牧場を知る
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2020/12/16
師走を迎え、今年も残すところ僅かとなりました。歳を重ねるにつれて時間の体感速度は加速していくと言われており、自分も金杯から有馬記念までのスパンが年々短くなっていくのを実感していましたが、今年に限ってはそのようなことはありませんでした。
4月、未曽有の事態によって世界中が混乱に陥り、日常が日に日に蝕まれていく中で不気味なほど静まり返った羽田を発ち、先行きの見えない社会に対する不安と新たな環境に適応することができるかという自分自身に対する不安を共に抱えながら一人北海道へ飛びました。この頃はまさに右も左もわからない状態で、それこそ「馬に背後から近づいてはいけない」「馬を蹄洗場に放置したままどこかに行ってはいけない」といった今となっては当然と思えることすら知らなかったのです。馬に関する基本的なことを覚えるだけでも脳みそのストレージはパンクしそうになりました。それに加えて慣れない寮生活。このときは二人部屋だったので、人見知りの激しい自分にとって部屋に他の人がいる状況はなかなか耐え難いものでした。どうにか仲良くなろうと試みるも続かない会話、気まずい空気を愛想笑いで誤魔化す日々は今となっては笑える思い出と化していますが、当時はやはり苦しかったのを覚えています。来年度からは寮が新しくなるので、男女比にもよると思いますがおそらく全員が一人部屋に入ることができるのではないでしょうか。43期生の皆様ご安心ください。
6月頃には同期ともだいぶ打ち解けたことにより寮生活に慣れ、馬の扱いにもだんだんと慣れ始めてきたため、研修を楽しむことができるようになっていました。しかし、慣れたことにより油断が生じてしまったのも事実で、気が緩んだ状態で馬に近づいた結果怪我をして病院送りになりました。油断は禁物という言葉がこれ程身に染みたことはありません。馬は適切な扱いをすればそれに応えてくれる動物ですが、逆もまた同様です。この後しばらくの間馬に対する恐怖心が消えず、病院の窓から太平洋を眺め、その遥か向こうにある故郷に思いを馳せて何度も家に帰ってしまおうと思いました。
その後も様々なことがありましたが書き出すと日が暮れてしまいそうなので割愛して、なんとか現在に至ります。正直に言って今までの人生の中で一番苦しい1年でした。しかし、数々の困難を乗り越えて今日まで研修を続けて来られたのは、競馬が好きだという気持ちがあり、これまでできなかったことが少しずつできるようになっていく喜びがあり、そして何より先生方や同期をはじめとした様々な方々の支えがあったからです。苦しいことは沢山ありましたが、その分、研修を受けていなければ決して味わうことのできなかったであろう喜びも沢山ありました。(この文章を読むと苦しいことばかりに感じられるかもしれませんが、実際には楽しいことも沢山あります。他の研修生は大抵楽しいことを記事にしているため、ブログの内容に多様性と信憑性を持たせるため敢えて苦しいことばかりを挙げております)この1年で積むことができた経験は以前に歩んできた人生の4~5年分の合計に匹敵するといっても過言ではない程に濃く、とても長く感じたのはこのためでしょう。
皆様にとって2020年という年はどのようなものだったでしょうか。おそらく例年よりも苦しい年になったという方が大半かと思います。苦しみを完全に癒やすことはできませんが、いつの日か「そんなこともあったね」と笑えるように、今は少しでも前に進んでいきたいと考えているところです。
と、ここまで書いてようやくまるで卒業式の答辞のような文章になっていることに気が付きましたが、研修は年明けもまだまだ続くので、引き続き頑張っていきます。しかし、次にブログを書く機会があるか分からないので案外丁度よかったかもしれませんね。未だ先行きが見通せない状況ではありますが、来年が少しでも良い年になることを願って2020年の振り返りを締めくくらせていただこうと思います。W.Kでした。