2019 メインフェアレポート

2019 メインフェアレポート

6月1日(土)、2日(日)、新馬戦がスタートした東京競馬場で、BOKUJOB2019メインフェアが開催された。牧場の仕事の魅力を伝え、新たな人材を求める現場との懸け橋として今年で10回目を迎え、恒例イベントとして親しまれている。メインフェアに先立って3月に実施した「牧場で働こう見学会in関東」と「牧場で働こう見学会in関西」では、関東関西ともに例年を大きく上回る参加者を得たことは嬉しい限り。多くの出会いへの期待も高まる中、BOKUJOBメインフェア2019がスタートした。

積極的な情報発信

今年のメインフェアに出展した牧場は32。昨年の28を上回るラインナップとなった。今年も名門あり新進気鋭ありで、バラエティに富んだラインナップも魅力的。地域もさまざまで、牧場=北海道だけはないことをPRする場にもなった印象だ。東京競馬場の最寄り駅からの専用通路にはBOKUJOB関連の大きなポスターが貼り出され、入場口ではイベントスタッフが元気いっぱいにメインフェア開催の案内をしていた。ポスターは実際に牧場で働く皆さんをモデルにしたもので、牧場からのリアルなメッセージが伝わってくる。会場となったイーストホール前に設置された大型パネルの前では、一般ファンが足を止めて見入っている姿も多く見かけた。そういった媒体でのPRと共に、BOKUJOB公式アカウントでは各参加牧場からの声を動画で発信するなど、SNSでのPRも実施。こまめに情報を発信することが、牧場就職希望者へのアプローチとなったのではと思う。また、独自にSNSでの情報発信していた参加牧場も複数あった。そういった積極的な情報発信も、新しい人材確保に繋がっていくことを期待したい。

いろいろな牧場が集うからこその魅力

2008年、2009年の安田記念(GI)の優勝馬・ウオッカの像が見守る会場は、通路に面し開放的な空間で、人通りも多い。見学者や一般ファンの皆さんの他、オーナーやマスコミ、地方競馬のジョッキーの姿も見られ、注目の高さを感じさせた。また、メインフェア開催初日には、テレビ東京の「ウイニング競馬」で取り上げていただくなどの嬉しい出来事もあった。見学者からは「わかりやすい場所なので、迷わず来られた」「緑の床が牧場のイメージに合っていて親しみやすい」という声も聞かれた。BOKUJOBのホームページを見て来場したという親子連れは、競馬場に来た第一の目的がこのメインフェアだったそうだ。

そんな中、「昨年来てくれた人が、今年もまた来てくれたんですよ」と、明るい笑顔で語ったのは、株式会社クラウンが運営し、九州から北海道まで全5場を有するクラウンファームの矢野まり子氏だ。「馬好きを増やす種まきをしています。馬好きのすそのを広げたいですね。たくさんの牧場が出展しているので、いろいろなところを見学していただければと思います」と語ってくださった。

競馬をあまり知らない人々にとって、牧場といえば北海道という認識は多いかもしれないが、本州にも牧場があることを広く知らしめたのは名馬・キズナで知られる大山ヒルズだろう。キズナは今年初年度産駒がデビューし、多くのファンがその活躍を心待ちにしている。「やる気があれば、未経験でも大歓迎です。乗馬も練習できますし、うちはオーナーブリーダーなので、いろいろと融通を利かせることができますよ」と、ゼネラルマネージャーの齋藤慎氏。大山ヒルズでは、BOKUJOBをきっかけに就職したスタッフも4名働いているとのこと。「鳥取という土地柄、西日本からの就職が多いですね。JRAの厩務員を目指す従業員もいますし、若いスタッフが多く働いています。大きな商業施設やコンビニもありますので、暮らしやすいと思いますよ」(齋藤氏)。大山ヒルズがある鳥取県の伯耆町は空港からのアクセスもよく、飛行機に乗ってしまえば羽田空港とはわずか1時間半という立地。交通網が発達した現在では、これまでの“牧場=僻地で寂しいところ”という認識を見直す必要がありそうだ。

3月のBOKUJOB見学会でもお馴染みのビッグレッドファームではインターンシップにも力を入れているとのこと。「他の牧場と掛け持ちでインターンシップに来る方も多く、より多くの人材確保のために寮などの環境整備も行なっています」、と蛯名聡マネジャー。ビッグレッドファームといえば、“挨拶の徹底”を実施して、従業員間のコミュニケーションを円滑にし、働きやすい環境を整えて来た先駆け的な存在だ。ここに来てさらに環境を整備し、新しい人材を受け入れやすくするという動きは、これから牧場への就職を考えている皆さんにとって心強いものになるだろう。牧場大手のビッグレッドファームだが、メインフェア当日に見学者を迎えた女性スタッフは、動物好きから牧場勤務に至ったとのこと。そういったことも、見学者の皆さんに安心を感じてもらえる材料になったのではと思う。

