2024/02/13
JRA日高育成牧場です。
2023/08/22
今回は日高育成牧場の近況ではなく、海外の競馬について触れてみたいと思います。
なぜ、海外の競馬と思われるかもしれませんが、実は先日、海外出張の機会を得ることができたので、私自身、この機会に各国の競馬の異なる点について、考えてみたいと思います。
日本と海外では、競馬のスタイル、調教、馬の取扱い等、様々な点で異なっていることが多々あります。さらに海外と一括りにしがちですが、欧州と米国でも異なっている点は少なくありません。
「競馬のスタイル」に関していえば、欧州では芝コースでの競馬が一般的であり、さらにコースの形状は、日本で当たり前と思われている「トラックコース」に決まっていません。自然の地形をそのまま利用しているため、英国ダービーが開催されるエプソムダウンズ競馬場のように、スタートとゴールがつながっていないU字のコース、あるいはジャック・ル・マロワ賞が開催されるドーヴィル競馬場のような直線1600mのコースなど様々であり、「定型コース」という概念がありません。さらに、自然の地形を生かしているため、アップダウンがあるコースも少なくありません。
エプソムダウンズ競馬場(左)とドーヴィル競馬場(右)(JRA-VANホームページより)
3D Bird's-eye Viewによる英国ダービーのコース
一方、米国ではダートコースでの競馬が一般的であり、「左回りの平坦なトラックコース」に統一されています。この点が米国競馬の特徴であり、常に同じような条件で競馬を実施できることから、馬の能力を比較的明確にしやすいといえます。なお、ダートコースといっても、日本の「砂」のような材質ではなく、イメージとしては「土」であり、コースを歩いていた後にアスファルトの上を歩くと、土の靴跡が残るような材質です。そのため、日本のダート(砂)よりもグリップが効くことから、走行スピードは速くなります。
このように米国ではダートコースでの競馬がメインとなっていることから、米国の競馬場は日本の競馬場とは異なり、ダートコースが観客席側、つまり外側に、そして芝コースが内側に作られており、ダートコースを「メイントラック」と呼んでいます。
米国ではダートコースが外側に、芝コースが内側にある(米国デルマー競馬場)
また、調教スタイルも欧州と米国では異なっています。当然のことながら、それぞれの国の競馬スタイルにフィットさせるように、トレーニングを実施する必要があるため、欧州では競馬と同様に、自然の地形の中で調教を実施するスタイル、つまり坂路コースでの調教が行われることがあるのに対して、米国では競馬場のコースで調教を実施するスタイル、つまり平坦な左回りでの調教がベースとなっています。
英国ランボーン調教場の坂路馬場での調教(左)とサラトガ競馬場での調教(右)
次号では、欧州と米国の競馬スタイルの相違は、競馬の起源の相違に起因していること、さらに、日本は両者の良いところを巧みに取り入れている点について触れてみたいと思います。