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2019 体験会レポート(2日目)

2019 体験会レポート(2日目)

レポート(2日目)

各牧場で仕事体験

いよいよ、この日から牧場での体験会がスタートします。馬産地北海道の朝は早く、初日とはいえ、それぞれの牧場では午前8時から参加者を受け入れられるように準備を進めてもらっています。そのために、ホテルでの朝食は午前6時30分。7時30分には3台の車に分かれて、ホテルを出発します。


(有)宮内牧場に到着 まずは「あいさつ」の大切さを学びます

ホテルからほど近い、浦河町の(有)宮内牧場は生産と育成を行う総合牧場です。ディープインパクト産駒の現役オープン馬タムロミラクルの生産牧場であり、過去にはテイエムジャンボ(京都記念、京都金杯)やシンチェスト(京都記念)、シンブラウン(阪神大賞典2回、菊花賞3着)と3兄弟で重賞競走を制して話題にもなった牧場です。ここでは「とにかく牧場の仕事を知りたい、理解したい」という3人の女子高校生が参加してくれました。

ある意味、牧場で働くうえで最も大切なこと。それは「あいさつ」です。なぜならば、牧場内は私有地ですが、色々な人が出入りします。馬主さんであったり、調教師さんだったり、あるいは近隣の牧場、育成牧場の人たち。大切に育てた馬に関係する人たちに、感謝の念を込めてあいさつをするのです。代表の宮内慶さんからあいさつの大切さをしっかりと学んだあとは、馬に対する恐怖心を少しでも取り除こうと宮内さんが用意してくれた2頭のポニーでした。「馬に触れてみたい」という3人にとっては何よりのプレゼントだったかもしれません。

午前は牧場実習、午後は放牧作業

しかし、ここからが体験会のスタートです。最初の仕事は、夜間放牧を終えた馬の集牧。そして手入れをすること。「まったく、何も分からない。馬に触るのも初めて」という参加者もいましたが、スタッフの指示に従いながら放牧されている繁殖牝馬と仔馬を厩舎へと導きます。大切なのは、母仔が離れすぎないように、そして自分の足を踏まれないようにすること。不安でいっぱいの3人のためにスタッフが寄り添い「大丈夫かな」「ちゃんと出来ているよ」などと声をかけながら馬を引くときの注意点などをさりげなく教え込みます。

そして、3人が楽しみにしていたという、馬の手入れです。生まれて数か月の仔馬とはいえ、自分たちよりも大きく、力強い馬たちです。注意深くブラッシングをしながら、お腹の下や、耳の中など、馬が本能的に嫌がる場所を触って慣れさせることも大切なことなのです。宮内さんやスタッフが見守る中で、3人は見よう見まねでブラッシングを続け、同時にケガや異常がないかを確認。「実際に牧場での仕事を体験させてもらうことで、自分の将来を具体的にイメージすることができた」と話し、また同時に手入れの意味、大切さを学びました。


見守られながら馬の手入れ

テイエムオペラオーの生まれ故郷である(有)杵臼牧場は、生産そして中期育成牧場です。女性スタッフも働くこの牧場は、今年も女子3人がお世話になりました。まず馬の削蹄を見学させてもらいました。削蹄とは、文字通りに馬の蹄を削ること。人間で例えれば、ネイルケアです。ただ、馬の場合はおしゃれではなく、脚元を傷めないように、そして正しい歩様ができるように正確に整えなければなりません、そのため、細心の注意が求められます。この日のために用意された繁殖牝馬の蹄を外国人装蹄師が手早く、そして慎重に整えていきます。慣れているはずの馬にとっても不快なときは反抗の意思を示しますが、その様子が人間と、馬との格闘技にも見え、参加者は驚きを隠せなかったと言います。そして、そのあとは当歳馬の治療。生まれたばかりの仔馬にとっては、何をされるのかという恐怖でしかないはずですが、獣医師の手際の良さだけが印象に残ります。

その後は夜間放牧をするために放牧です。厩舎で休んでいる母馬と当歳馬を放牧地までリードします。これまでは馬は見るだけで、馬に実際触れるのは、この日が初めてという参加者もおりましたが、先輩スタッフから教えていただき、手綱を持たせてもらいました。最初は緊張の色を隠せなかった参加者たちも1頭、また1頭、そして別の厩舎へ移動してまた1頭、さらには分場に移動してまた1頭と経験を積むたびに、それぞれの馬の歩様や性格の違いを知ることができ、また周囲を見渡す余裕のようなものも生まれてきます。放牧地では、馬の素顔に触れることもでき「馬に対する考え方が変わりました」という一幕も。「見ることしかできなかった牧場の仕事を体験することが、本当に良い経験になりました。」また、空いた時間に牧場スタッフと仕事のことや生活のことなどを話し合うこともできたようで「進路について相談することができました」という感想もいただきました。


母馬と当歳馬を放牧地へリード

馬を放牧に出した後は厩舎作業です。これもまた初めての経験です。慣れない用具を用いてボロ拾い、そして厩舎掃除。汚れた寝藁を取り除き、そして新しい寝藁を補給。放牧から帰ってきた馬が快適に過ごせるようにするためには必要不可欠な作業です。それから水桶や飼い葉桶を洗い、水を汲み、作った飼い葉をそれぞれの馬房にセットします。正直言えば、慣れない参加者にとって体力的には相当に厳しい作業かもしれません。しかし、これらの作業を楽々とこなす先輩たちを見ていると、いつかは自分もと気持ちを新たにします。

生産牧場としてはもちろん、コンサイナーとしても高い評価を受けている(有)谷口牧場で牧場実習を行ったのは「将来は牧場で働いてみたい」という2人の男子高校生です。コンサイナーは、他の牧場で生まれた馬を預かり、そしてせりに上場するために躾を行います。せり市場は、馬にとっては生まれて初めて訪れる場所で、そこではたくさんの馬たちと多くの人たちに囲まれます。そんな中でも平常心を保っていられるように、不安なときこそ人間を頼ってもらえるようにと教え込む仕事です。


流れ作業の中で水桶を洗う

まずは、馬の習性を利用しながら、馬に人間の意志を伝え、そして約束事を覚えさせます。言葉が通じない馬に対して、馬がストレスなく人間の要求に応えること、そのためには馬が何を考えているのか人間が理解しなければなりません。最初は戸惑っていた馬たちも少しずつ理解し、人間が要求する行動を取ってくれるようになるのですが、それはまるで馬に魔法をかける、魔術師のようにも見えます。初めて見る光景に興味津々です。

そのあとは厩舎作業ですが、繁殖牝馬、今年生まれた当歳馬に加えて、せりに上場させるための1歳馬などたくさんの馬を預かる(有)谷口牧場では流れ作業で行います。水桶を洗う係、新しい水を入れて馬房に運ぶ係。ここでは馬の体調や、求める栄養素などを考えて1頭ずつ違うメニューの飼い葉を用意しますが、それを間違えないようにすることも流れ作業の中では大切なことなのです。

馬が寝ている間に汚してしまった寝藁を取り替え、そして新しい寝藁と交換しなければなりません。藁と言っても、馬の排泄物を吸収した藁は重たく、捨てる藁だけを持ち運ぶのも一苦労です。そんな経験を一通りさせてもらった参加者は「最初は育成牧場で馬の調教をしたいと思っていましたが、このような仕事があることを初めて知りました。新鮮ですし、自分もやってみたいと思いました」「短い期間でしたが、牧場の仕事がどのようなものかという新しい発見がたくさんありました」と感想を口にしていました。

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