた。
講演会場は、満席となり90名近い就職希望者が参加した。
1. 牧場ごとの役割、2. 競走馬の世界に入ったきっかけ、3. 求められる人物像は?4. 資質と技術、5. 牧場で働くやりがい、6. 参加者へのアドバイスについて、小堺翔太氏の進行で行われた。
斎藤氏からは、「高校時代、将来南関東競馬場の場立ち予想屋になりたかったので、その前に生産地のことも知りたいと思い就職して、そのまま続いている。キングジョージにホワイトマズルで参戦した時に、エリザベス女王とパドックで隣合わせになった感動を覚えている。寝坊しないこと、家族や周囲の人に可愛がられることを肝に銘じて総合牧場の仕事に情熱をもって飛び込んできてほしい。」
糸数氏からは、「プロサッカー選手を目指していたが怪我により進路変更した。ダービースタリオンというゲームで、この世界のおもしろさを知った。競馬場に近い育成牧場なので、出走に向け短期間で、休養・調教プログラムをこなす難しさと面白さがある。牧場従業員というよりアスリートに近いので体重制限などの節制は必要となる。まずは、しっかり挨拶できることが大切で、それも相手より先に挨拶すること。人の目を見て話すことができるようになれば、馬とのコミュニケーションがうまくいくようになる。」等のアドバイスがあった。
「JBBA研修とBTC研修について」JBBA(日本軽種馬協会)・BTC(軽種馬育成調教センター)
BTCとJBBAの研修制度について、BTC研修は競走馬の調教に必要な専門技術を習得するのを目的とし、JBBA研修は生産・育成の基本的な技術及び知識全般を学ぶことを目的としている等の研修内容の違いを説明した。更に、研修期間や研修生の生活、寮生活、課外研修について、エピソードを交えてJBBAは山本竜太専門役が、BTCは山本真維教官が紹介し、来場した研修希望者及び保護者の抱える不安を払い、研修への参加意欲を促進した。
続いてそれぞれの研修の修了生が体験談を披露した。JBBA第34期研修修了の新ケ江拓さんは現在、下河辺牧場に勤務。「馬に関する知識と経験が全くなかったので、全般的な知識と騎乗技術を学べるJBBA研修を受けた。現在は、中期育成の1歳から2歳になるまでを担当している。夢は厩舎長になること。研修時代は、早起きがなかなかできなかった。ぜひ、一歩踏み出して研修に参加してもらいたい。」 BTC31期研修修了の髙橋敬亮さんは、シンボリ牧場に就職、実際に調教に騎乗している。「もともと馬にかかわる職業を希望していたが、大好きなテイエムプリキュアが3年ぶりに重賞を制した姿を見て決意し、BTC研修に飛び込んだ。研修中は減量に取り組み苦労した思い出がある。一般社会のルールを知る上でも研修は役に立つはず。」と参加者を励ました。
メイン会場 出展牧場は15牧場
今回も、企業説明会と同様の就職相談ブースを設置、15牧場が全国から集まりブースを出展した。
ブースには、出展牧場が、独自に準備した自牧場の紹介DVD映像やパンフレットなどが揃えられ、また、ノベルティーを用意するなどの工夫が見られた。面談者には牧場主や場長など幹部クラスの責任者があたるとともに、担当者も回を重ねて積極的に就職希望者の考えや思いを聞き出すようなコミュニケーション能力が向上しており、ブースの運営に習熟してきたようだ。
競走馬の牧場への就職に興味のある参加者全体の人数は、減少傾向にはあるが、各ブースの担当者の意見では、相談者の相談内容が、以前よりもはるかに真剣度が高く、自牧場との条件が合わない場合、他の牧場ブースを紹介するなどフェア全体を活用できるようにしているとのことであった。北海道以外の関西・東海・関東地域の牧場ブースへの相談者も多かった。
交流スペース
交流スペースでは昨年同様、女性の参加者が、女性の担当者に真剣に相談する姿が目立った。
研修・相談エリア、競走馬のふるさと案内所
「JBBA研修相談ブース」の面談者は2日間で43組。研修内容の確認や寮生活など具体的な内容の質疑が行われた。また、将来は馬の生産育成や馬に関わる就業をするために、JBBAの生産育成技術者研修またはBTCの育成調教技術者養成研修を受けるのだという明確なビジョンを持った参加者の割合が増えた印象だった。
「進路指導者・保護者相談コーナー」にも保護者と参加者10組が牧場への就職を前提に時間をかけて相談をしている姿が目立った。担当した両教諭からは、BOKUJOBフェアあるいはプレフェアを札幌で開催して、参加者と面談してみたいとの意見があった。 「競走馬のふるさと案内所」も名馬の写真パネルや日高地域の観光振興パンフレットを展示、配布した。また、プレゼント抽選会場として機能し、多くの参加者の来訪があった。
また、会場からは離れているが、競馬博物館にも足を運び、馬の生産・育成に関するパネルの前で足を止める参加者・保護者もあった。
事務局からは「北海道をはじめ、秋田県、長崎県など全国からの来場者を迎えることができ、出展者の皆様、また来場者の方々にとって良い機会の場を、設けることができたと考えています。今後とも、現状に甘んじることなく、牧場関係者、就労を目指す若者達からのご意見を承りつつ、より良いフェアに繋げていきたい。」とのコメントが出された。
5回目となった今回の参加者は、275名で、内訳は高校生106名、高卒以上118名、その他51名で、牧場側が希望する高校生の参加割合は少なかった。
土日開催で、保護者の参加を増やすことにより、「馬にかかわる職業に就きたいことを両親にうまく説明でき、理解・応援してもらいやすくなった。」との意見もあり、参加者のニーズにもマッチしているようだ。