なお、環境や就業条件改善の流れは牧場業界全体に広がりはじめており、改善をしながら独自の良さを活かした雇用をしている牧場も多く見受けられる。今回のメインフェアでも、生産から育成まで手掛ける総合牧場からアットホームな雰囲気での家族経営の牧場が揃い、一口に牧場といっても多彩な業務があることを知ってもらい、いろいろな選択肢があることを広くPRする機会にもなった印象だった。各参加牧場からのメッセージは、BOKUJOB公式Twitterにアップされている動画で視聴可能。短い中にも、個性が感じられるものばかりなので、ぜひチェックしていただければと思う。

長く働ける場所として、次の世界を目指す場所として

運動能力が重視される仕事というイメージから、牧場では若い時にしか働けないではないかという心配の声を聞くこともあるが、牧場の仕事は多岐に渡るため、ベテランになっても仕事がなくなることはないという。また、多くの牧場で「JRAの厩務員への門戸」を開いていることも注目しておきたい。JRAの厩務員になりたい場合、競走馬・育成馬・乗馬の騎乗経験が1年以上必要となり、単独で常歩、速歩、駈歩の騎乗ができることが入学試験を受けられる条件(2019年6月現在)となっている。以前設けられていた年齢制限も無くなり、牧場勤務でしっかりとスキルを磨き、次の夢へステップアップすることも可能だ。また、中央競馬だけではなく、地方競馬の厩務員(試験は行われていない)への道も開けている。いずれにしても、どの牧場でも「未経験でもやる気さえがあれば」「いろいろな牧場を見て、自分に合ったところを見つけてもらいたい」「馬の仕事はやりがいがある」という共通する声があったことを伝えておきたいと思う。

ファンと馬産地の良い関係のために

今回もフェア会場の入り口には「競走馬のふるさと案内所」のコーナーも設置され、一般の競馬ファンへも馬産地についてのPRを行った。近年ではインターネットで下調べして馬産地を訪れるファンも多くなっているそうだが、カーナビゲーションだけではわかりづらい場所だったり、同じ牧場でもお目当ての馬は遠く離れた分場に移動していたり、生きもの相手だけに、天候や健康状態などでも見学の可否が変わっていたりなど、やはりふるさと案内所での確認は必須だと言えるだろう。ファンと馬産地がより良い関係を続けていくための懸け橋として、競走馬のふるさと案内所の役目は大きいといえそうだ。夏休みや秋の連休を利用して馬産地を訪れるファンも多くなるこれからの季節を前に、その存在をより効果的にPRできる場となったのではと思う。

体験会でさらに牧場を身近に

メインフェアの後、関西フェア(6/22,6/23)、そして「夏休み牧場で働こう体験会(7/28~8/2)」が実施される。実際に牧場で過ごすことで、これから先の自身が進む道をイメージしやすくなることだろう。体験会では新しい発見もありそうだ。例えば、夜飼い(夜の飼い葉)で周囲に明かりがない牧場ならではの”真っ暗な闇”を知り、その後、厩舎の電気をつけた時に眩しそうに目をショボショボさせる(人間と同じ!)馬たちの表情を見ることもあるかも知れない。いたずらを叱られて気まずそうな表情をする馬、かまって欲しいととびきりかわいい顔をして甘える馬、知らんふりして耳だけでこちらの様子を伺う馬。朝露に光る牧草の香りや、馬が鼻を鳴らす音がする厩舎、仕事終わりの夕方の風や、惜しみなく広がる満天の星空。手掛けた馬が出走する日の牧場の雰囲気。レースを観ながら、仔馬時代の話をする先輩の表情。そういった環境の中、さまざまな発見をすることで、きっともっと牧場の魅力、馬の愛しさを感じてもらえるのではと思う。牧場で働いている誰もが最初は初心者だった。だからこそ、先輩たちの経験を直接聞き、仕事を見ることができる時間は、今後のために大きく役立ってくれるのではと思う。牧場で過ごし、馬の素晴らしさに触れた時間が、この先の人生の宝となりますように。

年間を通じてイベントを開催

事務局では、見学会、フェア、広報&相談コーナー、夏休み体験会、研修コース体験入学会と、年間を通じてBOKUJOB関連のイベントを開催しています。北海道から九州まで、全国各地で実施していますので、ぜひ多くの方にお気軽にご参加いただければと思います。詳細はBOKUJOBホームページ等でお知らせしています。

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